基礎情報:ハンガリー(2000年)

※このページは、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

  1. 一般項目
  2. 経済概況
  3. 対日経済関係
  4. 労働市場
  5. 賃金
  6. 労使関係
  7. 労働行政
  8. 労働法制
  9. 労働災害
国名
ハンガリー共和国(ハンガリー、ヨーロッパ、現地語:Magyarorszag)
英文国名
Republic of Hungary
人口
約1006万人(1999年)
面積
9万3930平方キロメートル
人口密度
107.1人/平方キロメートル(1999年)
首都名
ブダペスト
言語
ハンガリー語(Magyar)
宗教
カトリック、プロテタント、ユダヤ教、その他
政体
院内内閣制

実質経済成長率
+4.9%(1999年) +5.4%(1998年) +4.6%(1997年)
通貨単位
ハンガリー・フォリント(Hungarian Forint, HUF) 1HUF=0.48円(1999年10月)
GDP
100860億 HUF(1998年) 73,149億 HUF(1997年) 58,424億 HUF(1996年)
1人当たりGDP
4694ドル(1998年) 4504ドル(1997年) 4433ドル(1996年) 4367ドル(1995年)
消費者物価上昇率
+9.9%(1999年) +14.6%(1998年) +18.3%(1997年) +23.6%(1996年)
主要産業
電機、電子、化学、薬品、自動車、食料品

対日主要輸入品目
自動車、自動車部品、オーディオ製品など
対日輸入額
573百万ドル(1999年)
対日主要輸出品目
食料品、薬品など
対日輸出額
253百万ドル(1999年)
日本の直接投資
500百万ドル以上(日本の東欧諸国への投資額では最も多い)(実績、累計)
日本の投資件数
77社が操業中(1999年12月)。
在留邦人数
750人(2000年3月)

出所:

  1. Magyarorsza Szamokban (Hungary in Numbers, Central Statistical Office), Budapest, 1999
  2. Hungarian National Bank, 1999, Central Statistical Office, Brutto hazai termek 1998 -ben (GDP in 1998), Budapest, November 1999
  3. Central Statistical Office, Brutto hazai termek 1998-ben (GDP in 1998), Budapest, November 1999
  4. Central Statistical Office, Gyostajekoztato (Fast Infomation Service), Butapest, December 1999

1.労働市場の概況

1996年から97年にかけて、ハンガリー経済の構造は根本的な変化を遂げ、1998年には、労働市場において、積極的現象に変わってきた。国内経済の状況も改善し、例えば国内総生産(GDP)の成長率は、1997年は4.6%、98年は5.4%、99年は4.9%であった。経済成長がプラスに転じる上で、労働市場の動きの中でも特に影響が大きかったのが失業率の低下であり、その数値は2000年現在すでに10%を下回っている。

さらに具体的に見ると、計画経済から市場経済への転換の過程で、経済市場の縮小と国民の購買力の低下により、雇用の大きな減少が生じた。

1990年代初頭に雇用が25%減少した。しかし、こうした負の傾向はおさまり、1997年から98年以降、雇用の緩やかな増加が見られる地域も現れた。労働力調査によれば、ハンガリーの1997年1月1日現在の就業者数は364万6000人であった(労働市場のバランスは保たれたが、それは、国民の経済活動のレベルが低かったからであることに留意しなければならない)。

就業構造は以下のような特色を持っている。

産業別就業者の割合
国内経済の各分野 1990年 1999年* 2002年
農業 13.1% 6.9% 5.0%
工業 30.8% 27.7% 25.0%
建設業 6.0% 6.3% 7.0%
生産サービス業 22.2% 25.2% 28.0%
非生産サービス業 27.9% 33.9% 35.0%
総計 100.0% 100.0% 100.0%

出所:

  1. Central Statistical Office(KSH), Ecostat,(in)Tartosan kivul rekedve a munkaeropiacrol,(Az Ecostat a foglalkoztatottsagrol), Figyelo,Nov. 25~Dec.1, 1999, p.19.

