昨年の民間平均給与が過去最高の478万円に
 ――国税庁の2024年分「民間給与実態統計調査」結果報告

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国税庁は先ごろ、2024年分の「民間給与実態統計調査」の結果を公表した。それによると、民間企業正社員やパート従業員などの給与所得者が2024年の1年間に得た給与の平均は478万円で、前年から3.9%増えた。平均給与の増加は4年連続。男女別にみると、男性は前年比3.2%増の587万円、女性は同5.5%増の333万円だった。

調査は、民間の事業所における給与の実態を明らかにし、税務行政運営等の基本資料にすることを目的に毎年実施しているもの。対象は民間の事業所で働く給与所得者で、事業所規模は従業員1人から5,000人超まで幅広く、役員報酬も対象としている。2023年分調査では1万8,999事業所から回答を得た。

給与所得者数は前年比0.2%増の6,077万人

調査結果をみると、2024年12月31日現在の給与所得者数は前年比0.2%増の6,077万人。2024年中に民間事業所が支払った給与総額は前年より3.7%増の241兆4,388億円だった。一方、源泉徴収された所得税額は前年より6.9%減って11兆1,834億円になっている。

平均給与は男性が587万円、女性は333万円

給与所得者のうち、1年を通じて勤務した給与所得者5,137万人(前年比1.2%増)の2024年の1人あたりの平均給与(賞与も含めた年間給与額)は478万円(同3.9%増)だった。男女別では、男性が587万円(同3.2%増)、女性が333万円(同5.5%増)。女性の伸び率が男性を上回っているが、額では男性(同18万2,000円増)の増加幅が女性(同17万4,000円増)より大きい。

なお、1年を通じて勤務した給与所得者の平均年齢は47.2歳(男性47.3歳、女性47.0歳)。平均勤続年数は、12.6年(男性14.3年、女性10.5年)だった。

賞与の給与に占める割合は18.5%

平均給与(478万円)の内訳をみると、給料・手当が403万円、賞与が75万円で、賞与の占める割合は18.5%(前年は18.4%)。これを男女別にみると、男性は平均給与587万円のうち給料・手当が491万円、賞与が96万円で、賞与が占める割合は19.5%。女性は平均給与333万円のうち給料・手当が287万円、賞与が47万円で、賞与が占める割合は16.3%となっている。

パート・アルバイトなどの「正社員以外」は前年比2.2%増の206万円

平均給与を雇用形態別にみると、「正社員(正職員)」の545万円(前年比2.8%増)に対し、パート・アルバイトなど正社員として処遇していない給与所得者を指す「正社員(正職員)以外」は206万円(同2.2%増)と、給与水準が全体的に上昇傾向にある様子がうかがえる。ただし、増加率で正社員が正社員以外を0.6ポイント上回った結果、平均給与の較差は前年の328万円から339万円に拡大した。

これを男女別にみると、正社員(正職員)は、男性609万円(同2.5%増)、女性430万円(同4.1%増)。正社員(正職員)以外は、男性271万円(同1.0%増)、女性174万円(同3.0%増)となっている。

ピークは「55~59歳」の572万円

年齢階層別では、男女計で最も高かった階層は「55~59歳」(572万円)。次いで「50~54歳」(559万円)、「45~49歳」(540万円)、「40~44歳」(516万円)が続く。最も低かった階層は「19歳以下」(118万円)で、次いで「20~24歳」(277万円)、「70歳以上」(305万円)、「65~69歳」(370万円)、「25~29歳」(407万円)の順となっている。

男女別では、男性は「55~59歳」(735万円)までは年齢が上がっていくとともに平均給与も高くなっており、「60~64歳」以降は低下する。女性は、年齢による較差はさほどみられず、25歳~59歳の年齢階層は300万円台に収まっている。

勤続年数別にみると、男女計では「30~34年」(751万円)のピークまでは勤続年数が長くなるにしたがい平均給与も高くなる。その傾向は、男女別にみても変わらない。男性は「30~34年」(831万円)が最も高く、女性も「30~34年」の509万円が最も高い。ただし、勤続年数による較差は男性に比べ女性のほうが小さい。

3割強が「300万円超500万円以下」

給与分布では、階級別でみて最も多かったのは「300万円超400万円以下」で826万人(構成比16.1%)。2番目に多い「400万円超500万円以下」の787万人(同15.3%)とあわせて3割強の給与所得者が「300万円超500万円以下」の範囲内にある。

男性は「400万円超500万円以下」が493万人(同16.9%)で最も多く、次いで「500万円超600万円以下」の429万人(同14.7%)。女性は、最も多い「200万円超300万円以下」が421万人(同 19.0%)で、2番目は「300万円超400万円以下」の408万人(同18.5%)だった。

事業所規模別の平均給与は、従業員数「10人未満」の事業所では392万円(男性486万円、女性282万円)、「10~29人」で444万円(男性544万円、女性315万円)、「30~99人」で437万円(男性519万円、女性326万円)、「100~499人」で475万円(男性568万円、女性349万円)、「500~999人」で499万円(男性603万円、女性359万円)、「1,000~4,999人」で547万円(男性680万円、女性363万円)、「5,000人以上」で539万円(男性694万円、女性335万円)となっている。

業種トップの「電気・ガス・熱供給・水道業」は前年比57万円増の832万円

平均給与を14の業種別にみると、最も高かったのは前年同様、「電気・ガス・熱供給・水道業」で、前年より57万円増えて832万円だった。以下、高い順に「金融業、保険業」(同50万円増の702万円)、「情報通信業」(同11万円増の660万円)、「製造業」(同35万円増の568万円)、「建設業」(同17万円増の565万円)、「学術研究、専門・技術サービス業、教育、学習支援業」(同2万円減の549万円)などが続く。

最も低かったのは、唯一300万円を下回った「宿泊業、飲食サービス業」(同15万円増の279万円)。以下、低い順に「農林水産・鉱業」(同15万円増の348万円)、「サービス業」(同11万円増の389万円)、「卸売業、小売業」(同23万円増の410万円)などとなっている。

14業種中12業種が前年比プラス。インフラ系や金融、IT業の高い給与水準があらためて浮き彫りになる一方で、正社員以外の割合が比較的高い宿泊・飲食サービスなどの給与の上昇も目立つ。

「宿泊業、飲食サービス業」は6割強が300万円以下

業種別に給与所得者の分布をみると、800万円超の所得者割合が最も高いのは「電気・ガス・熱供給・水道業」で46.0%、それに次ぐのは「金融業、保険業」(29.8%)「情報通信業」(25.7%)など。一方、平均給与が最も低い「宿泊業、飲食サービス業」に目を移すと、「100万円以下」が28.7%いるうえに、「100万円超200万円以下」(20.6%)や「200万円超300万円以下」(14.1%)もあわせると、300万円以下が63.4%を占めている。

(調査部)

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