工法会(労働組合法)の改正

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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2001年10月28日付け工人日報等は、同月27日、全人代常務委員会第24次会議において「工会法」(労働組合法)の修正案が採択され、同日より改正法が施行される旨報じているところ、記事等による今般の改正の概要及び背景は次のとおり。

改正の概要

10月27日閉幕の、第9期全人代第24次会議において、「全国人民代表大会常務委員会による「中華人民共和国工会法」の修正に関する決定」が採択され、公布の日(注:10月27日、中華人民共和国主席令第62号として公布された)より施行される。

李鵬全人代委員長は、閉幕式の講話で、今次の工会法修正が、工会組織の建設を強化し、広大な労働者の合法的権益を保護し、健全で調和のとれた社会主義労働関係を建立しようとするものであることを指摘するとともに、国家の経済発展、技術進歩及び社会安定の保持のために労働者階級が主人公としての役割を発揮する必要がある旨強調した。

今次の工会法の修正は2年10か月余りをかけて行われたもので、決定による工会法の修正は44か条にのぼる。新たな工会法の特徴は次のとおり。

  • 社会主義市場経済体制の発展、経済構造の調整、所有制形式の多元化等の実情に合わせて、また、ますます複雑・多様化する労働関係に対応できるよう、工会の「保護」職能を突出させたこと。
  • 工会の組織建設を強化し、労働者を工会に組織するための法律的根拠及び保障を提供したこと。
  • 工会幹部の保護の力度を高め、工会幹部がその職責をよりよく果たせるようにしたこと。
  • 工会の役割を明確にし、工会が政治、経済、文化及び社会生活に対し参与することを確実にし、工会が労働関係を調整・処理するメカニズムを明確にしたこと。
  • 工会経費の徴収の力度を高め、工会組織の活動展開を保障しようとしたこと。
  • 工会の権限侵犯に対する処罰措置等を法律上明確にし、法律の威力を増強したこと。

工会法の修正案は、98年12月に立法作業が開始され、2年余りの検討作業を経て、本年8月27日、「工会法修正案(草案)」として全人代常務委員会第23次会議に提出された。第23次会議で、初回の審議が行われたのち、中央関係機関や地方、一部企業、研究機関等への意見を求め、聴取、関係機関・企業の責任者、専門家等からなる座談会での意見聴取を行ったほか、全人代の委員会による地方調査等も行われた。第24次会議での2回目の審議が行われ、今般、修正法の決定に至ったものである。

背景

「工会法」は1950年に制定され、改革・開放政策の進展等を踏まえ、1992年に第1次の改正が行われたが、その後の市場経済の発展、経済構造の軽換、労働関係の多様化、複雑化等が進む中で、工会がその役割を発揮するうえで多くの問題が発生しており、今回の法改正はこれらの状況を踏まえて行われたものである。

労働者が主人公とされるこの国において、これらの労働者の利益を代表する「工会」の果たすべき役割は大きく、今回の法改正が各方面に与えるインパクトは大きい。特に、本改正は、今まで工会の組織化が不十分であった民営企業における工会組織化の強化につながる内容を多数含んでいるが、一方で、民営企業の中には、工会を通じた経営関与への不快感等から、工会設立を望まない経営者も多く、今後、同法の施行をめぐり混乱が生じるおそれもある。

本改正法は、公布日から施行されているが、その周知状況は必ずしも十分とは言えないと思われる。一方で、同法では新たな罰則規定も設けられており、今後、企業(経営側)においては同法の規定を十分に踏まえ、工会活動に適切に対応していくことが求められる。

なお、今般の改正について、工人日報等は次のように論評している。

今次の工会法修正の決定は、社会主義市場経済の発展要求及びわが国の経済関係、労働関係及び利益関係の変化に適用するものである。次に、労働者の適法な権利擁護という工会の基本的職責を明確にし、工会建設の新たなルートを開拓し、工会の職能の擁護を強化し、工会幹部の保護の力度を高めるものである。次に、工会経費の徴収範囲を明確にするとともに未納の工会経費の強制徴収措置を規定し、国家及び社会の事務に工会組織が参加する力度を高めるものである。次に、労働関係の三者(政労使)協議メカニズムを明確に規定するものである。最後に、工会法に違反した場合の法律責任を明確にすることで法律の権威を高め、工会法執行上の問題の比較的良好な解決を図るものである。

工会法の修正は、工会の擁護職能を強化し、工会組織の代表性及び労働者の適法な権利擁護の力度を高めることで、さらに適切に労働者の適法な権益を擁護しようとするものである。また、工会組織が発揮すべき役割に対し、労働者の積極性、創造性を保護、発揮、結集させ、労働者が「第10次5カ年計画」や社会主義建設の大事業に積極的に献身することを激励するなど、工会工作の創造的な展開にとって重要な現事実的意義及び深遠な歴史的意義を有する。

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