WTO加盟に備え、「労働組合法」 大幅改定、ストライキ権黙認の考え方も

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年12月

労働者利益の代弁を強調

中国の「労働組合法(注1)」が大幅に修正される模様だ。労働組合の役割や責任などを再定義し、労働者権益の保護や維持の機能を強化すると同時に、労働組合の設立についても大幅に見直され、労働者のストライキ権を黙認するような考え方も盛り込まれることとなる。WTO加盟を備えた今回の「労働組合法」改定は、社会主義的労働組合の根本的な性格は変えられないものの、国際ルールに近づくために、建国50年の過去に前例をみない大幅な改定となる。

全国人民代表大会の常務委員会は2001年8月末に、新しい「労働組合法」について第1次審議を行った。新法の草案は2001年内に第2次若しくは第3次審議で採決される見通しである。今回の改訂で最も肝心で議論が集中したのは、「労働組合の職責」の定義である。新法は、従業員の合法的権益を保護維持することを労働組合の基本的唯一の職責と定めた。専門家はこれを、中国政府の労働組合の性格に対する認識の上重大な変化であり、大きな意義をもつものだとみている。

国際条約の受け入れ

全国民の利益と労働者の利益が衝突する場合に、労働組合がどのような役割を果たすべきかも、今回の見直しの大きな争点となった。一部の専門家は、この条文を「労働組合は全国民の全体利益を保護維持すると同時に、さらに労働者の合法的権益をより保護維持する」というように改定すべきだとアドバイスした。しかし、これは受け入れられず、最終的には「労働組合は全国民の全体利益を保護維持すると同時に、従業員や労働者の合法的権益を代弁し、保護維持する」とした。

ストライキについての条文もきわめて特殊である。中国はすでに「経済、社会および文化権利の国際条約」に調印し、7月から発効している。この条約は労働者にストライキ権があると定めているが、中国側はこの条約を採択する際、特に保留権を行使しておらず、すなわち、この条約の履行に同意することを表明した。そのため、新法第25条は、「作業停止、作業を怠る事件が発生する場合、労働組合は関係方面と協議し、労働者の合理的な要求の解決を図らなければならない」と定めている。これは事実上、労働者のストライキ権を黙認することだとの指摘もある。

労組参加への阻害を禁止

労働組合の設立に関して、草案第3条は、「中国国内すべての企業の労働者は、法に従い労働組合に参加し団結する権利をもち、如何なる組織や個人もこれを阻害し制限してはならない」と定めている。関係者によると、この条文は、中国が必ずしも労働組合組織の自由な設立を認めてはいないが、旧法より極めて大きな譲歩がなされたとしている。さらに、新法には特別に「法律責任」の一章を設けて、労働組合が真に労働者の利益を代弁することを促している。

ストライキ権の黙認

中国が1975年と1978年に公布した憲法には、公民にはストライキの自由があると定めているが、1982年の憲法改正時にこの内容は削除された。しかし、中国社会科学院人権研究センター副主任の劉楠来教授は既に、「憲法がストライキ権を認めていないものの、法律上「ストライキ禁止」の規定もない。法律が禁止していないことは、すなわち許可されていることである」と見ている。

「労働組合法」は、「土地法」および「婚姻法」とあわせて、中国共産党が政権取得後に、1950年代に制定した最初の三つの法律である。その後の40数年間に、中国社会は天と地が引っくり返るような変化が起きたにもかかわらず、「労働組合法」は何の改定も加えられないまま、1992年に新しい「労働組合法」が公布されるまで継続していた。そのため、「労働組合法」は長い間、あってもなくても良い法律だと揶揄されていた。現在、中国では2億人以上の者が、賃金を主な収入源としており、そのうちの1億人は労働組合メンバーであるとされている。

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