基礎情報:フランス(2013年)
2. 雇用・失業対策

2-1 公共職業安定制度

基本業務(職業紹介等)

雇用局(Pôle emploi)が全国ネットワークの職業紹介等を直接実施している。なお、2009年1月より、ANPE(Agence Nationale pour l'Emploi: 職業安定所/国立雇用紹介所)は失業給付機関(UNEDIC: Union nationale interprofessionnelle pour l'emploi dans l'industrie et le commerce /全国商工業雇用協会)と統合され、名称が雇用局(Pôle emploi)に変更。

資料出所:雇用局ウェブサイト

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2-2 労働者派遣制度

労働者派遣事業についての法規制

労働者派遣に係る1990年7月12日法(最初の派遣法制定は1972年。これまでの主な改正内容は派遣事由及び派遣期間に関するもの)。

営業開始にあたって、その所在地の労働監督官に事前届出をすることが義務付けられている。また、財政的保証が必要。産業医としての派遣労働は禁止されている。

営業開始にあたって、その所在地の労働監督官に事前届出をすることが義務付けられている。また、財政的保証が必要。産業医としての派遣労働は禁止されている。

派遣労働の利用禁止事由は、(1) 争議参加労働者の代替、(2) 危険業務、(3) 経済的解雇実施後の6カ月間、(4) 派遣期間満了後、一定期間経過以前の派遣労働の利用(代替労働、緊急作業の場合を除く)。

恒常的業務に関わる派遣労働の利用は禁止されており、利用事由は、(1) 代替要員の補充、(2) 企業の業務量の一時的変化への対応、(3) 本来的に一時的な業務(季節労働等)、(4) 雇用政策上の措置(訓練目的の派遣労働及び就職上の困難に直面する者の派遣労働)―のいずれかでなければならない。

派遣期間の上限は原則18カ月、更新は1回まで(更新前の契約期間と合わせて18カ月以上は、原則として不可)。他の雇用者の代替要員及び安全確保のための緊急作業の場合は最長9カ月。

派遣先労働者との賃金、労働条件の均等原則あり。派遣先は派遣元の社会保険料の未払いについて連帯責任あり。2005年1月18日可決の社会統合法により、派遣業事業を失業者に対する職業紹介にも拡大(職業紹介の解禁)。

労使協約に基づき、派遣会社の拠出による派遣労働者訓練基金(FAFTT)及び派遣労働雇用基金(FPETT)が設けられている。

資料出所:JILPT(2012.9)「諸外国の労働者派遣制度における派遣労働者の受入期間について(PDF:1.1MB)」、同(2011.6)「諸外国の労働者派遣制度(PDF:1.1MB)

労働者派遣事業の現状

派遣労働者数:
フルタイム労働者数換算(注)で約57.6万人
(雇用者全体に占める割合は3.2%)
主な職種:
製造45.3%、サービス33.8%、建設20.4%、農林水産0.4%
主な業務:
非熟練生産労働者36.5%、熟練生産労働者41.4%、事務系労働者12.2%、幹部職・職長・技術者8.1%、上級幹部職1.8%
若年層(34歳以下)の割合:
61.3%
男女比:
男性72.5%、女性27.5%
平均派遣期間:
1.8週

(注) フルタイム労働者数換算(Volume de travail en équivalents-emplois à temps plein)とは、全派遣労働者の派遣労働者としての就業週数の総計を52週で除したもの、すなわち、派遣労働者が、年間を通じて、フルタイムで派遣労働者として就業していたと仮定した場合の労働者数。

資料出所:労働省ウェブサイト

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2-3 失業保険制度

雇用復帰支援手当(ARE)