全人口に占める就業者の割合:36%(前年と変わらず。369万8000人。産休中の者を除く)

左記の表を見ると、農業および工業の割合が減少し、サービス業および建設業における割合が増加していることが分かる。

就業者のうち雇用者の割合は84%で、前年に比べ2%の増加である。

ハンガリーにおける就業構造は世界的な傾向を反映し、製造業と農業の割合が減少する一方で、サービス業部門の割合が増加している。このことは経済が、サービス業部門における雇用割合の増加を特徴とする「新経済」と呼ばれる世界的な傾向をたどっていることを示す。

1990年代にハンガリーの労働力人口は20%減少した。これは100万人を超える人数に相当する。ハンガリーにおける労働力率は39.4%と極めて低く、これは、労働力人口2人が非労働力人口5人を支えなければならないことを意味する。労働力人口のうち仕事を持つ者の割合は60%に過ぎない。また、労働力人口の中において、年齢によって次のような不均衡が見られる。すなわち、若年層と高年者層における失業率が高い。

特に、(1)若年層における高い失業率と、(2)長期失業者の急増の2つの傾向が指摘できる。

失業者の50%、若年層の34%が、1年以内に仕事を見つけられない状況である。失業期間の平均は17カ月である。

就業者の年齢構成も変化してきている。たとえば、若年層において仕事を得る機会が少なく、40歳から50歳までの層が労働市場から急速に締め出されつつある。40歳を超える年齢層の失業率は比較的低いが、これは、この年齢層が労働市場において大きなシェアを占めているということではなく、仕事を得る可能性が低いので労働市場から早い時期に退くことによる。

極端に低い国民の活動率が原因で、経済が成長している場合でさえ、その成長率が失業率を著しく引き下げる効果は期待できない。

経済成長の効果や政府の努力などにより、雇用状況の改善が見込まれる。政府のプログラムは、今後4年間において24~30万件の雇用の創出を約束している。

雇用統計によれば、1999年の第4四半期は、1998年の同時期に比較し、就業者数が増加し、失業率は低下した。1999年第4四半期は、労働力人口のうち65.3%が労働市場に参入している。このグループの71%を男性が占め、男子の市場占有率は59.4%である。労働市場の好調な傾向は継続した。たとえば、前年同時期と比較すると、就業者数が7万4000人増加し、失業者数は1万5000人減少した。また、非活動人口も10万2000人減少した。1999年第4四半期の失業率は6.5%で、1998年の同時期に比較し、0.5%低い数値であった。

年齢層別に見た活動の割合:1999年第4四半期
年齢層 就業者数 年齢層別人口 失業率(%)
15-19歳 68,300 655,800 20.7
20-24歳 482,300 879,400 9.9
25-29歳 503,500 721,000 6.9
30-39歳 942,300 1,262,100 6.7
40-54歳 1,607,100 2,209,900 5.1
55-59歳 177,600 584,700 3.5
60-69歳 56,000 979,500 1.6
70-74歳 6,500 410,400 1.5
総計 3,843,600 7,702,800 6.5

出所:

  1. Foglalkoztatottsag esmunkanel kuliseg:1999.okt-dec.'(KSH lakossagi felmerese alapjan)(中央統計局、雇用および失業:1999年10月-12月)

しかし、長期失業率は高い数値を示した。失業者総数のうち51.5%(13万8400人)が、1年以上の長期にわたって職を探している状況である。

積極的な兆候としてここ2年の間、労働市場の動きは安定していた。たとえば、1998年には、就業率が毎年継続的に上昇したが、この傾向は1999年も変わらなかった。1999年6月末現在の就業者数は380万5000人で、前年同時期に比べ、3.8%高かった。

2000年5月末の登録失業者数は38万5960人で2万1400人減であった。

ハンガリーの失業率の数値に見られるその他の重要な特徴は、失業率の地域格差が大きいことである。これは世界的に見られる傾向である。国内において経済の最も活発な地域(「ハンガリー中央部」など)と、発展の遅れている地域(「ハンガリー北部」など)の失業率を比較すると、発展の遅れている地域の失業率の方が4倍以上高い。こうした雇用の地域格差を克服するのは非常に困難である。なぜなら、発展の遅れている地域においては教育レベルの低い労働者が多数を占めるからである。たとえば、非熟練労働者は、労働市場において様々な社会的・職業的グループの中で最も弱い立場におかれるが、発展の遅れている地域では、そうした労働者の数が過剰な状況である。

