企業再編と雇用:イギリス
企業合併など従業員に影響を及ぼす事項についての事前協議、厳格化
—情報提供・協議規則の施行

2005年4月、EUの情報提供・協議指令を受けて「従業員への情報提供と従業員との協議に関する規則」(The Information and Consultation of Employees Regulations 2004)が施行された。これにより150人以上の従業員がいる団体は経営戦略、解雇、合併など、従業員に影響を及ぼす事項について、直接または従業員代表(Employee Representative)を通じて協議しなければならない。規則の適用範囲は、2007年4月からは従業員100人以上の団体、2008年4月以降は従業員50人以上の団体へと段階的に拡大される予定。この規則の実施により、使用者側は全従業員10パーセント以上の支持を受けた情報提供および協議についての要求に応える準備を6カ月以内に整えなければならない。但し、いくつかの理由で新しい情報提供・協議規則に対して特段の準備をしている使用者は少ないと見られている。

この理由として考えられるのは、第一に情報提供・協議プロセスが必要になるのは従業員からの要求があった場合に限られるということだ。第二に比較的大規模な企業には、協議の基礎となる取決めがすでにある可能性が高いこともあげられる。解雇を予定している使用者は従来どおり1992年労働組合・労働関係法(Trade Union and Labour Relations Act1992)()の規定を遵守すればよいと考えているのかもしれない。しかし同規則は情報提供および協議の義務をより早い段階、すなわち雇用に影響を与える可能性のある事項については、その事項を提案する時点からの協議を要求しているため、今後適用範囲が拡大するに従い、対応を求められる使用者は増加するものと思われる。

英国労働組合会議(TUC)は、この規則について「この50年以上で最も重要なもの」と施行を歓迎している。しかしながら従業員代表による従業員と使用者間のコミュニケーションを認めているため、労働組合の弱体化につながる懸念を一方で排除できないでいる。

2005年6月 フォーカス: 企業再編と雇用

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