(香港特別行政区)観光業を巡る最近の動き

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

中国の記事一覧

  • 国別労働トピック:1999年12月

特別行政区政府は、ハイテク産業の育成と並んで観光業の活性化を将来の香港の産業構造転換の重点項目としているが、最近の観光業を巡るいくつかの動きについて見ていきたい。

観光業活性化の為に、政府は人的組織の面でも強化を図り、ドナルド・ツァン財務長官のもとでビジネス・販売促進部局を統括していたマイク・ローズ氏を観光コミッショナーに抜擢し、観光の目玉となっているディズニー・テーマパーク建設でも、ディズニー社との交渉で政府を代表させている。ローズ氏は、香港経済のためにも、香港が旧英国植民地のイメージを払拭し、中国の一都市として魅力ある観光目的地に脱皮する長期的構想が必要であると説き、9月11日に観光のための公聴会を開催したりしたが、さらに将来の観光に関する政府のシンクタンクとして、自ら議長を務める「観光戦略グループ」を発足させた。これにはエイミー・チャン香港観光協会事務局長を始め、香港の観光と拘わりをもつ20人の著名な実業家、学者、立法会議員が名を連ねている。同グループは今後香港の観光戦略につき積極的に政府に提言していくことになる。

具体的な観光構想としては、ランタウ地区のペニー湾に建設予定の上述のディズニー・テーマパーク建設交渉が、ディズニー側と最後の折衝を迎えている。ツァン財務長官の3月の財政演説によると、1998年8月にディズニー社からの申し出があって以来交渉が進んでおり、7月1日の返還2周年までに交渉を終えて具体案が発表されるとされたが、埋め立て、土地貸与、電気水道等のインフラ整備、株式所有等の問題も含めて最終合意に至らず、最終的な契約締結期限は4カ月延長された。しかし、政府筋では、その後も交渉は進展しており、10月末までに交渉を終えて具体的な契約内容が発表されるとしている。これが具体化すると、170ヘクタールの敷地に50億ドルの建設費を投じて5年がかりでテーマパークが建設され、年間500万人の観光客が見込まれることになり、周辺地域の開発を含めて、香港観光の目玉となる21世紀を見越した巨大プロジェクトが始動することになる。エイミー・チャン香港観光協会事務局長も、ディズニー計画は香港観光業の将来にとって最も重要な投資であるとしている。

この他にも、香港に国際的カジノセンターを建設し、総合国際会議場等を併設して観光業の活性化を更に進展させる構想が、ツァン財務長官が座長を務める22人の「経済企画グループ」で進められている。そしてこの構想は、9月になって同長官がワシントンの IMF・世界銀行の年次総会出席の途上ラスベガスを視察に訪れたことで一挙にクローズアップされている。しかし、今年中国への返還を控えたマカオから、香港とカジノ産業で競合することに対して猛烈な反対があり、他方、香港とマカオの関係に対する中国政府の意向も考慮するならば、この構想には今後紆余曲折があると思われる。

<家常豆腐>このような観光振興策の背景には、21世紀における香港観光業の発展とそれが創出する雇用の問題がある。世界観光トラベル会議は4月6日の年次総会で、1999年に観光業によって香港では23万6000人の雇用が創出されるとし、2010年までにこれは35万2000人、労働人口の11.4%に増大すると予測した。また世界ツーリスト連盟は9月2日、2020年までに中国本土がフランスを抜いて世界第1の観光目的地になり、香港も第5位にランクされることになるとの予測を示した。いずれにしても、香港政府の観光業活性化構想の背景にはこのような諸団体の統計もあり、上述のディズニー構想等も含めて今後の発展が注目される。

1999年12月 中国の記事一覧

関連情報