基礎情報:フランス(2013年)
5. 社会保障

5-1 公的年金制度

制度体系:
図表:フランスの公的年金制度体系
対象者:
被用者は強制加入。無業者は任意加入不可能。(無年金者や年金を含めた所得が最低限の生活には不十分である高齢者は、無拠出制の高齢者最低所得保証給付Minimum Vieillesseに頼ることができる)
保険料率:
以下は一般制度の1階部分の保険料率(2013年1月1日より)。
  • 被用者は、37,032ユーロ/年までの給与に対して6.65%、全給与に対して0.1%。
  • 使用者は、37,032ユーロ/年までの給与に対して8.3%、全給与に対して1.6%。
支給開始年齢:
制度により異なるが、原則として60歳。2011年7月1日以降、段階的に引き上げられ、2017年には62歳へとなることが決定されている(2010年の公的年金制度改革による)。
また、満額受給に必要な保険料拠出期間は、60歳時平均余命の伸長を考慮して、段階的に引き上げられる。(現在、1953年生まれの者の場合、41年2カ月、1954年生まれの者の場合、41年7カ月)
最低加入期間:
3カ月
国庫負担:
財源の64.2%(2011年、以下同様)は労使拠出の保険料であるが、雇用促進のための社会保険料雇用主負担免除分の国庫による補填(財源の1.1%)、不動産収入などに賦課される租税(同10.1%)、老齢連帯基金による拠出(同18.8%、同基金の財源の大部分は一般福祉税)など、財源に占める労使拠出の保険料以外の比率は高まる傾向にある。
繰り上げ(早期)支給制度:
職業活動を17歳以前で開始し、満額受給に必要な保険料拠出期間+2年以上の長期にわたって就業活動に従事した者は、60歳以前で公的年金を受給することが可能。(長期就業者に対する早期支給は、2003年より可能となり、2010年に、再改正された)
年金受給中の就労:
65歳以上の労働者と完全年金(フルペンション)の受給権を持つ60歳以上の労働者は、収入に関係なく、年金を満額受給できる(2009年1月1日から)。上記の条件を満たさない場合でも、年金額と賃金額の合計が引退(年金支給開始)直前の賃金額を超えない場合、年金額は減額されない。
同様に、上記の条件を満たさない場合でも、自営業者(非賃金労働者)として就業する場合、一般制度による年金を受給することは可能である。

資料出所:国立社会保障・人口問題研究所(2007)「フランス年金制度の現状と展望 (嵩 さやか著)」

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5-2 企業年金制度

設立:
年金貯蓄プラン(PERCO : Plan d'épargne pour la retraite collectif)
※各企業を対象(制度導入は任意)
加入資格:
年金貯蓄プランを導入している企業に勤める賃金労働者(勤続3カ月以上)(任意)
支給開始年齢:
年金受給開始時
給付水準:
運用結果による(運用方法は賃金労働者自身が選択する)。労働者自身の拠出額は,最高で年間給与の4分の1。雇用主による拠出は,最高で年間5,925.12ユーロ(2013年)
公的年金制度との調整:
特になし

資料出所:フランス政府公共サービスサイト、フランス厚生省ウェブサイト

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5-3 社会保険料の労使負担割合

表:フランスの社会保険料負担割合
  年金(老齢保険) 医療 介護 雇用 家族手当4) 住宅支援金への拠出
労働者 6.65%1) 0.1%2) 0.75%2) 主に税財源 2.40%3)
使用者 8.3%1) 1.6%2) 13.1%2) 主に税財源 4.00%3) 5.4 0.1

(注) 表は民間部門の場合。

  1. 36,372ユーロ/年までの給与に対する割合。このほかに寡婦保険0.1%があるがこれは本人負担。
  2. 対全給与。
  3. 145,488ユーロ/年までの給与に対する割合。
  4. フランスの家族手当には、児童手当のみならず出産手当、育児休業手当に相当するようなものまで含んでいるため、別枠に計上。

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5-4 公的扶助制度

積極的連帯所得手当(RSA)

根拠法:
社会福祉・家庭法典
管理運営主体:
家族手当金庫(CAF)、農業社会共済(MSA)、県、雇用年金省
財源:
国の一般財源(社会保障拠出・給付法、社会保障管理法)
対象者:
25歳以上、もしくは1人以上の子(胎児を含む)がいる25歳未満のフランス居住者
目的:
所得のない者に対し、「最低限の生活手段を保障し、職に就くあるいは復職することを奨励し、社会参入を手助けする」制度として、RMI(社会参入最低所得手当)及びAPI(単親手当)に代わり、2009年6月1日より全国的に導入された。職に就くと手当の支給が止められたRMIに対し、RSAでは、最長で3カ月間、就労所得とRSAを同時に取得できる。
被保護者世帯数:
2,086千世帯(2012年6月末現在)
被保護者数:
4,500千人(2012年6月末現在)
基準額:
RSAの定額金は、世帯の収入・構成人数等により設定(2013年1月1日)
単身者
  • 子どもなし:483.24ユーロ
  • 子ども1人:724.86ユーロ
  • 子ども2人:869.83ユーロ
  • 2人目以降:1人増えるごとに189.97ユーロが加算
カップル・夫婦
  • 子どもなし:724.86ユーロ
  • 子ども1人:869.83ユーロ
  • 子ども2人:1,014.84ユーロ
  • 2人目以降:1人増えるごとに193.30ユーロが加算
※給付額は、(定額金+世帯の就労所得の62%)−(家族手当等による世帯収入+定額の住宅援助)により計算される。

