基礎情報:ポーランド(1999年)
※このページは、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。
1.一般項目
- 国名
- ポーランド共和国(ポーランド、ヨーロッパ、現地語名:Polska)
- 英文国名
- Republic of Poland
- 人口
- 3865万人(1997年央)
- 面積
- 32万2577平方キロメートル(1997年)
- 人口密度
- 121人/平方キロメートル(1997年)
- 首都名
- ワルシャワ
- 言語
- ポーランド語
- 宗教
- ローマ・カトリック(国民の約95%)、プロテスタント、正教、その他
- 政体
- 議会制民主主義
2.経済概況
- 実質経済成長率
- +5.3% (1998年) +6.7%(1997年) +6.1% (1996年)
- 通貨単位
- ズロティ(zloty) US$1=3.6590ズロティ 1ズロティ=28.70円(1999年10月)
- GDP
- 1506億ドル(1998年) 1356億ドル(1997年) 1346億ドル(1996年)
- 1人当たりGDP
- 3509ドル(1997年) 3485ドル(1996年) 3085ドル(1995年)
- 消費者物価上昇率
- +14.9%(1997年) +19.9%(1996年)
- 主要産業
- 農業(小麦、大麦、肉類など)、鉱業(褐炭、天然ガスなど)、製造業など
3.対日経済関係
- 対日主要輸入品目
- 乗用車、二輪自動車、通信機器、有機化学品、自動車部品、コンピューターなど
- 対日輸入額
- 302百万ドル(1998年) 296百万ドル(1997年) 220百万ドル(1996年)
- 対日主要輸出品目
- 動物性原料(羽毛等)、タラの卵、酪農品、鉄鋼一次製品、肉調製品など
- 対日輸出額
- 74百万ドル(1998年) 102百万ドル(1997年) 90百万ドル(1996年)
- 日本の直接投資
- 8.2億円(1997年) 11.2億円(1996年) 2.5億円(1995年)
- 日本の投資件数
- 3件(1997年) 2件(1996年) 1件(1995年)
- 在留邦人数
- 451人(1997年10月)
出所:Maoy Rocznik Statystyczny, GUS,Warszawa 1998 The World in 1998, The Economist, London 1998
出所:The CIA World Factbook 1998
4.労働市場
1.労働市場の概況
ポーランドの1997年の労働力人口は1740万人であった。1990年の1720万人から増加を続け、1996年には1790万人に達したが、その後は減少傾向にある。1990年代のポーランドは中央管理経済から市場経済への移行期にあり、労働市場もその影響を強く受けた。市場の全般的状況(一時はかなり落ち込んでいたが、1992年以降成長)、制度改革(市場経済関連制度の創設)、構造改革が労働市場に大きく影響した。
1990年から1997年までの時期を2期に区分できる。第1期は1990~1993年で、就業者が1610万人から1480万人に減少する一方、失業者は110万人から290万人に増加し、失業率が6.5%から16.4%に上昇した。第2期は1994~1997年で、就業者が1560万人まで増加、失業者は180万人に減少し、失業率も10.5%に低下した。失業率低下の主な要因は、経済情勢が全般に回復したこと、労働市場政策が実施されたこと、国民が市場経済のメカニズムに徐々に適応していったこと、失業給付の受給が段階的に制限されたことである。
ポーランドでは経済の構造的な変化で、主として所有構造と産業構造が変わった。現在(1999年3月)、労働力人口の37.8%が公共部門に雇用されている。1990年代に入って国営企業の民営化が進み、公共部門で雇用される労働者の比率は大幅に低下している。現在、農業部門の就業者が全体の約20%を占め、鉱工業が32%、サービス業が48%を占めている。サービス業の比率は1990年代に入って上昇を続け、鉱工業と農業部門の比率は低下している。
労働者の教育水準は徐々に向上している。大学教育を受けた労働者の比率が1990年代を通じて上昇を続け、大卒者の労働力人口に占める比率は1992年の10.2%から98年には12.4%になった。中等教育、基礎実業教育を受けた労働者の比率も同じ期間に上昇している。他方、初等教育しか受けていない労働者、初等教育すら修了していない労働者の比率は25.7%から17.7%に低下した。
失業者の55.4%は女性である。年齢別にみると、失業率が最も高いのは15~24歳で(23%)、最も低いのは45歳以上である(6.6%)。教育水準でみると、失業率が高いのは中学校卒業(14.1%)と小学校卒業または中退者(12.4%)で、大学教育を受けた者の失業率が最も低い(3.7%)。
ポーランドの労働市場はつぎのような問題に直面している。
- 失業率が高い。
- 農業部門で潜在失業率が高い。
- 労働市場の構造改革(農業と伝統産業の就業者数の抑制)
- 労働力需給に構造的なミスマッチが生じている。
- 将来の労働力需要が長期にわたって正確に予測されていない。
- 教育制度を現在の労働力需要に適合させるのが難しい。
2.労働市場関連情報
- 労働力人口
- 1740万人(1998年)
- 労働力率
- 57.9% (1998年)
- 就業者数
- 1560万人(1998年)
- 雇用者数
- 1130万人(1998年)
- 失業率
- 10.3% (1998年)
