国有企業経営者に年俸制の導入

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年12月

国家人事部は最近、国有企業経営者を行政幹部に転任させたり、行政幹部を企業経営者に任命したりすることを廃止し、従来の国家幹部人事管理体制を改革することを表明した。

中央政府はこれと同時に、今後5年間に、専門的能力を備える国有企業経営者層を育成することを呼びかけている。これを受けて、各地域は相次いで企業経営者選抜基準を明確化し、さらに経営業績を踏まえた年俸制の導入を発表した。北京市は国有製造業企業経営者の公開選抜に踏み切り、明確な選抜基準を打ち出した。例えば、企業総経理(社長)の選抜基準としては、社長に相当するポストに2年のキャリア、もしくは副社長に相当するポストに3年以上のキャリアを持ち、さらに、大卒及びそれ以上の学歴が必要である。公開選抜は組織的な人選推薦、同業種内での公募、社会向けの公募及び選抜を通して、さらに面接試問や複数評価を行い、最終的に企業の主管行政機関は選抜された経営者との間に任命契約を締結する。それと同時に、北京市は国有製造業企業経営者に対して、業績を踏まえた年俸制を導入することを発表した。

南京市では、国有企業改革に伴い、1998年始めから年俸制を導入した。現在同市では経営者年俸制を実施しているのが251社である。そのうち、国有企業が135社で、全体の69%を占めている。経営者年俸制は、1999年から南京市のあらゆる国有企業とその他比較的規模の大きい企業にさらに広く導入された。

南京市政府の発表によると、年俸制の対象となるのは企業総経理(社長)及び董事長(会長)にあたる経営者である。経営者の年俸賃金は基本的に3種類からなっている。(1)生産経営が正常な企業の場合、経営者の年俸賃金は基礎年俸と業績年俸からなる。基準年俸の部分は企業の規模によって、1.5万元(1元=12.50円)から3万元となっているが、業績年俸の部分は企業の業績によって決められる。原則として従業員の平均賃金の8倍を超えてはならない。(2)これまで生産経営が良好でなかった企業の場合、経営者は企業の主管部門と請負契約を締結し、年収が決定される。その年収は企業従業員平均賃金の3倍を超えてはならない。(3)これまでが赤字経営の企業の場合、欠損状況の改善や黒字への転換などに応じて、年収が決定されるが、企業従業員の平均賃金の約4~5倍となる。

年俸制を導入した企業は、経営者の年収と企業の経営状況がリンクされるようになり、毎年度従業員代表大会と取締役会に報告しなければならない。経営者に年俸賃金を支給するのは上級主管部門であり、毎年、企業経営に対して会計審査を行い、それを踏まえて年俸を算出し支給する。経営者は毎年主管部門に対してリスク抵当金を納め、経営目標を達成できなかった場合、リスク抵当金が返却されなくなる。こうして、経営者に経営リスクを負わせると同時に、年俸制によるインセンティブを持たせている。このように、経営者年俸制の導入後、すでに一定の効果が現れている。南京市新百株式会社は、1998年の納税額は28.73%も増加し、従業員の平均賃金も2割増を実現した。総経理(社長)も従業員平均賃金の8倍の年収を得た。欠損企業だった南京江海航運グループは、1998年1500万元の赤字を解消した。総経理も従業員平均賃金の5倍に当たる年収を手に入れた。

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