労働政策研究報告書No.222
中国の新たな就労形態に関する法規制と
労働者性判断基準に関する研究
概要
研究の目的
比較法の視点から中国の労働者性判断基準と新たな就労形態に関する法規制の全貌を明らかにし、日本の法的対応にインプリケーションを与えること。
研究の方法
研究会、文献サーベイ
主な事実発見
- 人的従属性、経済的従属性、組織的従属性はいずれも異なる視点から労働者概念を捉えようとする試みであるというのが一般的な理解である。これに対して、中国は、台湾労働法学者の不明確な紹介により、3つの従属性が労働関係の成立を認定するために同時に満たす必要のある要件だと誤解した。
- 中国では、労働関係を認定するための要件を部分的に満たしているプラットフォームワーカーに対し、原則として締結する契約の種類とその内容についてプラットフォーマーと自由に決められるとし、かつ政府関係部門の指導によって契約内容の合理性を保障するという制度を設けた。また、これらのプラットフォームワーカーが労組法上の労働者であることも明らかにした。
政策的インプリケーション
- 諸外国の新たな就労形態に関する法規制を研究する際に、研究対象国の労働者概念、労働者性認定基準等をまず解明する必要があること。
- 新たな就労形態に対する法規制を検討する際に、労働者概念を拡張させて新たな就労形態をも包摂するアプローチや、準労働者という中間概念を導入して既存の労働保護を部分的に適用させるアプローチの他、契約内容を決める際に当事者の意思を尊重し、かつ政府関連部門によって内容の合理性を保障するという制度対処アプローチもありうること。
本文
研究の区分
プロジェクト研究「労使関係を中心とした労働条件決定システムに関する研究」
サブテーマ「雇用社会の変化に対応する労働法政策に関する研究 」
研究期間
令和3年度
研究担当者
- 仲 琦
- 労働政策研究・研修機構 研究員
- 呉哲毅
- 労働政策研究・研修機構 アシスタントフェロー