労働移動の制限を撤廃

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年1月

中国国家計画発展委員会は、人口成長のコントロールと社会保障制度の確立を踏まえて、新たな雇用促進策として、今後5年以内に、労働移動に関するすべての規制を撤廃する考えを明らかにした。

国家計画発展委員会が2001年8月に取りまとめた「第10次5ヶ年計画における人口、就労および社会保障制度の重点項目計画」によれば、中国は戸籍改革および社会保障制度の確立を通じて、東部沿海および経済水準の高い地域で、逐次、労働移動の制限を撤廃し、労働市場の一体化を図る予定である。

国家計画発展委員会によると、中国では、適齢労働人口の増加が、雇用情勢を一層厳しくさせている。それはさらに国民の生活水準の向上を脅かし、所得格差を増幅させている。

国家計画発展委の「計画」によれば、今後5年内に、中国の新規労働力の総供給量は4650万人に達する見通しである。中国のWTO加盟に伴う産業構造の調整や企業改革の加速によって、構造的失業の問題はさらに深刻になる。それと同時に、農村余剰労働力はすでに1億5000万人を越えており、今後は、毎年500~600万人の新規余剰労働者が増加すると想定されている。

国家計画発展委員会の指摘によれば、中国労働市場の現状は、市場競争のメカニズムが確立されておらず、都市と農村の間、異なる地域の間および政府各部門の間における雇用政策の協調性を欠くため、労働市場が相互に分断しており、戸籍制度やその他の人口移動規制は、労働力の流動化を阻害し、人的資源の有効利用を妨げている。

国家計画発展委の「計画」によれば、中国は今後、労働就業登録制度を確立し、国民1人ずつに社会保障番号をもたせ、個人の賃金口座と社会保障金口座を開設することとしている。

また、全国主要都市をカバーする労働者のデータベースなどの情報ネットワーク(労働力管理の情報ネットワーク)と労働力需給状況に関する情報開示制度を確立する。それによって、職業斡旋機関のネットワーク化を図り、民間職業斡旋機関の発展を促進する。さらに、職業斡旋など労働雇用分野のサービス業の基準をつくり、制度化を図る。

今後、中国では、非正規労働、臨時労働、自由裁量労働など雇用システムはさらにフレキシブルになり、多様な雇用機会が生まれることも予想されている。中央政府は、自営業の起業などによる労働者の自主就労を奨励しており、有給休暇の導入も検討している。

国家計画発展委員会は、第三次産業、中小企業および民営企業などを今後の雇用回収の主要ターゲットとして想定しており、海外への労働力派遣の拡大にも力を入れる考えである。そのため、中国は一層の外国投資規制の撤廃や税率の引き下げなどを実施し、また投融資のルートの拡大などによって、中小企業や民営企業の発展を促進する構えを見せている。

国家計画発展委の「計画」は、中国が農村地域の都市化戦略や西部大開発戦略などを通じて、農村余剰労働力の都市への移動を促し、さらに、貧困地域への援助や移民政策などを通じて、農村余剰労働力に新たな雇用機会を切り開いていく、というものである。

国家計画発展委は、今後5年以内に、中国の都市部では4000万の雇用機会が生まれ、基本的に新規労働力の就労需要は満たすことができると予測している。

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