ハンガリーにおける登録失業者の特色
  1997年12月 1998年12月 1999年12月
登録失業者数 463,962 404,094 404,509
失業率 10.4% 9.6% 9.6%
25歳未満 43,655 29,442 データなし
男性 251,804 210,117 データなし
女性 205,678 182,315 データなし
ブルーカラー 546,644 335,535 334,587
ホワイトカラー 82,317 68,559 69,922
非熟練労働者 99,918 88,031 86,544
大卒 3.6%
長期失業者 31.6% 27.5% 22.2%*

*1999年7-9月統計値

出所:

  1. Statisztikai havi kozlemenyek,(Monthly Bulletin of Statistics), Kozponti Statisztikai Hivatal(中央統計局)No.11, p.27.
失業率における地域格差:1999年
主な地域 失業率(%)
ハンガリー中央部 4.0
ドナウ川中央地域 8.4
ドナウ川西部地域 5.9
ドナウ川南部地域 12.2
ハンガリー北部 17.1
大平原北部 16.3
大平原南部 10.5

出所:

  1. 'Statisztikai havi kozlemenyek,(Monthly Bulletin of Statistics)、Kozponti Statisztikai Hivatal(中央統計局)No.11, p.29.

2.労働市場関連情報:1999年

就業者数
381万1500人
全人口に占める就業者の割合
37.7%
失業者数
38万4700人
経済上の活動人口
409万6200人
1999年の失業率
7.0%
経済各分野別労働力率
1999年1-12月
農業:5.4%
工業(工業+建設業):35.1%
サービス業:59.4%
民間部門:69.3%
公的部門:29.7%

出所:

  1. ハンガリー中央統計局:国内経済における雇用および所得、2000年2月23日(http://www.ksh.hu/eng/free/e5friss/e50401.html)

EUの状況と比較して、この10年間で新たに就業した者の大部分は、いわゆる「フレキシブル」、「非典型」と呼ばれる種類の仕事に従事している。すなわち、パートタイマーや有期雇用契約に基づく労働者、季節労働者、自営業者などである。

雇用水準で見ると、ハンガリーは EU より厳しい状況にある。EUにおける平均雇用水準は60%であるが、ハンガリーは52-53%にとどまる。また、ハンガリーにおける雇用費の水準も EU に比べるとかなり低く、これが反映されて、1人当たり GDP の水準も低くなっている。しかし、ハンガリーの所得税は高く、雇用費を40%押し上げている。また、高年者の労働市場への参加は非常に少ない。こうした状況が生じる理由の一つとして、退職年齢の低さがあげられる、女性が55歳、男性が60歳である。


最低賃金

全国労働会議(National Labour Council OMT)において「全国利害調整協議会」(National Council of Interest Reconciliation)の機能を引き継ぎ、社会的パートナー(政府、使用者、労働者利益代表団体など)による、最低賃金に関する交渉および協定の締結が年に1回実施されている。1999年1月1日の法定最低賃金額は2万2500フォリントである。


国営企業の全部または一部の買収や、グリーンフィールド投資などによりハンガリー市場に参入してきた多国籍企業は、独自の労使関係モデルに従っている。これは、反労働組合主義である場合もあり、組合の支部を通さずに会社レベルで伝達・交渉を行う「小型コーポラティズム方式」を採用する場合もある。ハンガリーに工場を置く多国籍企業におけるこうした労使関係のあり方を、組合側は国際的な挑戦とみなしている。化学産業部門の労働組合支部が、国際的な管理組織と団体交渉をする上での共通の基準を設けるために、複数の多国籍企業の母国の組合と協力体制を築いている例もある。次に示す表は、以下の事実をよく表している。新しく設立された企業における労働組合の組織率は、他の企業のカテゴリーに比較して低い。

