海外ではワーク・ライフ・バランスをどう支援しているか
―フランス・ドイツ・スウェーデン・イギリス・アメリカの支援策比較

海外におけるワーク・ライフ・バランス(以下、WLB)支援策にはどのようなものがあるだろうか。WLBの政策的アプローチは、一般に対個人と対企業の2つのアプローチに大別される。本稿ではJILPT資料シリーズ『ワーク・ライフ・バランスに関する企業の自主的な取り組みを促すための支援策』から主要部分を抜き出し、企業への支援策に焦点を当て、海外の施策を比較した。

この資料シリーズの元となったのは平成22年度にJILPTが実施した「ワーク・ライフ・バランスにおける企業の自主的な取り組みを促すための支援策に関する調査」。とりあげているのは、フランス・ドイツ・スウェーデン・イギリス・アメリカの欧米先進5カ国で、仕事と家庭生活を両立できる社会をWLBのゴールと捉え、これを推進する企業の自主的な取り組みをバックアップする国の支援策がどのように展開されているかという視点で各国を比較している。併せて、WLB施策の促進を図るために、国はどのような啓発活動を行っているかという視点からもアプローチした。施策の導入は、最終的には企業の自主性に委ねられるわけで、施策の有効性をいかに周知するかが重要な鍵となるからだ。

わが国のWLB政策をとりまく状況―「次世代法」成立までの経緯

海外の施策を見る前に、わが国のWLB政策の変遷を、「均等法」から「次世代法」成立までという時間軸の中で見てみよう。

わが国で仕事と生活の調和に関する議論に社会の関心が大きく向けられ始めた契機となったのは、男女平等を推進する国際的な流れの中で成立した「男女雇用機会均等法」(1985年)であった。女性の社会進出が進み、20代後半から30代女性の就労率が上昇する一方で、少子化という現象が序々に社会問題化した。職場における女性の差別撤廃という「男女均等推進」に主な議論が集中している間にも出生率の低下は進み、ついに「1.57ショック」(1989年特殊合計出生率)という事態に至る。ここで少子化の進行を食い止めることが喫緊の政策課題となり、政策の重心は大きく少子化対策へとシフトした。当時の施策を見ると「エンゼルプラン」(1994年)、「新エンゼルプラン」(1999年)と相次いで少子化対策がとられ、同時に仕事を続けながら生活(特に子育て)の環境を整える意味での「両立支援(ファミリー・フレンドリー)策」としての「育児休業法」(1992年)、「育児・介護休業法の改正」(2001年)といった措置が並んでいる。こうした「両立支援(ファミリー・フレンドリー)策」が重要視された背景には、「女性が働きながらでも子育てのできる環境を整えてあげれば、女性の就労率を落とすことなく少子化の進行も食い止められる」との考えがあったものと思われる。しかし、こうした諸施策の努力にもかかわらず、残念ながら出生率の低下傾向はその後も続いた。少子化という現象はわが国固有の問題ではなく先進国に共通の現象である。しかしわが国の場合は特に深刻であった。資源の乏しいわが国においては、人材(労働力)の枯渇は将来における国力の減退を直接意味する。持続可能な経済社会の構築には労働力の確保が必須で、一義的には少子化の克服が必要となる。こうしたことから少子化進行の原因を探る調査研究が多くなされるようになり、少子化を食い止めるには女性(妻)の就労環境を整えるだけではだめで、男性の働き方も変える必要があるとの流れが生じ、そしてこれは、特に諸外国との比較でも際立っていた「男性(夫)の長労働時間」をめぐる議論に発展していった。つまり、男性(夫)の長時間労働を放置すれば女性(妻)への家事・育児負担の偏在という図式は変わらず、すなわち女性の就労率が上がらないだけでなく将来設計が望めない状況下では出生率も上がらないといった議論である。こうした議論は、「男性が外で働き、女性が家庭で育児」という従来型のモデルから「子育ては男女共同で行うもの」という考え方に人々の選好するライフスタイルが変わってきたことにも支えられた。さらにこの議論は、「働きながら子育てしやすいすべての環境を整えることが必要」との観点から、男性の労働環境見直しの議論にとどまらず、関連すると思われるすべての問題―すなわち、パートや派遣といった就業形態多様化の問題、少子高齢化社会下でのフリーターやニートなどの若年者問題、格差社会やワーキングプアの問題―なども包摂しながらさらなる広がりをみせていく。

