共産党組織が外資企業の共産党員解雇人事に苦慮

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年3月

中国では、100%外国資本の企業を含めた国内すべての企業に対して、3人以上の共産党員をもつ場合には共産党組織を作るべきとされている。しかし、福建省のアモイ市では、1990年代以来、台湾系企業を含めた100%外国資本企業で、共産党委員会の責任者の解雇が相次いで起きている。

三徳興公司は、100%台湾資本の企業として設立され、後にアメリカ系の企業に売却された。三徳興は早くに共産党委員会を設立し、かつて外資企業の中では共産党組織の活動が優れていることで表彰されたこともある。1992年末に、この会社では、給料のピンハネなどに対する労働者の不満が募り、さらに労働条件や福利などの改善を要求するストライキにまで発展した。当時、会社の行政部部長を務めながら、会社の党組織書記(責任者)も兼務している高秉涛氏が市の行政当局と共に、会社の経営者に対して意見を申し入れ、問題の解決を要求したが、経営者との間で意見が食い違い。翌年の3月に、高氏が会社に解雇されたため、地元では大きな波紋を呼んだ。

同じく波紋を呼んだのはアモイの朝良公司のケースである。1994年に陳志清氏がこの100%台湾資本企業の工場長及び党組織書記となった。会社が設立された当初ではわずか2名の共産党員しかいなかったが、陳氏が社内で積極的に党員拡大活動を展開し、2年間で6名が新たに党員となった。しかし、党員の拡大が台湾側経営者の不満を招き、1996年に陳氏が会社側に解雇されることとなった。

外資企業党委員会書記の解雇が相次いだことについて、アモイ市の外資企業人事や共産党組織などを担当するアモイ労働服務公司の党委員会責任者は、企業内労働争議が発生した時に、労働者の利益を守るために党委員会の責任者が企業の経営者との間で対立や意見の食い違いが生じたからだと説明している。

中国では、国有企業とは異なり、非国有企業、とりわけ外国資本の企業では、経営者と労働者は基本的に「雇うもの、雇われる者」の関係にあり、企業内の共産党組織といえとも、その活動は経営側の同意を得なければならないとされている。現状では、外資企業の党組織責任者の解雇問題に対して、地元の共産党組織が外資企業の独自経営権に介入できない立場にあるため、こういった問題の対応に困惑している。

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