調査シリーズ No.115
子育て世帯の追跡調査(第1回:2013年)
―2011・2012年調査との比較―

平成 26年 5月22日

概要

研究の目的

「子育て世帯の追跡調査」は、過去にJILPTのアンケート調査に協力が得られた子育て世帯を対象に、複数時点にわたって、その生活状況や保護者(主に母親)の就業実態などを調査したものである。同一世帯に対する追跡調査を行うことにより、さまざまなイベント(出産、育児休業、資格取得等)が、就業等に与える影響をより正確に計測することが可能となる。本調査の結果は、子育て世帯の今後の仕事に対する支援策のあり方を検討するための基礎資料として活用される予定である。

研究の方法

アンケート調査(全国)

  • (調査方法)訪問留置回収法
  • (調査期間)2013年11月~12月
  • (調査対象)JILPT「子育て世帯全国調査2011、2012」対象世帯の一部
  • (有効回収数/回収率)1,321世帯/86.6%

主な事実発見

2011年調査時に比べて今回調査の年収で10%超の増加があった世帯が全体の4割強を占めている(図表1)。子育て世帯の平均年収が上昇しており、ふたり親世帯を中心に、暮らし向きに改善の傾向が見られた。

図表1 世帯年収(調査前年)の変化 (単位%)

図表1画像

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注:平均値から大きく乖離した(+4SD)7標本(母子5、ふたり親2)を除外している。「世帯計」は、ひとり親世帯のオーバーサンプリング補正後の数値である。

女性の就業収入が子育て世帯の経済状況の浮揚を決めている、と言っても過言ではない。年収が10%超上昇した世帯の場合、母親の平均就業年収が46.8万円(ふたり親世帯)~58.3万円(母子世帯)増加している。一方、年収が10%超減少した世帯の場合、母親の就業年収が15.4万円(母子世帯)~56.8万円(ふたり親世帯)減少していた(図表2)。

図表2 年収が大幅にアップ・ダウンした世帯の母親の就業率と就業年収(万円)

図表2画像

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注:

  1. 母子+ふたり親世帯は、ひとり親世帯のオーバーサンプリング補正後の数値である。
  2. 平均値から大きく乖離した(+4SD)7標本(母子5、ふたり親2)を除外している。

残念ながら、夫の家事時間数は、妻の就業時間数の変化に追いついていない(図表3)。妻の就業時間数が10%以上(時間数にして週あたり平均10時間)増加した世帯でも、夫の家事時間数は週あたり平均28分の増でしかない。富裕層を含め、家事のアウトソーシングが子育て世帯の間であまり広がっていない中、女性に賃金労働と家事労働の二重負担が集中する傾向がある。

図表3 妻の労働時間数の変化に伴う夫の家事時間数(時間/日)の変化

図表3画像

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注:ふたり親世帯(パネルBのみ)に関する集計結果である。

また、子育て中の女性の中には、自己啓発や専門資格の取得を通じて能力開発を行う者が少なくない。母親の4人に1人は職業能力を高めるために自己啓発に取り組んでいる。とくに母子世帯や短大卒以上学歴層の母親は、自身の能力開発に熱心である。母子世帯の32.2%、短大卒以上層の29.4%が過去1、2年間に自己啓発に取り組んでいた。また、母子世帯の15.9%、短大卒以上層の9.3%が、新たな専門資格を取得していた。

継続就業中の母親について年収の増減をみると、「自己啓発あり」と回答したグループは平均37万円増、「自己啓発なし」グループは平均16万円増で、「自己啓発あり」グループの年収増加幅が大きい(13頁、図表12)。また、「新規資格取得なし」のグループは平均23万円増であるが、医療・福祉関連資格の「新規資格取得あり」グループは平均48万円増となっている。

政策的インプリケーション

  • 働く子育て女性の家事負担を軽減するために、家事のアウトソーシングを促進する施策が必要である。
  • 世帯所得が一定水準以下の子育て女性に対して、自己啓発や専門資格取得に関する情報提供、助言および経済的支援が有効な貧困対策として期待できる。

政策への貢献

子育て世帯への就業・経済支援のあり方において、本調査研究の結果が貴重な基礎資料となる。

本文

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研究の区分

プロジェクト研究「企業の雇用システム・人事戦略と雇用ルールの整備等を通じた雇用の質の向上、ディーセント・ワークの実現についての調査研究」

サブテーマ「女性の活躍促進に関する調査研究プロジェクト」

研究期間

平成25年度

執筆担当者

周 燕飛
労働政策研究・研修機構副主任研究員

データ・アーカイブ

本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.85.3)。

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