世論調査からみた北京市民の職業選択

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年7月

1970年代から1990年代の間に、中国人の職業意識には大きな変化があった。「中国労働保障報」は1999年4月にあるアンケート調査の結果を発表し、一般北京市民の職業選択についての考え方を明らかにした。この調査は無作為で北京の一般成人市民から796人のサンプルを抽出し、1998年2月に行なわれたものである。

転職者の多くは積極的転職派

被調査者のうち就職経験者が748人であり、そのうち一度も転職しなかったのは約6割、2回か3回の転職経験があるのは32.2%、4回以上転職経験があるのは9.3%をそれぞれ占めている。被調査者の教育レベルと転職経験の間に一定の相関関係が現れ、教育レベルの高い者に転職の傾向が強い。高校及びそれ以下の学歴を持つ者の中では、一度も転職経験がない者が6割を上回るのに対して、大卒及びそれ以上の学歴の者の中では、転職経験がない者は半分以下にとどまっている。

転職経験者をさらにくわしく見ると、会社から解雇されたのは2割で、8割は自ら進んで転職した者である。さらに、転職と年齢にも強い相関性が現れ、転職経験者の中、年齢が30歳以下の若年層では、自ら進んで転職したのが95%と極めて比率が高く、3回以上も転職した者が16.3%を占めている。

40歳以上の中高年者は職業に対する安定志向が強く、自ら進んで転職する者は少なく、若年層のように簡単に仕事を変えたりしない傾向を示している。若年層と対照的なのは、40歳代以上の転職経験者の39.1%の者は意に反して勤務先の変更を余儀なくされていることである。31~40歳代の中でも、3割以上の者の転職は自らの意によるものではない。

いわゆる積極的転職派の中では、初めて転職したのが1980年代だったという者が19.2%を占めているが、絶対多数は1990年代になって初めて転職している。即ち1990年以降、会社が良くなければ、自ら進んで会社に見きりをつける、といったような意識が芽生え、定着したのである。

所得は職業選択の第一要素

職業や会社を選択する際に、通常考慮されることとして、16の条件を取り上げてそれぞれどれほど重視されるかを調査している。その結果をみると、所得の高いことが職業や会社選択において最も重視される要素である。その次は収入の安定性、3番目が自分の持つ専門知識との適合性である。

逆に、上司との人間関係、会社の知名度及び会社のステータスは一般的にさほど重視されていない。

中高年者は安定を重視

年齢要素とクロスしてみると、年齢層によって重視する事柄が異なってくる。40歳以下では最も重視しているのは所得である。いかにして高所得を得るかが彼らにとって最も重要である。41~50歳では、むしろ収入の安定性を最も重要と考えている。家庭の支出を負担しなければならないからであろう。50歳代以上にとって新たな知識や技術を習得することは困難なことであり、すでに持っている専門知識との適合性が彼らにとって最も重要である。

30歳以下の若年層が、収入の次に重視するのは、自分自身の才能を生かせるかどうかである。若いうちに自己価値の実現を強く希望している。50歳以上の人は福利厚生がよく、保障が整っていることを重要な要素として考え、老後の生活への関心を見せている。

教育水準と所得重視度は逆の相関関係

被調査者の教育水準と職業選択における考慮事項とをクロスしてみると、高校卒及びそれ以下の学校教育を受けた者では、最も重視するのは安定した収入である。それに次いで重視するのが「収入が高い」、「福利厚生が良い」、「保障がある」、の順になっている。教育レベルが相対的に低く、労働市場において比較的に弱い立場に立たされることが、彼らに安定志向を強めさせたのである。それに対して、大専(短大)や大卒以上の学歴を持つ者は、自分の専門知識との適合性をより考慮し、自らの能力を生かせるかどうかに注目している。

セカンドビジネスの退潮

1980年代から中国の都市部では、本職以外にセカンドビジネスを持つことが盛んになり、このような社会現象は多くの議論を引き起こした。今回の調査結果から見ると、かつてセカンドビジネスに従事していた人は13.7%あり、現在もセカンドビジネスを持つ人は4.9%となっている。現実におけるセカンドビジネス従事者の数値はこの調査結果よりやや高いかもしれないが、少なくとも1980年代に見られたようなセカンドビジネスのブームは大きく退潮した。たとえ国有企業でも、雇用の面において合理化が進み、セカンドビジネスを営む余裕がなくなったのである。

もう一つは、教育レベルがセカンドビジネスの経験と明らかに相関関係を示していることである。教育水準の高い者ほど、セカンドビジネスのチャンスが開かれてくる。中卒、高卒、大卒の各グループにおいて、セカンドビジネス経験者の比率はそれぞれ8.1%、11.5%、22.7%となっている。

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