(香港特別行政区)政府、ストライキ参加者保護の立法を提案

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年1月

特別行政区政府は1999年10月27日、ストライキを行う労働者を従来よりも保護する提言を行ない、これに対して労使、立法会議員等が意見を表明し、特に使用者団体が反発を強めている。

現行法(雇用条例)によると、使用者は、「合法的で理性的な秩序」に従わず又は自己の義務を遂行しない労働者を解雇でき、その際使用者は事前通知を要せず、解雇手当若しくは退職手当を支払う必要がない。

政府提言は、この現行法を、「労働組合を結成し、これに加入し、ストライキを行う」人民の権利を規定する基本法27条の線に沿って改正し、ストライキを行った労働者を使用者による即時解雇から保護しようとするものである。さらに政府提言は、障害、妊娠、性別、家族の地位等の不公平な理由によって解雇された労働者の復職を容易にする意向である。現行法では、使用者が同意するときだけ復職が可能であるが、政府の教育人材局は、使用者の同意の有無に拘わらず、労働裁判所の復職命令により労働者の復職を可能にすることを提言している。

マシュウ・チュン労働コミッショナーは、現行法は基本法に違反していた訳ではないが、文言があいまいであり、労働者がストライキを行った場合、それが直ちに契約の条件に違反しているのでないことが、「疑いのない程度」にまで明確にされねばならなかったと述べている。

組合出身の立法会議員リイ・チュク・ヤンとルン・イウ・チュンの両氏は、以前団体交渉権の立法化提言を否決された経験をもつが、労働者の即時解雇が否定されても、使用者は解雇手当若しくは退職手当を支払って、結局ストライキを行った労働者を解雇できる可能性があるので、政府提言はストライキ権の真の保護として不十分であると批判している。両氏はまた、就業時間内の組合活動を理由とする解雇が不公平な理由による解雇となることを明文化すべきだとしている。ルン氏はさらに、団体交渉権の立法化が労働者のストライキ権を保護する鍵となるもので、政府提言は小さな一歩を踏み出したに過ぎないとしている。

これに対して使用者側は、政府提言によるストライキ権の保護は、絶えざる労働争議を齎すことになる可能性があると警告している。ロス・セイヤーズ使用者連盟会長は、香港産業の競争力は維持されねばならず、サッチャー以前の英国のような状況に逆戻りはできず、またそのような産業社会の文化はそもそも香港の自由市場になじまないと述べている。また、中国政府寄りの自由党のジェームズ・ティエン党首は、使用者は企業の運営を意図的に妨害する労働者を解雇する権利をもたねばならず、労働者の権利と使用者の権利のバランスが保たれねばならないとしている。

政府提言は1999年10月27日、労働諮問委員会(Labour Advisory Committee)に付託され、審議の後、来年初めに立法会に提出されることになるが、香港エアクラフト・エンジニアリング会社(Haeco)のストライキ騒動でストライキ権論争が再び持ち上がっている時だけに、注目される動きである。

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