所得の推移:1995-1998
所得指数 1995 1996 1997 1997 1998
  前年=100 1994年=100  
平均総所得
国民経済 116.8 120.4 122.3 172.0 118.6
民間部門 119.7 123.2 121.8 179.6 118.9
公共サービス部門 110.7 114.6 123.2 156.3 118.2
平均純所得
国民経済 112.6 117.4 124.1 164.1 118.7
民間部門 114.8 119.4 123.9 169.8 118.8
公共サービス部門 107.8 113.4 124.4 152.1 118.4
消費者物価 128.2 123.6 118.3 187.5 114.3
平均純実質所得
国民経済 87.8 95.0 104.9 87.5 103.9
民間部門 89.6 96.6 104.7 90.6 103.9
公共サービス部門 84.4 91.7 105.2 81.1 103.6

出所:

  1. Lajos Hethy(1999),『圧力の下で-転換の時期におけるハンガリーの労働者および労働組合-1989-98 ; 中央・東ヨーロッパで強さを増す労働組合』、ILO、技術協力プロジェクト(RER/96/MO2/NET)、p.34。
労働組合の組織数と企業の規模・所有者国籍・新たな設立との関係、機械産業の場合(調査:1998/99 n=35)
労働組合数 ハンガリー 国籍企業 外国籍企業 中小企業 グリーンフィールド投資関連企業
労働組合の活動なし 39.3% 42.9% 50.0% 85.7%
労働組合数1 53.6% 57.1% 50.0% 14.3%
労働組合数2以上 7.1%

出所:

  1. Csaba Mako-Agnes Novoszath-Takeharu Inagaki (1999),Institution of Employee Participation.

1.労使関係システム

1999年の重大変化は、「全国利害調整協議会」(National Council of Reconciliation of Interest: NCRI)の改革であり、労使関係における社会的パートナーの間で活発な議論が行われた。1999年の夏に実施された改革は、社会的な意見交換を行うマクロレベルの機関を、次のように変えることを目的とするものだった。NCRIに代わり、「利害に関する交渉」および「社会的協議」を行う機関がそれぞれ設けられた。

1.「利害調整」を行う機関は「全国労働会議」(National Labour Council、ハンガリー語でOrsagos Munkaugyi Tanacs, OMT)という名称で、多様な労使問題における利害調停を行うマクロレベルの機関である。この機関は、「経済省」の監督の下に機能する。主な機能は労働問題に関する多様な協議の実施・協定の締結である。

  1. 労働関係法令と国内経済との調和(労働法(Labour Code)、訓練・労働安全・社会保障・失業手当および援助等に関する法律など)
  2. 国の最低賃金額、労働日の変更等に関する協定の締結
  3. 社会的パートナーの権利、「全国労働会議」の機能に関する規則(いわゆる「運営手続規則」)

参加者は以下の通り。

  1. 国レベルの使用団体
  2. 労働組合連合
  3. 政府代表

「全国労働会議」は、前身であるNCRI同様、全体会議で決議するまでに十分な準備が行えるよう、多数の委員会を持つ。労働関係の利害調整が行われる主要なレベルは支店や職場(ミクロレベル)であり、社会的パートナー間の合意事項は、「労働協約」として明文化される。

2.「社会経済協議」(Social and Economic Consultation)の諸制度の主要な目的は、国内経済の重要問題に関する継続的な意見交換を通じて、政府の活動に対し、系統的な「フィードバック」を行うことである(経済成長策、インフラ整備、中小企業の支援等)。社会的な意見交換を行うこの協議会は、参加者が非常に多いという特色を持つ。「社会経済協議」は、具体的に以下のように構成されている。

  1. 「経済戦略会議」(Council of Economic Strategy)。経済・社会問題を協議する最も包括的な機関で、商工会議所、職業上の利益を代表する団体、銀行協会などが参加する。経済省の管轄で、年に2度開催される。
  2. 「社会会議」(Social Council)。労働者代表、「生活保障制度」(social net)を運営する全国・地方レベルの金融・社会福祉機関、支援団体の代表などが参加する。
  3. 「欧州統合会議」(European Integration Council)。労働組合や使用者団体の国際的なネットワークを利用した、欧州の諸機関との調整支援を目的とする。ハンガリー政府はこの会議の活動を通じ、ハンガリーのEUへの統合プロセスに、労使関係における社会的パートナーを関わらせたいと考えている。
  4. 「地域開発会議」(Regional Development Council)。環境・交通機関・社会的生産基盤の開発に関する調整に活動の焦点を当てている。