こうしてわが国の仕事と生活の調和に関する議論は、「男女均等推進」に始まり、少子化対策としての「両立支援(ファミリー・フレンドリー)策」へと重心を移し、さらには「男性の働き方の見直し」、「地域社会における子育て支援」、「社会保障による次世代支援」なども抱合した包括的な「ワーク・ライフ・バランス(WLB)政策」へと発展していった。

現在、WLBの実現はわが国において、持続可能な経済社会を構築するための重要な課題の一つとなっている。その実現のため、多様な働き方に対応した労働者の健康と生活への配慮は「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」において規定され、また、企業が最低限守らなければならない基準については「育児・介護休業法」等で規定されている。しかし、より一層WLBを進めるためには法による規制だけでは十分でなく、併せて企業の自主的な取り組みを促すことが必要となってくる。WLB促進のための「官民トップ会談」(2007年12月)で定められた『WLB憲章』および同行動指針においても、企業の自主的な取り組みが求められている。

わが国のWLBを促進する企業への経済的支援策としては、育児・介護休業者がスムーズに職場復帰できるよう事業主を支援する「育児・介護雇用安定等助成制度」や、事業所内の託児施設設置・運営を助成する措置、または中小企業における子育て支援助成などがあるが、現在のWLB政策を形成するベースとなったのが2003年に成立し2005年から施行された「次世代育成支援対策推進法(次世代法)」であった。これは「企業の自主的なWLBの取り組みを促すため」に定められた時限立法であり、罰則規定はないが301人以上の企業に対しWLBの行動計画策定を義務付け(300人以下企業は努力義務)、都道府県に提出させるとしたものである。同時に2007年からは、適切な行動計画を策定し目標と達成する基準をすべて満たした事業主を、次世代支援に対する取り組みを行っている優良企業として認定する制度をスタートさせた。この制度で優良企業と認定された企業には「くるみん」(愛称)というマークが与えられ、これを取得した企業は企業イメージがアップすることからWLB促進が図られるという仕組みである。平成21年度『男女共同参画白書』によれば、2010年12月末現在で41,849社(規模計)の届け出があり、1,016社が認定を受けた。また、2011年には101人以上の企業にも対象を拡大した。

欧州におけるWLB政策

さて、以上が日本のWLBをとりまく状況であるが、それでは欧州の文脈におけるWLBとはどのようなものだろうか。

欧州委員会はWLBについて、「職業生活、プライベートな生活および家族生活のバランスを取る政策は、男女両方の生活の質を改善し、とりわけ女性の労働市場への参加を増やし、また人口の高齢化に対応するうえでも重要な要素である」とした上で、WLBの改善を、欧州の成長戦略および雇用戦略の中核をなすものと位置付けている。ここで特徴的なのは、欧州におけるWLB政策の対象は、これまで「家族」に力点がおかれてきたという点である。しかも欧州各国の施策を俯瞰すると、この「家族」とは主に子のある「家族」を指し、政策はその子を育てる女性(母親)への支援であるように見える。欧州においては概ね、各国の法制度はWLBのために編纂されたものではなく、WLBに関する個別の法制度を総称してWLB政策と呼んでいるに過ぎない。従ってここには明確な政策区分があるわけではないが、これらの政策が意図するターゲットは「家族(子のある)」という点で共通していた。すなわち、育児に対する金銭的支援、子育てのための休暇取得措置、両立支援のための柔軟な就労慣行への移行促進、子育てを行う就労者を雇用する企業への支援など、諸々の施策を総称してWLB政策と呼ぶが、この時政策のターゲットは明確に「家族」なのであり、換言すると家族と仕事の両立を支援する政策(ファミリー・フレンドリー政策もしくはワーク・ファミリー・バランス政策)が欧州における政策の本質であったと言えるだろう。欧州においても2000年代に入りファミリー・フレンドリー政策からWLB政策への読み替えが徐々に始まったが、多くの国では政策の本質にさほどの劇的な変化はなかったように思われる。つまり、欧州におけるWLBの“L”は個としてのライフではなく家族のライフを指すというニュアンスが強い。

