基礎情報:フランス(2013年)
6. 労使関係

6-1 労使関係

労使関係制度を定めた重要な立法は、産業別協約交渉に関する法と、企業内での労使協議・労使交渉に関わる法がある。

現在の産業別協約に関する法の基礎となったのは1936年協約法で、協約制度の特徴点は、(1) 主な組合に代表性を認めたこと、(2) 労働大臣が協約交渉のための合同委員会に代表組織を招集すること、(3) 政府の決定による協約の拡張適用制度があることである。この拡張適用の仕組みにより、フランスの協約適用率は非常に高くなっている。組合組織率は低いけれども協約適用率は非常に高いのが特徴である。

企業内での労使協議・労使交渉の法によって義務付けられているのもフランス労使関係の特徴である。企業委員会は、従業員50人以上の企業に設置が義務付けられている。企業委員会において、選出された従業員代表との間で経営の決定事項に関する協議が行われることになる。また、ミッテラン政権下の1982年には労働者の権利を強化する「オールー法」が成立した。この法律は、組合がある企業に主に労働時間や勤務形態等に関する年に1回の企業内交渉を義務付けたものである。この企業内における協議と交渉の義務付が、フランスのもう一つの特徴と言える。

資料出所:(社)生活経済政策研究所(2008)「フランスの労働組合と左翼政党(松村文人著)

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6-2 労働組合

概況

労働組合員数 185万人、組織率 7.8%(2010年)

労働組合組織率は、ここ10年来ほぼこのレベルで推移している。

表:労働組合組織率の推移
1999年 2000年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
8.1% 8.0% 7.7% 7.6% 7.5% 7.6% 7.9% 7.8%

資料出所:OECD Database

労働者団体:

フランスにおける最古の労働組合は、CGT(労働総同盟)と言われており、1895年に結成され、100年以上の歴史がある。その後、1960年代頃までの労働組合の創設と組織分裂の経緯を経て、1980年代までに主要5労組(CGT(労働総同盟)、CGT-FO(労働総同盟労働者の力)、CFDT(仏民主労働同盟)、CFTC(仏キリスト教労働者同盟)、CFE-CGC(管理職総同盟))の体制ができあがった。この5労組には国から全国的な代表性が認められ、所属組合には無条件で交渉権が与えられてきた。

だが、90年代以降、組織の分裂、再編と統合を経て、現在は教員系のFSU(統一組合労連)、UNSA(独立組合全国連合)(教員や独立系の組合が加盟)SUD(連帯統一民主労働組合)の3つを加えて主要8労組という状況になっている。

表:フランスの主な労働組合
団体名 設立年 組合員数
(組合発表)
組合員数
('07年推定)
組織の性格
労働総同盟(CGT) 1985年 65万人
(2011年)
523,800人 フランスにおける初のナショナルセンターとして結成。社会主義者、無政府主義の立場から労働組合の統合を主張するアナルコ・サンジカリストの影響で強い組織。現在のフランスの5つのナショナルセンターと一つの大きな独立組織は、いずれもCGTに起源を持っている。
仏民主労働総同盟(CFDT) 1964年 863,674人(2012年) 447,100人 1919年設立のCFTCが規約改訂によりCFDTとなった。あらゆる宗教的指向および闘争における急進化の除去を推進し、反資本主義的および第三世界主義的方向性を標榜する。
労働総同盟労働者の力(CGT-FO) 1948年 約80万人 311,350人 戦後のCGTではコミュニストグループが多数派を占め、少数派となった改良派が冷戦開始の時期に離脱して創設。
管理職総同盟(CFE-CGC) 1944年
 (注)
143,240人(2012年) 82,000人 企業内の管理職、技師、その他の上級ホワイトカラー、技術者や職長を組織する産業横断的な職種別組合。
仏キリスト教労働者同盟(CFTC) 1919年 142,000人(2008年) 106,000人 カトリック教会の社会的教義に則った活動方針を掲げる労働組合で構成。
統一組合連盟(FSU) 1992年 163,000人 120,000人 90年代に起きた教員組合の分裂の結果、独立系組合と結合する状況の末に設立された教職員組合。
独立組合全国連合(UNSA) 1993年 36万人(2013年) 135,000人 教員や独立系の組合が加盟して構成。
連帯統一民主労働組合(SUD) 1981年 10万人(2011年) 80,000人 1981年結成のG10(グループ10)という組織が母体となり、CFDTからの分裂組合であるSUDが加わって発展。

