1999年労働政策の動向

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年5月

1999年3月、北京で開かれた第9回全国人民代表大会における政府の活動報告によれば、中国はやや安定志向を強める調整期に入っている。国営新華社通信は、「下崗」労働者のうち609万人が1998年に再就職にこぎ着けたと報道したが、再就職率は50%に過ぎず、仕事に就けない下崗労働者の数は依然として膨大な上、さらに増加傾向にある。このような状況は社会の不安定要因になりかねない。失業状態で生活困難な労働者の増加に歯止めをかけ、社会の安定を図ることは、1999年の労働市場における最重要課題であろう。中国政府の情報によれば、下崗労働者の生活保障と再雇用促進のため、1998年から政府主導で「下崗」の手続き、申告、登録の制度をより規範化すると共に、再就職センターの設立を社会的に推進した。労働と社会保障部の統計によると、1998年末には、下崗労働者を抱える企業すべてに再就職センターあるいはその機能を持つ組織を設立させ、下崗労働者の99%がこれに所属し、93%が生活保障を受けるようになった。

1999年に新たにスタートした労働政策の一つとして、全人代の開幕に先立ち、2月に「失業保険制度」が公布された。この失業保険制度は、国有企業だけでなく、外資、私営などの非国有企業をも対象とし、全体を同一基準で統一した。

全人代で最も注目されたのが憲法の改正である。これまでは社会主義公有制経済の補完のみとされていた私営企業や個人経営が、社会主義市場経済の重要な構成要素と位置づけられた。これは1999年に、中国がより積極的に非国有企業を発展させることを予告していると言える。私有企業に対するこれまでの規制を緩和し、特に資金貸付、市場進入、経営範囲などにおいて国有企業と同等の扱いが実施されるであろう。労働者が非国有企業に転職する場合も、これまでの勤続年数あるいは定年退職後の待遇等も継続される、といった政策的支援も講じられると見られている。大卒などの新規労働者が基本的に国有企業に配属されるといったような従来の政策も見直されるであろう。

さらに、1999年以降、中国はより一層労働集約型産業の発展に力を入れると思われる。政府は、飲食、小売、観光、コンサルティング、情報、文化、教育、スポーツ、法律、会計等に関するサービスといったサービス業、そして小規模の労働集約産業の育成に政策的支援を行うであろう。

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