資料出所:フランス政府公共サービスサイト、家族手当公庫(CAF)ウェブサイト

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5-5 育児休業制度

根拠法令:
労働法典
対象者:
男女労働者。実親、養親、継親子の扶養権を引き受けた者
請求権行使の要件:
子の出生又は3歳未満の養子を引取りの日に最低1年の勤続を証明すること
期間:
子が3歳に達するまでの間。最初は1年間の育児休業を取得でき、その後2回更新できる(満3歳で終了)。しかし、子が重度の病気・事故・障害を負った場合は、休業期間を延長できる。休業中、「乳幼児迎え入れ手当(=Paje)」のCLCA(活動自由選択補完措置)から、第1子は6カ月間、第2子以降は3歳までの間、賃金補助(完全休業でPajeの基礎手当を受給していない場合、月額566.01ユーロ(金額は2012年))の受給が可能。2006年7月以降に生まれた第3子以降を対象に、休業期間を1年間に短縮する代わりに賃金補助が約5割増で受取可能な選択肢(Colca=選択的活動自由選択補完措置)を創設。
形態:
子が3歳になるまで、
  • (1) 1~3年休職する、
  • (2) パートタイム労働(週16~32時間)に移行する、
  • (3) 職業教育を受ける、
のいずれかの方法又はその組合せ。
請求予告期間:
産休に連続する場合、休業開始1カ月前。その他の場合、休業開始2カ月前。
解雇・不利益取り扱い:
育児休業を理由に解雇することはできないが、それとは関係のない場合(例:経済解雇)はできる。
復職:
以前と同じ又は同程度の職に復帰できる。
担保方法:
罰金。使用者による損害賠償、解雇手当金等の支払い。
有給・無給:
無給。
休業期間中の社会保険の取扱:年金について算定基礎となる。
中小企業の取扱:
すべての事業所について休暇制度を完全に実施(1995年1月より)
その他:
休業中又はパートタイム労働期間中は職業活動を行ってはならない。

資料出所:フランス政府公共サービスサイト

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5-6 育児に対する経済的支援(児童手当等)

児童給付

家族手当(Les allocations familiales (Af))

根拠法令:
社会保障法典
管理運営主体:
全国家族手当金庫(CNAF)
財源:
企業の拠出金(44.2%、2011年、以下同様)、一般福祉税など租税(22.0%)、諸手当に対する国及び県の負担金(21.5%)(全国家族手当金庫(CNAF)の主な財源)
受給(適用)要件:
20歳未満の子を2人以上扶養している者(所得制限なし)
給付(控除)内容:
子の年齢や数に応じて決まる。11歳未満の子2人の場合、月額127.05ユーロ(2012年12月20日現在)

乳幼児迎え入れ手当の基礎手当(La prestation d'accueil du jeune enfant (Paje))

根拠法令:
社会保障法典
管理運営主体:
全国家族手当金庫(CNAF)
財源:
(上記、家族手当の項に同じ)
受給(適用)要件:
  • 2004年1月1日以降に生まれた3歳未満の子がいる親(所得や子の数に応じて制限がある)
  • 16歳未満(フルタイムの教育・職業訓練を受けている場合は20歳まで)の子を扶養している者
給付(控除)内容:
月額182.43ユーロ(2013年1月1日現在)
第1子は20.30ポンド/週、
第2子以降は一人当たり13.40ポンド/週

※備考:上記以外に様々な家族給付があるほか、税制上又は年金上の優遇措置がある。

資料出所:政府公共サービスウェブサイト、家族手当金庫(CAF)ウェブサイト

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5-7 保育サービス:就学前児童向け託児施設の設置状況

種別:
集団託児所
設置運営主体:
市町村、民間、非営利団
財源:
市町村に対しては、家族給付全国公庫から補助金が支給される。非営利団体は、市町村からの補助金を受給できる。
料金:
パリ市の運営する保育所の場合、1人1カ月30~570ユーロ(親の所得に応じて変わる)。因みに、パリ市内の民間保育所の料金は1人1カ月1,500ユーロ程度。
利用者:
0~3歳児。市町村立の保育所の場合、当該自治体の住民でなければ利用できない。
利用状況:
3歳未満を対象とした集団託児所Crèches collectivesの設置数は2,134カ所、受入人数は86,767人(2010年)。
2007年に政府が実施した調査では、3歳未満の乳幼児の11%が託児所に預けられている。
認可された保育サービスを利用する者の割合:
3歳未満
集団託児所や認定保育ママなど各種の保育サービスが充実、3歳未満児の約半数が利用認定保育ママの利用に対する保育費用補助など、家族給付制度が財源的にも保育を支えている。
  • 3歳未満児に対する保育の定員割合:15.3%(2010年)
  • 集団託児所(一時保育所含む):12.7%
  • 家庭保育所:2.6%
このほか2歳児の25%が幼稚園に早期入学、半数近くが保育サービスを利用。
3歳~就学前
  • 3歳以上の子どもの幼稚園(保育学校)への就学を保障
  • ほぼ100%が幼稚園に就学

資料出所:調査研究政策評価統計局(DREES)ウェブサイト

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例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:フランス」