(香港特別行政区)失業増大の中、立法会、最低賃金制定の動議を否決

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年7月

政府が4月19日に発表した統計によると、1月~3月期の失業率は6.2%で、前期比で0.2ポイント上昇して最悪記録を更新し、失業者数も7200人増加して21万4000人になった。不完全雇用は3%で前期と同じだった。建設業、卸売業、小売業、飲食業、ホテル業等で特に失業の悪化が目立った。

政府エコノミストのタン・クォン・ユウ氏は、春節後に主婦層が大挙して労働市場に参入したことと、春節後に民間部門で解雇が増加し、臨時雇のレイオフも増加したことが失業率の上昇に影響を与えたとしている。同氏はまた、銀行資金の流動性の増大や金利の低下、株式市場と不動産市場の回復傾向など、経済の好転の兆しも過去数カ月間見えてきているとしているが、香港商工会議所のイアン・パーキン主任エコノミストは、このような傾向を実質経済の回復基調と見るのは未だ時期尚早だとしている。

このような香港の労働市場の悪化とともに、劣悪な賃金で雇用されている労働者の存在が指摘され、これとの関連で最低賃金を決定することが以前から労働側の立法会議員の一部から要望されていた。しかし、従来は主に自由市場の原理に反するという抽象的議論で政府と多数の議員は最低賃金法定に消極的だった。

だが失業率が最悪記録の更新を続ける中で、CTU 事務局長リー・チュク・ヤン立法会議員は4月28日、この高失業率のもとでの賃金の劣悪化は自由市場の原理に任せておくべき段階ではなく、政府の介入のもとに労働者の最低限度の生活を保障することが必要であるとして、最低賃金法定の動議を提出した。これにさきだちマシュウ・チュン労働局長は4月27日、現在の高失業率状況のもとでは、最低賃金法定によって現在それ以下の賃金の労働者は逆に職を失うから、これは失業状況をさらに悪化させ、賃金水準もさらに低下させると、反対の意向を表明した。そして立法会でも、最低賃金法定は失業増大を促進し、賃金カットの口実にされて最低賃金が最高賃金になりかねない等の議論が相次ぎ、道義的には賛成し得ても政策的には賛成できないと大多数の意見はこれに反対した。そして改革的でリベラルな民主党さえも決議に際して棄権し、動議はごく少数の賛成意見を得たのみで結局否決された。

労働市場状況の悪化とともに最近議論されてきた最低賃金法定の問題にも、これでひとまず決着がついたと言えそうだ。

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