出所:Monitoring rynku pracy (Labour market monitoring),GUS,October 1998
5.賃金
1.賃金制度の概要
ポーランドでは、賃上げ率は政府、使用者、労働組合で構成される3者協議会で毎年決める。賃上げ率の決定に当たっては、主としてインフレ率が考慮され、各企業の収益状況もいくらか考慮される。
基本的な賃金形態はつぎのとおりである。
- 時間賃金
- 時間賃金とボーナス
- 出来高賃金
- 出来高賃金とボーナス
- 時間賃金と出来高賃金
- 出来高賃金
この中でどれを選択し適用するかは、生産形態と生産組織によって異なる。圧倒的に多いのは、時間賃金とボーナスの組み合わせで、ポーランドでいちばん好評な賃金形態といえる。企業の賃金構造は、上記の賃金形態によって、また基本給とボーナス以外の賃金項目によって異なる。
総労務費 | 100.0 |
---|---|
企業の費用勘定に計上 | 95.3 |
属人給 | 59.3 |
-基本給 | 28.8 |
-勤続年数に基づく付加金 | 5.0 |
-法定ボーナス | 6.4 |
-時間外手当 | 1.8 |
-休業手当 | 3.4 |
非属人給 | 2.3 |
-社会保障基金拠出金 | 24.0 |
-労働基金拠出金 | 1.6 |
-安全衛生費 | 2.0 |
企業収益、共済組合の剰余金から支出 | 4.7 |
公共部門、民間企業を問わず雇用と企業の賃金構造には相関関係があり、また企業規模と賃金構造にも相関関係があることが、1990年年代の特徴である。
賃金は労務費のなかで大きな比重を占めるため、中央統計局は数年ごとに賃金構造を調査している。1994年の賃金構造(国営企業、民間企業を含む)は別表のとおりであった。
2.最低賃金
最低賃金額は全国一律に定められ、産業、業種、職業、年齢、性別にかかわりなく、すべての就業者に適用される。ただし、見習い労働者には適用されない。
最低賃金は最低報酬ともいい、基本賃金、現物給付など、通常の基準項目がほとんど含まれる。
しかし、勤続50年報奨金、退職給付、障害者給付、利益分配金、共済組合剰余金の還付、企業報償基金からの支払額、時間外手当は含まれない。
労働者の賃金が最低賃金より低い場合は、最低賃金額まで補填される。この補填は企業自身の報酬基金から支出される。
最低賃金で働く労働者にも、1992年に導入された個人所得税が課される。平均賃金と最低賃金の関係は、下記のとおり1990年代に変わってきた。
1970年 | 38.6 |
---|---|
1980年 | 38.0 |
1991年 | 33.6 |
1992年 | 43.4 |
1993年 | 41.4 |
1994年 | 42.7 |
1995年 | 41.2 |
1996年 | 40.5 |
1997年 | 41.4 |
1998年 | 40.5 |
注:1998年は1~9月のデータ
出所:Biuletyn Statystyczny, GUS,1998
3.平均賃金
ポーランドでは1990年代になって生計費が著しく高騰し、名目賃金がにわかに上昇した。実質賃金は1990年代前半には安定化していたが、後半になると急激に上昇した。
年 | 月額平均賃金(ズロティ) | 実質賃金指標(1990年=100) |
---|---|---|
1991 | 175.63 | 99.7 |
1992 | 243.86 | 97.3 |
1993 | 320.15 | 97.1 |
1994 | 425.49 | 100.5 |
1995 | 560.60 | 103.0 |
1996 | 710.46 | 105.7 |
1997 | 872.91 | 107.0 |
1998 | 1,022.85 | 104.5 |
注:1998年は1~9月のデータ
出所:Biuletyn Statystyczny, GUS,1998
1990年代に賃金水準が変動した背景には、インフレ率の変動による賃金の大幅な増減と就業者の減少がある。そのほか、ポーランドの政治・経済制度を変容させたさまざまな要因も影響した。また1990年代には、賃金格差がさらに拡大した。例えば、高所得層の下位10%の平均賃金と、低所得層の上位10%の平均賃金を比べると、差が開いていることが分かる。
1991年:4.6対1.0
1994年:5.5対1.0
1996年:6.3対1.0
ポーランドでは現在、賃金体系が変わりつつある。これは所有構造が変わったからであるが、労働に対する対価の支払いと企業運営の効率化に関して最も有効な原則を見いだそうとする試みでもある。
基礎情報:ポーランド(1999年)
- 1.一般項目、2.経済概況、3.対日経済関係、4.労働市場、5.賃金
- 続き(6.労働時間、7.労使関係、8.労働行政、9.労働法制、10.労働災害、11.その他の関連情報)
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- 基礎情報:ハンガリー(2002年)/全文(PDF:830KB)
- 基礎情報:ポーランド(2001年)/全文(PDF:336KB)
- 基礎情報:ハンガリー(2001年)/全文(PDF:317KB)
- 基礎情報:ポーランド(2000年)
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※2002年以前は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。
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