根拠法:
労働法典L.5422-1条及び2011年5月6日の労使協定
被保険者:
民間の雇用労働者
受給要件:
  • (1) 失業保険制度に一定期間加入
    • 50歳未満:離職直前28カ月間で122日(610時間)以上
    • 50歳以上:離職直前36カ月間で122日(610時間)以上
  • (2) 正当な理由がなく自己都合退職(辞職)した者ではないこと
  • (3) 就労活動に必要な身体能力があること
  • (4) 雇用局(Pôle emploi)に求職者として登録されていること
  • (5) 求職活動を、実際に、かつ継続的に行っていること
    • 再就職活動の指針となる「個別就職計画(PPAE:Projet Personnalisé d'Accès à l' Emploi)」に従って行う
  • (6) 原則として、60歳未満であること
給付水準:
給付額(日額)は離職前の賃金(月額)及び勤務形態(フルタイム、パートタイム等)に基づいて算定。フルタイム労働者の場合、以下のいずれかによる。
  • 1144ユーロ未満:
    支給額(日額)は、離職前の賃金(月額÷30日)の75%
  • 1144~1253ユーロ未満:
    支給額(日額)は、28.21ユーロの定額(月額換算では、829.8ユーロ)
  • 1253~2070ユーロ未満:
    支給額(日額)は、離職前の賃金(月額÷30日)の40.4%+11.57ユーロ
  • 2070~12124ユーロ未満:
    支給額(日額)は、離職前の賃金(月額÷30日)の57.4%
 (2012年7月現在)
給付期間:
  • 50歳未満:
    4カ月(122日)~24カ月(730日)
  • 50歳以上:
    4カ月(122日)~36カ月(1,095日)
  • 60歳以上の受給者で、満額老齢年金を拠出期間不足で受給できない者は、最長65歳4カ月まで受給可能。
財源:
保険料 (2011年)
保険料率は総賃金の6.4%
被用者:2.4%
事業主:4.0%
 
国庫負担
財源の98.9%は,被用者及び雇用主の拠出金である。
(2007年: 被用者 12.0%、事業主 13.8%)
管理運営主体:
雇用局(Pôle emploi
備考:
失業給付の受給期間を満了した長期失業者などを対象とした連帯失業手当制度がある(参考表参照)。

資料出所:JILPT(2010)「資料シリーズNo.70 ドイツ・フランス・イギリスの失業扶助制度に関する調査」、雇用局ウェブサイト

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2-4 補足的な失業扶助制度

連帯失業手当(ASS:Allocation de solidarité spécifique

根拠法令:
労働法典第L5423条など
管理運営主体:
規則制定などの制度管理は政府、事業の管理運営は雇用局(Pôle emploi)
財源:
政府の一般財源(全額国庫負担)
受給対象者:
原則失業給付(雇用復帰支援手当(ARE))の受給期間を満了した長期失業者。自発的にASSの受給を選択した50歳以上のARE対象者。
受給要件:
  • (1) 離職前10年間に5年以上就業していたこと
    (但し、子どもを育てるために休業していた場合は、3年を上限として子ども一人につき1年、就業年数の条件を軽減できる)。
    なお、離職前10年間に就業していた期間が5年未満の者については、積極的連帯所得手当(RSA:Revenu de solidarité active)を受給できる。
  • (2) 実際に求職活動を行っていること
    (但し、55歳以上の者については免除される)。
  • (3) 手当を申請した時点で、家族扶養手当及び住宅手当を除く一カ月の収入が、一定額(2012年12月31日現在,単身者1,113ユーロ、夫婦1,749ユーロ)に満たないこと。
給付水準:
世帯収入に応じて給付額が決まる。(2012年12月31日現在)
単身者の場合
  • 月収636ユーロ未満:477ユーロ(月額)
  • 月収636~1,113ユーロ未満:1,113ユーロと収入の差額(月額)
  • 月収1,113ユーロ以上:給付ゼロ
夫婦・カップルの場合 (1人当たり)
  • 月収1,272ユーロ未満:477ユーロ
  • 月収1,272~1,749ユーロ未満:1,749ユーロと収入の差額
  • 月収1,749ユーロ以上:給付ゼロ
給付期間:
原則6カ月(更新可能)
給付実績:
受給者 33万7900人(2009年12月31日)
支給総額(2009年実績):
18.32億ユーロ(約2000億円)

備考:60歳以上の受給者で、満額老齢年金を拠出期間不足で受給できない者は、公的年金の満額支給開始年齢(65歳から67歳に段階的引き上げ中)まで受給可能。
月に78時間以上の賃金労働に就いた場合、仕事を始めてから3カ月間は仕事による収入とASSの全額を得られる。4カ月目から12カ月目までは、ASSの給付額から仕事による収入分が天引きされるが、雇用局から毎月150ユーロの特別手当が支給される。さらに、4カ月連続で月78時間を超えるひとつまたは複数の賃金労働に従事した場合、雇用復帰特別手当として1000ユーロが支給される。

資料出所:フランス政府公共サービス、雇用省報告書 "Les allocataires du régime de solidarité nationale en 2009"