注:1944年にCGCとして設立され、CGCとUCTの分裂を経て、1981年にCFE-CGCとなった。

資料出所:Dominique Andolfatto, Dominique Labbé (2007) "LES SYNDIQUÉS EN FRANCE 1990-2006"、各労組のウェブサイト及び国際労働財団のナショナルセンター情報を参照

フランス労働法典は、労働協約の労働者側の当事者性について「(労働協約または集団協定は)協約あるいは協定の適用領域における1または複数の代表的組合組織によって」締結されなければならないと規定している。

フランスにおいては「代表的労働組合」のみが協約に署名する能力を有していることになり、いわば労働協約の締結権限がこの「代表的労働組合」に独占されている。

この労働組合組織の代表性の要件は従来、1966年3月31日のアレテに基づいて決められており、CGT、CFDT、CGT-FO、CGC-CFE、CFTCの5つの主要労組には、全国的な代表性が認められ、所属組合には無条件で交渉権が与えられてきた。この代表性の付与に関する規定が、2008年8月20日の法律によって大幅に改正された。2008 年法以降、労働組合の代表性は、団体交渉のそれぞれのレベル(企業および事業所単位、企業グループ単位、職業部門単位、全国職際レベル)において、7つの基準によって決定されることになった。2008 年法は、労働組合の代表性の付与について、従来に比べて厳格な枠組みを設定しており、企業レベルにおいては、職場選挙において有効投票の 10%を獲得した組合に割り当てられ、産業部門または職際レベルにおいては、代表制は有効投票の 8%のラインをクリアすることが前提となる。この職場選挙における支持の獲得のラインは、他のファクターと相まって、労働組合の部分的な再編成につながるものと考えられている。

代表性の付与の要件である選挙結果が2013年3月29日発表され、従来と同様の5つの主要労組に代表性が付与されることになった。

資料出所:JILPT(2013)「労働政策研究報告書No.157 現代先進諸国の労働協約システム―ドイツ・フランスの産業別協約―(第1巻 ドイツ編)(第2巻 フランス編)

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6-3 使用者団体

分裂を繰り返している労働組合とは異なり、使用者団体については、全国レベルおよび職際レベルにおいては、主に 2 つの組織の中に結集している。すなわち、フランス企業運動(Mouvement des entreprises de France=フランス経団連:Medef)および中小企業総同盟(Confédération générale des petites et moyennes entreprises:CGPME)である。このほか、上記の全国職際組織に加入していない、職種別の使用者組織がいくつかあり、主なものとしては、手工業職業連合(Union professionnelle artisanale:UPA)、全国農業経営者組合連合(Fédération nationale des syndicats d’exploitants agricoles:FNSEA)、全国自由職団体連合(Union nationale des professions libérales:UNAPL)等である。

表:フランスの主な使用者団体
団体名 設立年 加盟企業数 組織の性格
フランス企業運動(MEDEF) 1998年 75万社 1946年設立のフランス経営者評議会(CNPF)を引き継いだ経営者団体。企業規模を問わず全産業・全国にまたがる。
中小企業総連盟(CGPME) 1944年 55万社 工業部門の中小企業、全国規模の宣伝・サービス業、欧州及び国際レベルの公共企業体を代表する。
手工業連合会(UPA) 1983年 12,000社 全国小規模建設業者連盟(CAPEB)、手工業・サービス業連盟(CNAMS)、食品小売業者連盟(CGAD)、手工業・公共事業全国商工会議所(CNATP)の4団体の下に、約55の全国組織の業界連盟と5,000の県レベルの加盟団体を擁する。
全国農業経営者組合連合(FNSEA) 1946年 32万社 農業、酪農等を専門とする個人及び組織によって構成される。
全国自由職団体連合(UNAPL) 1977年 69,000社 健康・保健関連、法曹関連、技術・生活環境に関連する組織の集まり。
クロワサンス・プリュス(Croissance Plus) 1997年 235社 ハイテク産業やバイオテクノロジーを中心とする技術革新力のある企業の振興を目的とする団体。

資料出所:各使用者団体のウェブサイト

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