猛暑対策として配達休止時間帯を設定
―フードデリバリーの就労をめぐって①
5月から熱波が襲来し、各職場における暑さ対策が取られている。建設業関連では猛暑の日に工事を休止(休工)し、その間の賃金を補償する制度がある。だが、その他の業種では、就労を休止する厳格な制度はない。特に、プラットフォームを介して配達業務に従事する就労者は、基本的に屋外で就労するため暑さの影響をまともに受ける仕事である。このほど、プラットフォーム企業がファランドゥ労働連帯相の要請を受け、猛暑日に就労を制限するルールを打ち出した。ただ、収入減の補償がないために、労組やドライバーからは不満の声も聞かれる。
猛暑日の安全配慮措置を強化
フードデリバリーサービスを運営するプラットフォーム企業、Uber Eats社とDeliveroo社は7月8日、猛暑警報(赤色警報)(注1)が発令されている地域で、午後2時から午後6時までの配達を一時停止すると発表した(注2)。この措置は、ファランドゥ労働連帯相が、配達プラットフォーム企業に対し、就労者(ドライバー)を猛暑から守るための安全配慮措置を講じるよう要請したことを受けたものである(注3)。労働連帯相は、プラットフォームを介して配達業務に従事する就労者は、自営業者とみなされ被用者として保護を受けられない法的地位にあることを踏まえて、このような要請を出したと説明している。
またこの措置は、配達員を暑さから守ることを目的としており、両プラットフォーム企業が既に実施している猛暑対策(プロトコル)を補完するものだとしている。例えば、その一環として両社は、一部の提携レストランを通じて飲料水へのアクセスを容易にする措置を講じている(注4)。その上で、配達ドライバーに対して、Uber Eats社は担当地域でオレンジまたは赤の警戒レベルが発令された場合、電話で通知し、特に水分補給の重要性に関する啓発メッセージを送るシステムを稼働させている。Deliveroo社は、猛暑時には、配達エリアを縮小して「過度に長い距離を避ける」こと、猛暑に伴うリスクについて周知徹底すること、無料の給水ポイントを地図上に示すことなどの対策も講じている。
労働連帯相はプラットフォーム企業の決定を歓迎し「今回の決定は重要な一歩であり、提携レストランには、これらの労働者に水や涼しい場所を提供することで、直ちに連帯を示すよう強く求める」と述べた(注5)。
配達休止による収入減の補償の不在
自営業者を代表し、両社の配達員における多数派組合で自営業者を代表する労働組合、ユニオン・アンデパンダン(Union-Indépendants)のファビアン・トソリーニ氏は、今回の猛暑対策に賛成だとした上で、注文の大部分が入る正午から午後2時までの時間帯については、配達区域と注文重量を減らすことの必要性を指摘した(注6)。
ただ、配達休止による収入の減少が懸念される。労働総同盟(CGT)の配達労働者組合(CGT-Livreurs)のルドヴィック・リウ氏は、この決定は休止に対する代替措置がないため「不安定な立場にある労働者をさらに不安定にする」ものだと問題視している。補償が一切なく、生活のためには働く必要があると嘆くドライバーもいる(注7)。ただ、この決定を歓迎する配達ドライバーもおり、ドライバー間で意見の対立が生じている。
プラットフォーム企業側の見解として、Uber Eats社は「配達ドライバーの安全確保と収益への影響を最小限に抑えることとのバランスを取るために午後2~6時という配達時間帯を選んだ」と回答しているが、Deliveroo社はコメントを控えるとしている(注8)。
ドライバーには政府や企業の対応に疑問も
フランス北西部ブルターニュ地方にあるロリアンでUber Eats社の配達ドライバーの一人は、「信じられないほど暑いが、お金を稼がなければならないので、働き方を変えるわけにはいかない」と話す(注9)。6月中旬、フランス全土を襲った熱波のため、アイスクリームの注文が急増した。溶ける前に配達しなければならないというプレッシャーが強まっている。彼は、Uber Eats社のガイドラインについて、偽善的だと感じている。プラットフォーム就労は、システム上はドライバーが思うように稼げない仕組みになっているにも関わらず、今回の措置は配達しないように促すもので、腑に落ちないからだ。
南西部のボルドーの配達員の一人は、猛暑日は気温マイナス5度の冬と同様に、人々は外出したがらず、普段の日より一段と多くの配達サービスを利用するため、配達に従事せざるを得ないと話す。特に今夏のサッカー・ワールドカップ期間中のプロモーションが本格化して、猛暑の間も、配達数は減らなかった。Uber Eats社はフランス代表チームのスポンサーでもあり、フランス対セネガル戦があった6月16日は、そのキャンペーンの影響で、前週の同日と比較して注文が33%増加したという。
猛暑日が頻繁に発生すると予想される中、多くのドライバーが生産性の低下と収入への影響を懸念している。「集中力が続かないし、仕事中の事故が本当に心配だ」と話すドライバーもいる。「ただ、もし事故に遭ったら、数週間収入が途絶えてしまう。だから、身を守るために、普段の生産性の70%程度の余力をもって仕事をこなすのが賢明だと思う」と語っている。
注
- 気象局(メテオ・フランス)は、暑さ対策の警戒レベルを4段階で示している。警戒の強さの順に、「赤」は「厳重な警戒」、「オレンジ」は「非常な警戒」、「黄」は「注意」、「緑」は「警戒の必要なし」である。建設業を対象とする賃金の特別補償では、このうち「赤」あるいは「オレンジ」の警戒警報発令が基準となる。詳しくは当機構、国別労働トピック(2026年6月)参照。(本文へ)
- Canicule : Uber Eats et Deliveroo suspendront les livraisons l'après-midi en cas de vigilance rouge
, Europe 1, Publié le 08/07/2026.(本文へ) - Canicule : Uber Eats et Deliveroo suspendront les livraisons dans les départements en vigilance rouge
, 20 Minutes avec AFP, Publié le 08/07/2026.(本文へ) - 前掲注2、Europe 1, Publié le 08/07/2026.(本文へ)
- Canicule: Uber Eats et Deliveroo annoncent suspendre les livraisons pendant l'après-midi dans les départements en vigilance rouge
, BFM, Publié le 08/07.(本文へ) - Canicule : les livreurs Uber Eats et Deliveroo ne travailleront plus aux heures les plus chaudes en cas de vigilance rouge
, par M.L. avec AFP, TF1 Info, Publié le 8 juillet 2026.(本文へ) - Le calvaire des livreurs à vélo durant les périodes de canicule, franceinfo
, Publié le 10/07/2026.(本文へ) - 前掲注2、Europe 1, Publié le 08/07/2026.(本文へ)
- Très exposés aux canicules, les travailleurs indépendants n’ont pas les moyens de s’arrêter, Par Jules Thomas, Le Monde, Publié le 25 juin 2026.(本文へ)
(ウェブサイト最終閲覧日:2026年8月10日)
2026年8月 フランスの記事一覧
- 猛暑対策として配達休止時間帯を設定 ―フードデリバリーの就労をめぐって①
- 「最低収入保障」の引き上げに合意 ―フードデリバリーの就労をめぐって②
関連情報
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:掲載年月からさがす > 2026年 > 8月
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:国別にさがす > フランスの記事一覧
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:カテゴリー別にさがす > 労働条件・就業環境、労働法・働くルール
- 海外労働情報 > 国別基礎情報 > フランス
- 海外労働情報 > 諸外国に関する報告書:国別にさがす > フランス
- 海外労働情報 > 海外リンク:国別にさがす > フランス


