(香港特別行政区)公務員、2年連続の給与凍結

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年8月

香港の公務員の給与は、毎年民間の給与水準の調査を基本に、それと連動して定められるが、2000年度の公務員給与は、この調査をもとに2年連続で凍結されることになった。調査は1999会計年度に、「公務員給与並びに勤務条件に関する常任委員会」の担当部署により、75の民間会社を対象に行われ、2000年5月上旬に結果が明らかにされた。それによると、算定の基準となる「総指標」は、下級、中級、上級ランクにつき、それぞれ0.62%減少、0.70%減少、0.87%増加となった。ここから年功序列に基づく年間の自動昇給を差し引いた「純指標」は、下級、中級、上級ランクにつき、それれぞれ1.78%減少、1.97%減少、0.41%減少と、いずれも減少を記録した。

この調査結果を受けて、労組、諸政党から直ちに意見表明がなされた。公務員関係諸労組は、士気の低下を招くとの理由で給与削減には反対したが、給与の凍結は甘受する旨表明し、工連会(FTU)は、削減にも凍結にも反対した。これに対して諸政党の反応は分かれ、多くの政党は、中小企業等にも支持基盤をもつ民建連(DAB)をはじめとして、給与の削減に反対し、凍結に止めるべきことを主張したが、香港財界を代表し、北京政府にも近い自由党は、調査結果に忠実であるべきだとし、また公務員の士気にも影響はないとして、あくまで給与の削減を主張した。

その後、10万人を擁する最大の公務員労組である中華公務員連盟(CCSA)は、給与凍結支持の主張を撤回し、公務員全体で一律に1.61%の昇給を要求した。CCSAは公務員と民間の給与格差が過去10年間広がっており、また政府の財政赤字も黒字に転じ、景気も回復してきているので、政府は今年度は19万人の公務員の一律給与増額の要求に応じるべきだとし、あくまで給与削減を主張するジェームズ・ティエン自由党党首を厳しく批判した。

これに対して2000年5月19日、他の公務員関係諸労組は、給与凍結支持を改めて主張したが、CCSAは増額の主張を撤回せず、労組内部の不一致で交渉力が弱まることに遺憾の意を表明し、昇給を求めて政府に対する働きかけを継続した。

このように労組内部の不一致や労組と自由党との対立がある中で、政府の側では、ラム・ウーン・クォン公務員担当長官が諸政党に働きかけ、今年度の給与凍結につき、民主党、DAB等有力政党の支持を確保した。そしてCCSA以外の公務員関係諸労組の支持も背景に、5月31日に2000年度の給与凍結を決定した。

ラム長官は、調査結果にしたがって給与を削減しなかった理由として、公務員制度の改革が漸進的に進行し、公務の遂行が効率化していることを挙げ、また公務員の士気、生活費、予算に対する考慮、景気回復、職員の給与に対する要望等も、給与凍結を決定した判断要因になったと述べている。

ちなみに、CCSA以外の公務員関係諸労組は、この決定の受け入れを表明したが、CCSAは、今後の行動をさらに検討していくとしている。

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