調査シリーズNo.215
ミドルエイジ層の転職と能力開発・キャリア形成
~転職者アンケート調査結果~

2021年11月19日

概要

研究の目的

「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2019」では、「全世代型社会保障」に向けた改革の一環として、中途採用・経験者採用の促進が謳われた。実態としてもフルタイム労働者の転職が増加傾向にあり、大企業への転職や、若年層・シニア層に比べて定着的とみられてきた「ミドルエイジ」層の転職が増加している。

ミドルエイジ層の転職の増加は、日本企業におけるいわゆる「長期安定雇用」の体制や対象に少しずつ変化が生じつつあることを示唆している可能性がある。今後の雇用体制のあり方を展望する上でも、また「骨太の方針」で掲げられた中途採用・経験者採用の促進を図っていく上でも、ミドルエイジ層の転職に関する実態把握が必要であると考え、調査研究を企画・実施した。本書は、2020年12月に実施した転職者を対象とするアンケート調査を基に、ミドルエイジ転職者の転職活動や転職先における状況、能力開発やキャリア展望における特徴を、主に性別・年齢別のクロス集計の結果から明らかにしたものである。

研究の方法

アンケート調査(2020年12月実施)の集計・分析

※アンケート調査はwebモニターを対象に2020年12月1~15日にかけて実施。

①2018~2020年の間に転職をした30~54歳のホワイトカラー・フルタイム雇用者4205人

②転職の経験がない30~54歳のホワイトカラー・フルタイム雇用者2498人

の回答を得た。

主な事実発見

(1)転職活動

  1. 転職の契機となる前職からの離職理由について、回答した転職者の8割強を占める自己都合での離職者に尋ねたところ、性別、年齢層、担当職種に関わりなく、「満足のいく仕事内容ではなかったため」という回答が3~4割を占め、35歳以上の年齢層では、男女を問わず、回答の比率が最も高かった(図表1)。

    図表1 前職の離職理由(自己都合離職者、複数回答)

    図表1画像

  2. 転職の決め手となった情報は、「民間の職業紹介機関」から得られたという回答が最も多く(19.8%)、以下「ハローワーク」(13.1%)、「現在の勤務先のホームページ」(10.7%)と続く。「民間の職業紹介機関」で決め手となる情報を得たという比率は、総じて男性回答者の方が高く、逆に「ハローワーク」で決め手となる情報を得たとする回答は総じて女性の方が高い。
  3. インターネットの転職サイトに「登録した」という転職回答者は39.1%であった。男性も女性もより若い年齢層ほど、「登録した」回答者の比率が上がり、特に女性回答者では年齢層間の差がより顕著となる。また、男性回答者は「エージェント型」(=キャリアアドバイザーと面談し、いくつか紹介された求人に応募するという形式の転職サイト)に登録した比率が女性回答者よりも高く、「直接応募型」(=サイトにある求人を自分で探して直接応募する形式の転職サイト)は、女性回答者の方が登録した比率が高かった。

(2)転職後の状況

  1. 転職者の転職前後の勤務先における業種の異同について集計してみると、男性転職者では、30~34歳層で異業種間転職が4割を超え、他の年齢層に比べてやや高くなるが、35歳以上の年齢層では概ね同業種間転職が65%程度、異業種間転職が35%前後となっている。女性は同業種間転職が53~60%程度、異業種間転職が38~45%程度であり、男性に比べると異業種間転職の比率が総じて高い。
  2. 転職前後の月収の変化について、性別・年齢層別に集計を行ったところ、男性転職者では45歳以降の年齢層で「20%超低下」の比率が、より若い年齢層に比べて高くなっていき、50~54歳層では約15%に達する。女性転職者は、年齢と分布との一貫した関係が見られず、また年齢層間の分布の違いもさほど大きくない。
  3. これまでの職業経験で身につけた知識・スキルを転職先で活かすことができているかを尋ねたところ、転職者全体では、26.3%が「非常に活かせている」、45.9%が「活かせている」と回答した。男性回答者はより高い年齢層ほど、「非常に活かせている」の比率が高くなるが、女性回答者ではそうした傾向が見られない。また「非常に活かせている」と回答する比率は職種間の差が顕著で、管理職では約4割に達するのに対し、事務職では2割弱にとどまっている(図表2)。

    図表2 これまでの職業経験で身につけた知識・スキルを活かすことができているか

    図表2画像

  4. 転職先が職場になじむようにと行ってくれた取組みをどの程度経験しているかという質問に対する回答選択肢の平均値を、知識・スキルの活用度合いが異なる転職者毎に算出してみると、男性転職者は集計したすべての年齢層において、知識・スキルの活用度合いによる平均値の差が統計的に有意であり、女性の転職者では、40歳以上の年齢層において、活用度合いによる平均値の差が統計的に有意であった。男性・女性いずれにおいても統計的に有意な差が見られた年齢層は、「活かせている」という回答者で、回答した選択肢数の平均値が最も高かった。

(3)転職者と勤続者(転職未経験者)の比較

  1. ワーク・エンゲージメントの状況(「活力」・「熱意」・「没頭」)を尋ねる質問の回答結果を、転職者と勤続者で比べると、40歳以上の男性では、転職者のほうが、より高いワーク・エンゲージメントを示す傾向にある
  2. 過去3年の仕事に関わるスキルや能力を向上させるための取組みについては、男性の45歳以上の層、女性の35~39歳層で、転職者の方が勤続者よりも実施する傾向が強かった。

政策的インプリケーション

  1. クロス集計の結果から、ミドルエイジ層における転職のメリットとして、仕事に関わる能力開発を促すこと、また、仕事に対する前向きな姿勢を引き出すことを推測することができる。ただ、実際の転職では、転職のプロセスにおいても転職後の状況においても様々な課題があり、能力開発活動や仕事に対する前向きな姿勢は、それらの課題を解決した上で実現するものとも考えられる。転職者の能力開発活動や仕事に対する前向きな姿勢を、どういった要件の下であれば、より促進することができるのかを明らかにしていくことが、有効な転職支援策を検討する上で必要となる。
  2. 今回の調査では、転職先で自らの知識・スキルをより活用できていると感じている転職者ほど、勤務先が職場になじむようにと行ってくれた取組みをより多く経験する傾向があることがわかった。ただ、そうした取組みを経験していない転職者も少なからず存在し、その割合は年齢層が高くなるほど高まる。今後は、以上のような転職先の取組みとミドルエイジ転職者の状況との関連に関わる分析をさらに進めて、各企業において転職者の活躍・定着に向けて求められる取組みの内容を明らかにしていくとともに、そうした企業の取組みを促進するための支援策について検討を重ねていく必要がある。

政策への貢献

能力開発およびキャリア形成の支援に資する政策を検討するための基礎資料として用いられる。

本文

研究の区分

プロジェクト研究「多様なニーズに対応した職業能力開発に関する研究」
サブテーマ「職業能力開発インフラと生産性向上に向けた人材の育成に関する研究」

研究期間

平成29~令和3年度

執筆担当者

藤本 真
労働政策研究・研修機構 主任研究員

関連の研究成果

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