1999年の中国企業家調査システムの結果からみる国有企業の現状

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年5月

市場経済に向けて改革の最難関である国有企業改革で、一定の成果が現われてきた。赤字を抱えた数多くの大・中規模国有企業のうち、これまでに約半分の3000社余は黒字転換を果たし、1999年の利益総額も前年比で78%の増加を実現した。国有企業は果たして3年で苦境脱出の目標が実現できるか、中国企業家調査システムの結果から国有企業の現状を見てみる。

中国企業家調査システムは政府系調査部門が、政策立案のために、毎年大・中規模企業の経営者に実施するアンケート調査で、国内では最も権威のある企業調査の一つである。1999年末に新聞に公表した1999年度の調査結果をみると、企業経営者は、中央政府が実施した一連のマクロ政策が、アジア金融危機の波及の防止や国内のデフレ状況の改善に積極的な成果を上げたことを評価していると同時に、社会総需要の不足、経済構造の歪み、及び企業経営の不況を経済発展の制約要因と挙げて、政府による積極的な財政と貨幣政策を促している。

調査結果からみると、現在、生産停止及び半ば生産停止に追い込まれた企業の割合は19.7%であり、前年比で2.5%減少した。地域分布からみると、東部沿海地域ではこうした企業が最も少なく、15.3%に止まっている。西部地域と中部地域ではそれぞれ24.1%と25.9%である。国有企業の中では、生産停止や半ば生産停止の企業は25.1%であり、各種の非国有企業より5.9%~15.4%上回っている。

中央政府が1999年に行った一連の経済政策について、経営者が認めた有効性の順番に並べると、政府による投資の強化(81.4%)、密輸摘発(40.7%)、中小企業に対する融資の拡大(33.4%)、預貯金金利の利下げ(32.4%)、財政税率の下方修正(25.7%)、教育事業の発展(19.1%)、都市部住宅制度改革の加速(18.5%)、固定資産投資規模に対する規制緩和(17.3%)、輸出還元税率の上方修正(15.0%)、個人消費に対する融資の拡大(12.6%)などが挙げられている。

86.3%の経営者が企業経営の制約要因の第1位として、社会全体の需要の不足を挙げており、そのうち、民間の消費不足と輸出需要の不足が最大要因である。企業の損益状況をみると、赤字企業は前年比0.1%減少して29.7%となっており、黒字企業は50.4%となっている。そのうち、国有企業の中では、黒字企業は前年比1.8%減少し、赤字企業も1.5%減少した。

66.5%の企業経営者は資金不足に悩んでいる。それに対して資金に比較的余裕のある企業は、沿海地域に立地する企業、株式制企業、外資系企業に集中している。資金不足は企業投資に直接影響を与えている。2000年に新たに投資を追加しないと表明した企業経営者(全体の27.3%)のうち、85.3%は資金不足のためだと述べた。

市場の需要と供給について、経営者は供給が需要を上回るものとして、消費資料(91.4%)、不動産(85.0%)、原材料(77.3%)を挙げている。供給が需要に及ばないものとしては、技術(83.9%)、資金(81.2%)、人材(73.8%)及び情報(72.3%)を挙げている。技術、資金、人材と情報は、国有企業にとって最も期待する経営資源となっている。

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