賃金の改定の状況
 ―賃金引上げ等の実態に関する調査の結果から―

ちょっと気になるデータ

厚生労働省から2025年10月14日に令和7(2025)年「賃金引上げ等の実態に関する調査」の結果が公表された。この中から賃金の改定状況の結果を紹介する。

「賃金の改定」は「すべて若しくは一部の常用労働者(注1)を対象とした定期昇給(定昇)、ベースアップ(ベア)、諸手当の改定等をいい、ベースダウンや賃金カット等による賃金の減額も含む」と定義されており、これらにより、賃金の改定を実施した結果、改定前との差額(1人平均賃金)がプラスの場合が「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」、マイナスの場合が「1人平均賃金を引き下げた・引き下げる」、ゼロの場合が「1人平均賃金は変わらなかった・変わらない(注2)」である。また、「1人平均賃金」とは、「所定内賃金(諸手当等を含むが、時間外・休日手当や深夜手当等の割増手当、慶弔手当等の特別手当を含まない)の1か月1人当たりの平均額」である。

「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」とする企業の全企業に対する割合をみるとおおむね上昇傾向で推移しており、2020年~2021年にはコロナ禍の影響で低下したが、その後は再び上昇し、2025年は91.5%となっている(図表1)。

図表1:賃金の改定の実施状況
画像:図表1
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※1 棒グラフの上の数字は「賃金の改定を実施した又は予定している」企業の割合。

※2 2024年以前は、「1人平均賃金は変わらなかった・変わらない」は「1人平均賃金を引き下げた・引き下げる」に含まれる。

次に、賃金の改定を実施した又は予定していて額も決定している企業について、賃金の改定の決定に当たり最も重視した要素(注3)をみると、2025年は「企業の業績」が41.7%、「労働力の確保・定着」が17.0%、「雇用の維持」が11.9%、「世間相場」が7.7%などとなっている。2009年以降の推移をみると、「企業の業績」の占める割合は低下傾向である一方、「労働力の確保・定着」、「雇用の維持」の占める割合は上昇傾向にある。また、2023年以降は、「世間相場」、「消費者物価の動向」の割合もそれまでより高くなっている一方、「重視した要素はない」の割合はそれまでより低くなっている(図表2)。

図表2:賃金の改定の決定に当たり最も重視した要素
画像:図表2
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※1 賃金の改定を実施した又は予定していて額も決定している企業についての結果。

※2 2024年以前は「最低賃金」、「行政からの支援(減税・補助・助成)」、「専門家からの助言」は調査されていない。


[注1] 雇用期間を定めず雇用されている労働者をいい、日雇労働者や季節労働者など雇用期間に定めのある労働者、雇用期間に定めがあって契約期間を更新している労働者は除く。また、「事業主、社長」、「理事、取締役などの役員」、「家族従業員」も除く。ただし、「理事、取締役などの役員」又は「家族従業員」の者でも、一般の労働者と同じように勤務し、同じ給与規則によって給与を受けている工場長などのような場合は常用労働者に含める。

[注2] 2025年調査から「1人平均賃金は変わらなかった・変わらない」の調査項目が追加されている。2024年調査以前は、改定前との差額(1人平均賃金)がゼロの場合、「1人平均賃金を引き下げた・引き下げる」に区分されている。

[注3] 2024年調査以前は、「賃金の改定の決定に当たり最も重視した要素」における「最低賃金」、「行政からの支援(減税・補助・助成)」、「専門家からの助言」について調査されていない。

(調査部 統計解析担当)