(香港特別行政区)キャセイ航空、賃金めぐり客室乗務員と経営者側の対立進展

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年4月

賃金カットをめぐる香港テレコムの労使対立に続いて、香港の他の代表的企業キャセイ・パシフィック航空でも賃金をめぐって4800人の客室乗務員と経営者側の対立が続いている。

発端は経営者側が1998年10月に示した、1999年度の賃上げと引き換えに月間フライト時間を72時間から80時間に延長するという案だった。経営者側が35年間で初めての業績悪化を理由に、過去35年間の慣行だった1%から4%の毎年の自動昇給を否定したため、乗務員側は乗務員組合を中心に示威運動に出ることを示唆するなど強く抵抗していた。

その後の交渉で乗務員を代表して組合側は、毎年の自動昇給の維持を条件に3.5%の賃上げとボーナスなしで1年間に限り72時間のフライト時間を毎月4時間延長するとの譲歩案を提示した。だが経営者側は拒否し、1999年1月16日を期限として次の3つの選択肢を提示し、乗務員に回答すように要求した。

(1)72時間のフライト時間を毎月4時間延長して3.5%の賃上げを認める、(2)フライト時間を現行の72時間に維持して賃上げを凍結する、(3)自己退職を選択する。いずれの選択肢も自動昇給の割愛が条件とされている。

これに対して組合は初めは抵抗したが、1月22日にいったんは経営者側に要求受け入れを申し入れた。しかし、経営者側が乗務員に直接会社に回答をするように働きかけたことから、組合は硬化して26日に申し入れを撤回した。香港では団体交渉権は法律で認められていないが、キャセイ航空では23年前のストライキを契機に組合が結成されて以来、組合を通して乗務員の勤務条件を交渉してきたので、組合側からは経営者側の働きかけは組合の役割を無視するものと受け取られたためだ。これに対して経営者側は、乗務員個人の同意を得るように規定している1997年改正の雇用条例に従ったやむを得ない措置で、組合を無視したものではないとしている。

その後1月29日、乗務員組合は操縦士組合の協力を得て会合を開き、経営者側に賃金交渉を初めからやり直すように求めていくことを決め、個人的に経営者に同意の回答をした乗務員には同意書の返還を求めるよう呼びかけた。操縦士組合はキャセイ航空の1300人のパイロット中1111人が加盟する組合で、経営者側が組合を弱体化させようとしていることが乗務員組合に協力する理由だとしており、示威運動との明言は避けたが、会社側の出方によっては綿密に計画された行動に出るとしている。

キャセイ航空のトム・ライト総支配人は組合との交渉を続けて行くとしているが、今後の対立の動向が注目される。

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