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2-5 困難な状況にある者に対する施策

高齢者向け施策

供給側(求職者及び労働者)に対する施策(相談、援助等)

「被用者の職業人生にわたる訓練機会」に関する全国業種横断的協約
開始年月:
2004年5月
適用範囲:
全ての企業の全被用者が対象
内容:
フランスの企業は、被用者への訓練機会の付与が法律で義務づけられており、労使が高齢労働者・熟練労働者のための様々な訓練参加権を労働協約で規定し、被用者の訓練への参加を促進。
  • 例) 45歳以上か20年以上の職務経験がある被用者で勤続1年以上の者は、優先的に技能検定を受講できる他、時間外の職業訓練を受講する場合は、給与の50%相当の教育訓練手当が企業から支給される。

需要側(事業主)に対する施策(助成措置等)

統一参入契約CUI (Contrat Unique d'Insertion)

(2010年1月1日に、それまでの雇用主導契約CIEなどが統合された。)

開始年月:
2008年12月
内容:
雇用局(Pole emploi)とCUI協定を結び、高齢者や障害者等就職に困難を抱える者をCUIに基づいて雇用した事業主に対し、最低賃金(SMIC)の47%を上限に、最長2年間の賃金補助を実施。
求職者を採用する使用者に対する逓減支援(ADE)
開始年月:
2006年1月 (2009年1月1日廃止)

資料出所:厚生労働省(2007)「世界の厚生労働」、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(2012)「諸外国における高齢者の就業形態の実情に関する調査研究Ⅰ(主要国編)」、厚生省ウェブサイト 、フランス政府公共サービス

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2-6 年齢に関する法制度(定年等関係)

根拠法令:
労働法典L1132-1条(差別防止に関する一般規定)など(「差別防止に関する法律」(Loi relative a la lutte contre les discriminations)により改正)
施行年月:
2010年1月に改正
定年制:
可(原則として、70歳以上)。
但し、一定の条件の下、67歳以上の定年設定が可能。(1955年以前生まれの従業員に対しては、65歳4カ月~66歳8カ月以上の定年設定が可能。)公務員の場合は職種により55-65歳(但し、延長が可能な場合もある)。
高齢者の解雇に対する特別な保護等:
  • 高齢者の解雇時の追加負担制度(ドラランド拠出金)の廃止。
    50歳以上の労働者を解雇する場合、企業が失業保険の拠出金を支払う制度は、(中高年の採用を躊躇する原因になると考えられていたため、) 2008年1月1日に廃止された。
  • 整理解雇時における高齢者等への配慮義務
    企業が経済的な理由による解雇(整理解雇)を行う際に定めなければならない解雇の順番の基準において、高齢者等の状況を特に考慮しなければならない。

資料出所:鈴木尊紘(2009)「フランスにおける差別禁止法及び差別防止機構法制」、フランス法律データベース(Legifrance)

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2-7 障害者雇用対策

根拠法:
労働法典L5212
対象者:
身体的、知的、精神的機能又は感覚器官の機能の悪化により雇用を獲得し維持する可能性が現実に減退している全ての者。雇用義務制度の受益者の範囲は、CDAPH(障害者権利自立委員会) によって障害を持つ者として認定された労働者、労働災害あるいは職業病の犠牲者、障害年金の有資格者、障害者手帳の保有者、成人障害者手当(AAH)受給者、旧軍人及びそれと同様の者。
雇用主への規制:
賃金労働者が20人を超える公共・民間事業主に対し、6%の障害者雇用の義務付け。雇用率を満たさなくても4つの代替的手段(納付金制度における拠出金、保護的労働セクターとの下請契約、研修での障害者の受入れ、労使協定による雇用プログラム)をとれば満たしたものと認める。但し、保護的労働セクターとの下請契約、研修での障害者の受入れの利用には上限がある。
手続き等:
負担金の徴収方法
  • 使用者は、毎年雇うべき障害者1人につき決められた拠出金(最低賃金時給の400~600倍)を障害者職業編入基金(AGEFIPH)に納付する。
助成方法
  • AGEFIPHが拠出金を使用者から徴収し、一般雇用されている障害者の賃金保障、就業している障害者やその使用者に対する一括払いの統合助成金、雇用継続のための資金、職場改善のための資金として助成している。

資料出所:(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(2012)「調査研究報告書No.110 欧米の障害者雇用法制及び施策の動向と課題」、永野仁美(2009)「フランスの障害者雇用政策」

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例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:フランス」

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