基礎情報:フランス(2013年)
3. 能力開発・キャリア形成支援

3-1 初期教育訓練

若年のキャリア形成及び就職支援

学校における職業教育・職業体験

交互教育
開始年月:
1989年
管理運営主体:
学校と企業の産学連携
対象者及び適用要件:
中・高等教育の学生
具体的内容:
若者の能力向上と就職促進のため、学校での教育と職場での訓練を交互に行う。

大学付設職業教育センター(IUP)
開始年月:
1991年
管理運営主体:
大学
対象者及び適用要件:
大学生
具体的内容:
企業の要求に即した人材育成のため、工学、商学、一般行政、財務管理、情報・コミュニケーションの5専攻が設置され、全教育機関の1/3を企業実習にあてる。修了者には「高度技術者マスター」の免状が授与される。

養成訓練制度その他の訓練制度

養成訓練契約(Contrat d'apprentissage
開始年月:
1986年法律改正
契約締結可能な雇用主:
公的部門も含む全ての事業主。社会保険料雇用主負担の一部免除などの優遇措置あり。
対象者及び適用要件:
義務教育を終了した16~25歳の若年者、26歳以上の若年障害者等(2006年の法律改正で、14歳以上16歳未満でも、養成訓練を受けることが可能となった)
具体的内容:
CAP(職業適格証)に加えて、高等段階の職業教育又は技術教育の免状等を取得するため、理論教育を年間400時間以上受講しつつ、企業で賃金の支払いを受けながら、実地訓練を行う。使用者は年齢及び養成訓練生となってからの年数に応じて、SMIC(最低賃金)の25~78%以上の賃金を支払う。

熟練化契約(Contrat de professionnalisation
開始年月:
2004年10月
契約締結可能な雇用主:
全ての企業(国、地方自治体、行政機関を除く)。国からの手当支給あり。
対象者及び適用要件:
16~25歳、26歳以上の求職者、生活保護制度RSA(revenu de solidarite active)などの各種福祉手当の受給者。
具体的内容:
期間の定めのない契約又は6カ月から12カ月、最長24カ月の有期限契約を締結。被雇用者となった者は、就業しながら、職業訓練機関又は就業中の企業で職業訓練を受け、社会で通用する資格取得や就業能力の獲得を目指す。

情報提供をはじめとする就職支援

しごと館(Cite des metiers

職業選択の参考となる情報、(職業)訓練の検索、職業生活の転換(転職)・求職に関する情報、体験機会の提供等の機能を有し、常時、予約なしで個別相談を受けられ、無料の就職フォーラム等に参加することができる。

地域ミッションセンター及び受入・情報・指導常設センター(PAIO)
開始年月:
1989年
管理運営主体:
国、地方公共団体
対象者及び適用要件:
16~25歳の若年者
具体的内容:
社会的生活・職業訓練への参入に向けて個別指導を行うため、専門のカウンセラーを配置し、適職発見支援、求人情報の提供、求人企業との個別面接の機会提供、求職活動指導等さまざまな支援を行う。

このほか、「国立教育・職業情報機構(ONISEP)」、「青少年情報・資料センター(CIDJ)」、「青年情報センター(CIJ)」、「進路情報・指導センター(CIO)」及び「職業訓練推進・資料・情報センター(CARIF)」がさまざまな情報提供を行っている。

資料出所: JILPT(2009)「資料シリーズNo.57 欧米諸国における公共職業訓練制度と実態―仏・独・英・米4カ国比較調査

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困難な状況にある若者に対する施策

雇用同伴契約(contrat d’accompagnement dans l’emploi CAE)

※雇用支援(諸)契約(Les contrats d’aide a l’emploi)とは異なる。

開始年月:
2005年5月1日
管理運営主体:
雇用局(Pole emploi
対象者及び適用要件:
長期的な失業で就職が困難な者
具体的内容:
長期失業者等の社会参入の難しい者を一時的に公共部門(地方自治体の組織、公的サービス提供法人等非営利団体)で雇用することを通じて社会の参加を支援。雇用主が国と結ぶ契約には、職業訓練を行うことを入れることが強く推奨されている。

熟練契約(Contrat de professionnalisation

開始年月:
2004年10月
契約締結可能な雇用主:
全ての企業(国、地方自治体、行政機関を除く)。国からの手当支給あり。
対象者及び適用年齢:
16~25歳、26歳以上の求職者、生活保護制度RSA(revenu de solidarite active) などの各種福祉手当の受給者。
具体的内容:
期間の定めのない契約又は6カ月から12カ月、最長24カ月の有期限契約を締結。被用者となった者は、就業しながら、職業訓練機関又は就業中の企業で職業訓練を受け、社会で通用する資格取得や就業能力の獲得を目指す。

社会生活参入契約(CIVIS)