ファミリー・フレンドリーからワーク・ライフ・バランスへ

このように家族への支援という側面に特化して展開してきた欧州の政策であるが、近年においてはより包括的な概念である広義の WLB政策へ転換しようとする動きが見える。それは、やはり仕事とのバランスは家庭生活にだけに限定されるものではなく、性別や年齢に関係なく、家族への支援を必要とする人もそうでない人も対象となるような施策が必要との考え方が広まってきたからであろう。例えばイギリスにおいては、2000年から「ワーク・ライフ・バランスキャンペーン」が開始されたが、企業の間でも人材確保の観点から柔軟な働き方に対する関心が高まり、育児を行う女性だけでなく全従業員を対象とした働き方の柔軟化へと拡大した。またアメリカにおいては、これまで主にワーキングマザーを対象とした「ワーク・ファミリー・バランス」が展開されてきたが、男性従業員のみならず子どものいない従業員、独身の従業員へも対象を拡大して欲しいとの要請から対象範囲が広がりつつある。他方フランス・ドイツにおいても、中身はまだ両立支援の色彩が強いものの、施策の総称は WLBへと変わってきた。

以上のような日欧米における WLBをとりまく状況を踏まえた上で、以下WLBに関する企業の自主的な取り組みを促すための施策、並びに WLBを推進するために各国政府が行っている広報施策について見てみたい。

各国における WLB政策の位置づけ

各国で WLB政策はどのように位置づけられているのか。それはその国の WLBをとりまく社会環境がどのようなものかによる。 WLBが理想とする社会を単純に指標化するとすれば、それは出生率が高くかつ女性の就業率が高い社会であろう。下の図(図表)は今回の調査対象国を中心に出生率と就業率の指標から見ると各国がどこに分布されるのかを示したものである。これを見るとやはりスウェーデン・フランス・アメリカは出生率、女性就業率ともに高く、女性が働きながら子育てのできる WLBのモデル国であることがわかる。対して日本・韓国は、女性就業率はそれほど低くないものの出生率は低く、女性の社会進出は進んだものの子育てをするにはまだ厳しい社会だという見方ができよう。こうした社会環境の違いから各国の WLB政策における比重は自ずから異なってくる。

図 出生率と女性就業率からみた分布

図

*出生率は2006年の数値(トルコのみ2005年)

*女性就業率は2006年の数値で、15歳(米のみ16歳)以上

出所:EUROSTAT、OECD Database、JILPTデータブック国際比較(2010)に基づき筆者作成

図を見ても明らかなように、わが国に最も近いのがドイツ。出生率が比較的低く日本と同様に少子高齢化問題を抱えるドイツにおいては、必然的に両立支援に関する政策の比重が大きくなる。ドイツではそのため、 WLB関連施策は労働社会省(BMAS)ではなく、家族問題を専門に担当する「家族・高齢者・女性・青年省(BMFSFJ)」が設けられ主に少子化対策の観点から施策が展開されている。

これに対して、出生率と女性就業率がともに高いスウェーデンとフランスにおいては、少子化対策の視点は政策の中にほとんど見られない。逆に言うとこの両国においては、すでに子育てしやすい環境が整えられている(維持されている)ということもできよう。従ってWLB政策の主な関心は、女性の社会進出が進んでいるが故の問題、つまり男女均等促進に関する政策に向けられている。

一方、イギリスは欧州の中で WLBの後進国と目されてきた。これは私的領域の問題に国家が介入すべきでないとの考え方がとられていたためである。このため保守党政権時代には、 WLBは労使間で解決すべき問題であるとされ、政策としては扱われてこなかった。しかし 90年代後半、労働党政権下でファミリー・フレンドリー政策がとられるようになり、 さらに2000年からは「ワーク・ライフ・バランスキャンペーン」が開始されWLBへの関心が高まった。政府は WLB政策導入の目的として「家庭における親の責任、就労促進による貧困対策、男女平等の確保、労働生産性の向上」をあげており、 WLB政策をより包括的な方向に拡大させようとする意向が伺える。

出生率が2を超えるアメリカには、少子化対策という文脈は政策の中にはない。 WLBの取り組みはイギリスと同様、政府の施策としてではなく、企業および民間団体の自発的な努力により、主には女性の社会進出に伴う男女均等促進に力点を置いたワーク・ファミリー・バランスとして発展してきた。しかし最近ではここでも、対象を女性に限定せず、多様な労働者にとっての就労環境を整えるという意味での WLB、もしくはダイバーシティといった概念への移行が進展しつつあるようだ。

