(香港特別行政区)キャセイ航空、パイロットとの賃金紛争が終結

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年9月

5月にパイロットの電話による欠勤戦術で欠航便が相次ぎ、何千人もの乗客に対する影響も出て争いが深刻化したキャセイ航空の貨金紛争は、6月9日の会社側の最後通告期限が迫り、同航空の株式が8カ月ぶりの安値を記録するなど深刻さの度合を増した。会社側は、欠航便を補うために他の航空会社の支援を受けて臨時便を就航させ、他方パイロット組合は、海外のパイロットグループからの広範な支持を得て、ストライキに突入する構えも見せ、双方の歩み寄りは困難を極めた。だが、政府労働局の熱心な仲介もあり、土壇場の交渉まで難航した紛争は、6月10日の労使交渉でようやく決着した。

妥結内容は、早期退職を選択するパイロットの条件が若干良くなり、また若手パイロットの条件が向上したこと等を除いて、会社側が最後通告で提示した内容(時報8月号参照)とそれほど大差はないが、ほぼ以下のとおりである。

  1. 機長クラスのベテランパイロットには勤務地(香港、カナダ、オーストラリア、ヨーロッパ)の違いに応じて、17%から22%の賃金カットを行う。
  2. 賃金カットの見返りとして、1株7.47ドルで株式買取請求権を付与し、行使期間は10年とする。
  3. 若手パイロットについては、3?5%の賃上げを向こう3年間認める。
  4. 協約内容に、従来は会社の裁量に任された子供の教育費その他の諸手当の項目を加える。

1998年に5億4200万ドルの減収を記録した同航空も、この妥結内容によって向こう10年間14億ドルのコストを削減できることになるという(最後通告時点では削減できるコストは15億ドルだった)。

10日夜、約700人のパイロットが参加してパイロット組合の特別会議が招集され、これはシドニー、オークランド、バンクーバー、ロンドンに本拠をおくパイロットにもビデオで中継されたが、会議は新たな妥結内容にほぼ全面的に賛成した。

ジョン・フィンドリー・パイロット組合事務局長は、この妥結内容は常識のもたらしたもので、勝者も敗者もなく、香港市民と経済のためになるとしている。また、トニー・タイラー同航空開発部長は、他社からのチャーター便のコストその他の損失は大きいが、長期的には会社の大きな利益になり、キャセイはより競争力を備えた会社として再生するだろうと述べている。

ちなみに、6月15日の会社側の発表では、パイロットの全員が期限までに回答し、解雇された者はなかったが、45人(約6%)のパイロットが早期退職の道を選択した。

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