これらの会議における実績は現在はまだ少なく、形に表れてこないので、この社会・経済問題に関する意見交換を行う国レベルの機関による変化は、まだ認められない。

2.関係行政機関

経済省及び家族・社会福祉省も労働問題に取り組んでいる。経済省は、既に述べた、社会的な意見交換を行う諸会議の運営を担う。家族・社会福祉省は、労働市場の動向や各種雇用問題に関する事項を取り扱う。


労働法令の概要

1999年に労働法(Labour Code)にいくつかの変更が加えられた。1999年LVI法により、1992年XXII法(労働法)のいくつかの項目が改正された。

「労使関係」の観点から見た最も重要な変更点は、「労働協約」に関する改正である。労働法(1992)の第31条に、以下の通り第2項、第3項が加えられた。

第2項:代表権を持つ労働組合がない場合は、使用者と「工場協議会」(Works Council)の間で、労働法(1992)の第31条に規定された事項に関し、「工場内協定」(Plant Agreement)の形で規定することができることとする。

第3項:第2項に規定された「工場内協定」は「労働協約」の指示と同等とみなす。

上記変更点を更に具体的に述べると以下の通りである。これまでは、ハンガリーの労使関係におけるパートナーの中で、労働組合のみが労働協約に署名する権利を有していた。職場で労働組合の活動が行われていなければ、労働協約は存在しなかった。しかし、1999年の夏に改正された労働法により、「工場協議会」と使用者の間で、「労働協約」の内容に所属する事項を「工場内協定」の形で規定することができることとなった。すなわち、「工場内協定」を「"準"労働協約」とみなすこととしたのである。

出所:

  1. Dr. Szebenhelyi Klara(1999)A Munka Torvenykonyve 1999. eve imodositasa, LIGA Akademia Fuzetek 18. sz. p.4(1999年の労働法改正、ハンガリー語)

安全に関する報告を国で作成することが、法 XXII法第17条第3項に義務として規定されており、労働省の「全国労働安全監督・調整部」(National Labour Safety Supervisory and Coordination Department)がこれを管轄している。最新の報告書は1998年11月に出された。これに報告されている労働に起因する事故や死亡の状況について、下表参照。

ハンガリーでは、労働に起因する事故について統計的に評価することは困難である。法律によれば、使用者は「全国労働安全・監督委員会」(National Labour Safety and Supervisory Board、ハンガリー語でOrszagos Munkabiztonsagi es Munkaugyi Fofelugyeloseg)に報告する義務を負うが、実際にはこの義務を怠っている使用者が多い。「表に現れない事故」の数を見積もることは、専門家でも困難である。中央統計局の最新報告での推計を見ても、労働に起因する事故のすべてが報告されているわけではない。EU の提案を受け、中央統計局は、事故の原因と健康阻害の原因の両方を含めた、労働に起因する事故に関する全国規模の調査を実施した(標本数7万人)。調査の対象期間は1998年4月~99年4月である。

これによれば、63人に1人の労働者が労働に起因する事故に遭っている。これはハンガリーの就業者の1.5%に当たる(約6万人)。1990年の事故件数は1人当たり16件、1995年は1人当たり15件であり、あまり改善が見られない状況であった。労働に起因する事故が特に多いのは、男性の25~29、40~44歳の年齢層である。男性および若い年齢層において事故が多いのは、以下の理由による。すなわち、多くの男性労働者がより危険な仕事に就いており、また、若年労働者は、仕事上の経験が少ないために事故に遭いやすいのである。労働に起因する疾病に関しては、前出の調査期間において、ハンガリーの活動人口の1.8%(7万1000人)が労働に起因するなんらかの病気にかかっていた。

労働に起因する健康上の問題の種類:1998-99年の調査
病気の種類
筋肉組織系 40
呼吸器系 13
皮膚病 3
聴覚障害 1
精神・行動障害 4
頭痛及び眼病 11
心臓血管疾患 10
感染症 2
その他 16
100

出所:中央統計局、1999

表に示された数値を見ると、起こりやすい疾病は、「筋肉組織系」や「呼吸器系」に関係するもの、および「頭痛および眼病」であることがわかる。発病の状況を産業別に見ると、工業部門および農業部門に働く労働者が、健康上の問題を最も多く抱えている。

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