企業に対する経済的支援制度

この調査の対象国の中でまったく国が企業に対する経済的支援を行っていない国がある。基本的に国が関与しないとするアメリカはもとより、WLBのモデル国とも目されるスウェーデンがそうである。1970年代以降のスウェーデンにおいて、企業にインセンティブを与えることによって労働者のWLBを推進させるような政策は見られない。つまり、スウェーデンでは労働者個人に対する施策のみでWLBが達成・実現されてきたのである。しかし、これをもってWLBに関する国の経済的支援にはあまり意味がないのではないかと考えるのは早計である。詳しくは資料シリーズ本編を見ていただきたいが、スウェーデンが企業への経済的支援策なしにWLBを達成できたのは、同国のユニークな社会システムに理由がある。すなわち、強固な労使関係システムの基盤がなければこれはなし得なかった。一般的に政策の資本は、当該国の最も影響力の強いシステムを通じて投入されることが効果的である。労使間協約が高いレベルで優先されるスウェーデン社会においては、施策の舵取りは労使に任せておけばよい。一方、企業別労働組合の伝統を持ち、企業と従業員との関係が密接な日本のような慣行を持つ国においては、企業を通じた施策に力点をおき国が支援することが合理的な選択であったとも言える。

それでは、支援策を実施している国の事例を見てみよう。まずフランスであるが、企業内保育所の設置・運営に対する全国家族手当金庫(CNAF)を通じた支援が中心となる。2008年現在、フランス全土に242の企業内保育所が存在し、保育所に入所している全児童の約7%に当たる1万5000人以上の児童が企業内保育所で受け入れられている。CNAFは2009年、2012年までに保育所定員を3万人創設するため、トータルで3億3000万ユーロの予算を計上した。CNAFの財源は多岐にわたるが、国または県は給付金の約2割を分担している。また、出産休業中の従業員の代替にかかる費用の支援等も行われている。一方、税制優遇措置としては、企業が子どもを持つ就業員に対して一定の支出をした場合に認められる家族控除がある。これは2004年に導入された法人税優遇措置であり、2008年の法律で一部改正され現在に至っている。

ドイツは、企業が従業員に対して追加的な保育費用補助手当を支給する場合、当該手当にかかる部分を非課税にするという支援策を講じている。なお、この施策は、家族省の支援を受けて運営するポータルサイト「中小企業と家庭」より情報提供がなされる。また、国が関与する助成措置として企業内保育助成プログラム(Buk)がある。これは既存または新設の保育施設における要員確保等に貢献するもので、家族省が所管している。このほか、経済技術省下の経済・輸出管理庁(BAFA)が主管する「中小企業向けコンサルティング費用助成」などの助成措置がある。

イギリスの「チャレンジ基金」もまた、企業に対する経済的支援策としてあげられる。これは「ワーク・ライフ・バランス・キャンペーン」の一環として実施されたものである。WLB施策の設計に関して、イングランドとスコットランドの民間企業および非営利団体を対象に、コンサルティング企業による12カ月にわたる支援を行なった。2003年までに計5回(ラウンド)実施され、選定された448組織に対して計1130万ポンドが支出された。この取り組みはすでに終了しているが、同施策に関する報告書によると、WLB施策の充実に一定の効果が確認されたと評価されている。また、優遇税・社会保険制度の一環として、託児費用の支払いに充当できる「育児バウチャー」の提供に対する国民保険料の免除措置などがあるほか、2005年からは従業員が提供を受ける育児費用の補助に関して所得税控除が開始されている。

認定・表彰制度

WLB推進のための認定・表彰制度には、民間のものを含めると現在さまざまなものが存在するが、本稿では国が実施もしくは関与するものに限定した。

まず、「男女均等推進」に重点をおくフランスに「平等認定制度」という認定制度が存在する。企業における職業上の平等を改善するという政策目標を具現化するために2004年にスタートした。認定を希望する企業は”Afnor Certification”(注1)という認定機関に申し出、複数の基準に基づき、同機関が定める認定委員会(政府代表、労組代表、子育て支援機関代表で構成)において認定される。認定企業は、男女間の平等を実現する企業であることが証明されることから、2005年3月以降この平等認定を受けようとする企業の数は増大傾向にあるとの報告がある。このほか人事管理の中での差別予防に関する取り組みや機会の平等、多様性の促進に関する取り組みの実施に対して与えられる「多様性認定」という名称の認定制度等があり、これら制度はお互いに相互保管的な関係をなしている。

