(香港特別行政区)国連委員会、貧困対策で香港政府を厳しく批判

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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国連の「経済的・社会的・文化的権利の国際条約に関する委員会」は2001年5月、 香港の中国返還後最初に提出されたレポートで、 香港の貧困問題とそれに対する政府の対策の不備を厳しく批判した。 このレポートは、 2001年4月に香港政府代表がジュネーブの公聴会に出席した後で作成されたものである。

同委員会は、 香港政府が、 包括・統合され、 一貫性のある、 効果的な貧困対策を立案・遂行しておらず、 そのための十分な制度的整備も施していないとして、 強い懸念を表明している。 また、 香港の高等裁判所がいくつかの判決で、 経済的・社会的・文化的権利の国際条約の効力は、 事態の改善を促し、 もしくは要望する性質をもつにすぎないと解したことにつき、 そのような意見は同条約の法的義務の誤った理解に基づくものだと、 遺憾の意を表明している。 そして政府に対して、 貧困者を援助する戦略と対策を立案するために、 政府内の各部局をつなぐ委員会もしくは独立した委員会を設置すべきであると要望した。

また、 同委員会は、 政府が社会保障のための支出を増額し、 特に香港の社会保障制度の中心である包括的社会保障支援(Comprehensive Social Security Assistance)について、 その額をもっと増やすように要望した。

さらに、 同委員会は強制積立金(MPF)にも言及し、 この制度は退職後の保障をすべての人に与えるには不十分だとしている。 そして主婦、 自家営業者、 高齢者、 障害者のために、 さらに広範囲な年金制度を創設すべきだとしている。

なお, 同委員会は、 1996年に当時の植民地政府にも勧告を行い、 性別や年齢に基づく差別の禁止、 人権監視機関の設置、 労働者の権利のより大きな保護を求めたが、 これが返還後の香港政府によって実行されなかったことにも遺憾の意を表明した。 もっとも同委員会は、 1996年の機会均等委員会、 2001年1月の女性に関する委員会の設置に対しては、 満足の意を表明している。

同委員会は、 2003年に新たなレポートを作成するように香港政府に要求したが、 これに対して同政府スポークスマンは5月12日、 委員会の勧告を十分考慮して、 新たなレポートの作成に努めると言明した。

ちなみに、 このような国連委員会の勧告と時期を同じくして政府の統計が明らかにされ、 それによると香港の高齢者(年齢60歳以上の者)の約80%が月収5000ドル以下であることが明らかになった。 また、 高齢者の37.9%は月収2000ドル以下で、 政府が支給する月額2555ドルの平均的社会福祉給付を下回っていた。

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