労働政策研究報告書 No.202
中国におけるシェアリング・エコノミー下の
「新たな就労形態」と就労者保護―その光と影

2019年3月29日

概要

研究の目的

中国におけるシェアリング・エコノミー下の「新たな就労形態」と就労者保護について下記の観点から、実態を把握しその現状と課題を明らかにすることを試みた。

  1. 「中国労働法」と「中国労働契約法」の立法背景
  2. 中国労働法、中国労働契約法の性質及び民法との関係
  3. シェアリング・エコノミーの下での就労者保護
  4. 保護の前提となる労働者認定基準

研究の方法

現地調査、文献サーベイ、研究会の開催

主な事実発見

  • 中国労働法の立法は、トップダウン型の政策の産物であり、労働者保護の必要性から生まれたものではないこと。
  • 労働者や労働関係の法的定義がないこと。
  • 労働法規制は経済の発展と社会の安定を保障することを目的とすること。
  • 中国の場合、シェアリング・エコノミーの下での労働者保護は、当事者を労働者として認定すべきかどうかという入口のところで激しい論争を繰り返していること。

    一旦労働者性を認め、入口に入ると、労働保護法全般の手厚い保護を受けることになるため、入口を狭くする必要があると判断されたこと。

    労働者のレベル分けや、「准労働者」という第三のカテゴリを立てるかどうかに関する議論は、労働保護法を部分的に適用させることで、より多くの「就労者」を保護対象にしようとする試みであること。

政策的インプリケーション

  • 中国の労働法規制の出発点、規制の目的が日本と違うことを常に念頭に置く必要があること。
  • 労働者保護の水準を高く設定しすぎると、関連規制の適用範囲を狭める傾向は自然に生じてしまうこと。
  • シェアリング・エコノミーという概念から様々な新たな就労形態が生まれたが、遊休資源を有し、それを「シェアリング」しようとするシェアリング・エコノミーの本来の当事者について、彼らを労働法規制の適用対象から外そうとする議論があること。

政策への貢献

中国における新たな就労形態に対する法的対応の特徴を分析し、中国の労働法規制の独特性と立法経緯を解析した。新たな就労形態に関する政策制定の参考になる。

本文

研究の区分

プロジェクト研究「労使関係を中心とした労働条件決定システムに関する研究
サブテーマ「雇用社会の変化に対応する労働法政策に関する研究」

研究期間

平成30年度

執筆担当者

仲 琦
労働政策研究・研修機構 研究員

関連の研究成果

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