ドイツでは、家族省のほか企業や労使団体が連携して、「男女機会均等」を促すための優れた取り組みをした企業を認定する「ドイツ・トータル・イー・クォリティー(TEQ)」協会を設立、この機関のもと優れた企業を認定している。これはWLBの促進に限定して設立したされたものではないが、結果的にWLBの環境整備に貢献している。このほかにも、「従業員のための仕事と家庭の監査」による企業認定や「成功要因 家族」プロジェクトで実施されている企業コンテスト等があり、家族省が運営の助成などを行っている。

イギリスには国が直接実施する制度はないが、地方自治体バーミンガム・シティ・カウンシルが2002年から実施する「Best business award for the development of working-life balance」という表彰制度がある。同自治体にはWLBや柔軟な働き方に関する助言や情報提供を行う「雇用主連携チーム」が設置されており、このチームが表彰制度の運営を担っている。

なお、スウェーデン、アメリカにおいては国が直接関与する認定・表彰制度はない。

WLBの指標・数値目標

WLBを評価するための指標について、フランスではWLB施策の評価を行うため「企業における子育て促進評価機構」が創設されているが、同機構が企業を評価する際用いる指標がある。これは企業の社会的責任(CSR)の枠内で定められた指標であり、「仕事と私生活の両立を容易にする仕事の編成方法が存在するか、父親休暇・出産休暇・養子縁組休暇の場合に使用者が払う賃金の補足手当の有無、性別ごとの休暇に関するデータ、職業別のデータ」などの項目で構成されている。

ドイツは、家族省が主に「児童支援法」に基づき保育に関する数値目標を定めている。現在「2013年までに3歳未満児の3分の1に保育所を提供」という目標が掲げられており、この目標達成のため、ドイツ政府は全費用の3分の1に当たる40億ユーロを負担する予定である。

イギリスには上記バーミンガム・シティ・カウンシルが実施する表彰制度の審査の際用いる指標として、「柔軟な働き方の制度の提供、休暇制度の提供と関連する手当、取り組み状況(従業員に対する周知・促進)、WLBによる利益と達成事項」などがある。

WLBの広報政策

WLBを普及させるには、広報活動が重要なポイントとなる。WLB施策にはどのようなものがあり、どこに行けばそうしたサービスを受けられるかという情報を、企業または個人に周知することが、WLBの促進を図る上で重要な鍵をにぎる。

フランスでは2003年4月の「家族会議」において、家族政策に関する情報へのアクセスを向上するため「家族情報拠点(Point Info Famille)」が創設された。「家族情報拠点」は、家族がニーズに最も適した家族支援制度や育児支援制度を利用できるよう相談に応じるとともに、家族を必要に応じて適切な機関へアクセスさせる助言などを行う。2005年段階で約480の拠点がフランス全土に配置され、家族に関する情報提供、WLBの啓発に役立っている。

ドイツでは、労働社会省(BMAS)、家族省(BMSFJ)、雇用エージェンシー(BA)の3省・機関が合同で「可動労働時間・労使のための指針」という広報政策が展開されている。労働時間の柔軟化推進に貢献するこの取り組みにより、「労働時間貯蓄制度」が普及したと言われている。このほか、家族省が主導して行なう「家族のための連合」がある。これは政労使学の連携によるプロジェクトであり、WLBが企業や社会に有益という広報啓発活動を行っている。

イギリスもワーク・ライフ・バランス・キャンペーンの重要な取り組みの一つとして、企業に対する啓発活動を位置付けている。政府の呼びかけにより民間大手22社が資金を持ち寄り「Employers for Work Life Balance」を結成、政府のバックアップと参加を得てWLBに関する企業の意識を高めるための活動を行っている。

注:


参考資料:

  1. Eurostat (2009), "Reconciliation between work, private and family life in the European Union"
    OECD(2007), “Babies and Bosses - Reconciling Work and Family Life: A Synthesis of Findings for OECD Countries”

    OECD編著・高木郁朗監訳(2009)『国際比較:仕事と家族生活の両立―OECDベイビー&ボス総合報告書』明石書店
    奥山明良・池添弘邦・川田知子・水野圭子・内藤忍(2010)『ワーク・ライフ・バランス比較法研究<中間報告書>』労働政策研究・研修機構
    ※なお、ワーク・ライフ・バランスに関する企業の自主的な取り組みを促すための支援策の詳細については、労働政策研究・研修機構資料シリーズNo.84『ワーク・ライフ・バランスに関する企業の自主的な取り組みを促すための支援策―フランス・ドイツ・スウェーデン・イギリス・アメリカ比較―』をご覧いただきたい。

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