(香港特別行政区)外国人家政婦の最低賃金5%減額

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年5月

1996年以来凍結されている外国人家政婦の最低賃金の減額に対しては各方面から反対が表明されていたが、特別行政区政府は2月2日、最賃の5%(190香港ドル)減額を決定し、同賃金額は3860香港ドルから3670香港ドルになった。新最賃は2月3日以降の新規契約に適用されるが、今後、フィリピン、インドネシア、タイ、ネパール、スリランカなどの約18万人の外国人家政婦が影響を受けることになる。

香港外国人家政婦雇主連盟および減額推進の音頭を取ったジェニファー・チョウ臨時市議会議員は、不況下の家計の苦しさを理由にそれぞれ35%ないし20%の最賃減額を要求していた。政府はこれに反対して当初は同賃金の凍結を予定していたが、結局は妥協する形になった。ジョセフ・ウォン人材教育長官は、平均的家計収入が1998年度の第3四半期に5%減少しており、それとの関係で5%は比較的少額の減額だとしている。

これに対して、香港在住家政婦を多く抱えるフィリピンのエストラーダ大統領が遺憾の意を表明し、組合や主要政党も香港でも最低レベルの賃金をさらに減額することに反対を表明した。工連会(FTU)のチャン・ユエン・ハン副会長は、この減額は他の香港労働者の賃金にも波及する可能性があり、その意味でも適切でないとしており、民主党のアンドリュー・チェン立法会議員は、政府に新最賃の撤回を求めた。

香港在住スリランカ人組合その他の組合によると、既に雇用主の中には解雇をちらつかせて新規でない従来の契約に対して5%減額を強制しているものもある。また、既に最賃を下回っている家政婦の闇市場での賃金が、減額された額よりもさらに引き下げられており、法定の最低賃金が守られず保証の趣旨が行き届いていないという指摘もなされている。

このような中で、香港で外国人家政婦を斡旋する香港雇用代理店連盟は、フィリピン政府に対してフィリピン人家政婦の斡旋の独占権を求めている。同連盟はこれと引き換えに会員を取り締まり、不当に高い仲介料も含めて法の趣旨に違反する慣行を阻止することを約束しており、フィリピン政府もこれを検討している。ただ、香港在住フィリピン人連盟は、これは代理店を利するだけだと強く反対している。

ちなみに職工会連盟(CTU)その他の組合も参加して、2月7日に政府に対する抗議のデモ行進が行われたが、外国人家政婦の参加は解雇を恐れて100名程度に止まった。

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