開始年月:
2005年4月
管理運営主体:
国が管理を行うが、具体的には支援機関である地域ミッションセンター、受け入れ・情報・指導常設センターが運営を行う。
対象者及び適用年齢:
16~25歳で低水準の資格・学業修了証(「バカロレア+2年、すなわち一般教養課程修了」の学位以下のもの)しか持たない若年者。
具体的内容:
対象となる若年者と国の間で契約を交わし、就職計画の実現に向けた行動の内容を規定し、個人指導も含めた就業支援を行う。

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3-2 継続教育訓練

在職者訓練

職業訓練計画(Plan de Formation

職業訓練計画とは、企業が行う職業訓練事業で 1971 年より実施されている。企業側は単年あるいは複数年にまたがる職業訓練計画を作成し、社内の企業委員会25に諮ったうえで実施することができる。同制度の利用目的は、(1) 従業員が就労する部署や組織構造の変化への適合するため、(2) 従業員を雇用動向の変化に対応させる、もしくは従業員の雇用を維持するため、(3) 従業員の能力開発のため、の3 点である。

同年における職業訓練計画の平均訓練時間は 30 時間程度であり、在職者の 4 割が受講している。


専門職業化期間(periodes de professionnalisation

専門職業化期間とは、2004 年 5 月付けの法律により創設された職業訓練制度である。80年代に若年者の就業支援の一環として行われ高い評価を受けた類似の制度をベースに、対象層を広げるなどの改定を加え、新たに実施されるに至った。

同制度は、全国的な労使の集団合意により定められた条件(産休や育休から復帰する場合や職業活動が 20 年を超えている場合等)に該当する無期限雇用契約(CDI)26の従業員(日本の正社員におおむね相当)に適用される。彼らが自身の雇用維持や、国に承認された職業的に有効な技能資格の取得、職業訓練計画よりもさらに長期にわたってより高度な技術や最新技術等を獲得するための職業訓練が必要な場合に、雇用主と協議の上で利用できる。

2007 年における専門化職業期間の利用者は 370,150 人(CPNFP の調査による)である。

職業訓練個人権(DIF:Droit Individuel a la Formation

職業訓練個人権(以下、DIF とする)とは、2004 年 5 月付けの法律27により創設された職業訓練制度である。従前の職業訓練制度の多くは企業主導型で行われていたといえる。従業員が主体となって活用できる制度(代表例はCIF:本節第3 項,P73,を参照)もあったが、1人当たりの訓練コストが高額となるため、予算規模からみて職業訓練を望む全ての対象者をカバーしきれないといった問題があった。こうした課題を解決するため、企業の職業訓練計画の枠外で、比較的従業員の意思によって職業訓練を受けられるように、DIF が作られたのである。

DIF の特徴は、フルタイムの無期限労働契約(CDI)の従業員は、勤続 1 年以上経過した後に、毎年、20 時間の職業訓練を受ける個人的権利を得るというものである。パートタイムの CDI 従業員の場合、職業訓練のために与えられる時間は、就労期間の割合に応じて算定される。毎年獲得する権利は6 年間累積することが可能であり、その6 年間に権利を行使していない場合でも、120 時間分の権利を持ち越すことができる。

従業員は、(1)「優先的」DIF として、業界等において労使で集団的合意が結ばれ、実施様式等が定められている場合、(2) Contrats de professionnalisation(熟練化契約:学業を終えてから資格取得を目指す16~25 歳の若者と26 歳以上の求職者を対象に、就業しながら職業教育訓練を受けることができる。もしくは「職業訓練計画」に含まれる職業訓練事業の一環として利用する場合、のいずれかを選択する。

利用実績は 2006 年度には 166,054 人で 2005 年度と比べ約6倍の伸びを示している。その大部分が優先的 DIF(59.8%)あるいは職業訓練計画(34.3%)の一環として使用されている。


職業訓練個人休暇(CIF:Conge Individuel de Formation

職業訓練個人休暇(CIF)は、企業が主導する職業訓練計画とは別に、従業員の意思によって主体的に能力開発機会を得るための仕組みである。比較的職業生活が長い人向けに、キャリアアップやキャリア転換に役立つ技能の獲得や、公的資格の獲得等のために職業訓練を受けるための休暇を取得することができる制度である。創設は 1971 年である。

同制度を活用するために、従業員自らが訓練計画書を作成し、OPACIF に提出する。企業側は申請を拒否することができない。取得可能な休暇の期間は、フルタイム研修の場合は 1年以内、パートタイム研修の場合は1200 時間以内である。

2006 年度の新規申請実績は62,591 件である。政労使ともに、近年のCIFについて一定の成果をあげていると評価しながらも、1件当たりにかかるコストが他の職業訓練と比べて高額のため、利用者数の大幅増加が困難であるとの認識をしている。

資料出所:JILPT(2009)「資料シリーズNo.57 欧米諸国における公共職業訓練制度と実態―仏・独・英・米4カ国比較調査」、JILPT(2009.6)「海外労働情報」、中上光夫(2007)「フランスにおける『職業訓練』と職業資格

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例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:フランス」