「最低収入保障」の引き上げに合意
 ―フードデリバリーの就労をめぐって②

カテゴリー:労働条件・就業環境労働法・働くルール

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  • 国別労働トピック:2026年8月

プラットフォームを介してフードデリバリーなどの配達業務に従事する就労者は、その収入の低さが問題となっている。雇用プラットフォーム社会関係庁(ARPE)の調査結果によると、2021年から2025年にかけて配達業務の時間当たりの収入が大幅に減少。特に、無報酬の配達時間の増加が主な要因だと指摘されている。こうした中、フードデリバリーの配達員組合などと大手企業のUber Eats社及びDeliveroo社との間で、7月10日、「最低収入保障額」の引き上げに関する合意が成立。就労1時間当たりの最低限の収入保障額を現状の総額11.75ユーロから19ユーロに引き上げ、9月1日から適用されることになった。

収入の低さへの不満

政府の雇用プラットフォーム社会関係庁(Autorité des relations sociales des plateformes d’emploi (ARPE))がとりまとめた調査結果によると、2021年から2025年の間にプラットフォームを介する就労者の時間当たりの収入が大幅に減少した(注1)。特に、平均配達時間が長くなり、新規配達依頼までの待ち時間が増加したことが主な要因だと指摘されている(注2)

2021年を基準として2025年には、Uber Eats社では31.72%、Deliveroo社では25.2%、Stuart社では30.9%の減少となった。特にUber Eats社は2024年に34.2%の減少を記録した。2021年を基準として2022年から2025年にかけて収入の減少幅をプラットフォーム企業別に示したのが図表1である(インフレ率を加味して調整後の数値である)。

図表1:フードデリバリー労働者の収入の減少幅 (単位:%)
画像:図表1

出所:ARPEウェブサイトを参照して作成。

そのような中、フードデリバリーの配達員組合及び自営業者団体と大手企業のUber Eats社及びDeliveroo社の間で、7月10日、最低収入保障額の引き上げに関する合意が成立した。Uber Eats社とDeliveroo社の2社が加盟する独立自営業者プラットフォーム協会(Association des plateformes d'indépendants (Api))は、自営業者を代表する食品配達労働組合のユニオン・アンデパンダン(Union-Indépendants)と全国自営業者・零細企業家連盟(La Fédération nationale des auto-entrepreneurs et micro-entrepreneurs (FNAE))との協議の結果、2023年協定の修正案に署名した。配達ドライバーの1時間当たり最低収入を総額11.75ユーロから19ユーロへと約62%引き上げることになり、9月1日から適用される(注3)。配達ドライバーの1時間あたり収入が1週間平均で19ユーロを下回る場合、プラットフォーム企業側はドライバーの収入をこの最低額まで引き上げるための補償を行う必要がある(注4)。Uber Eats社の側では、引き上げによる年間負担増は5,000万ユーロに上ると説明している(注5)。合意した組合のうち、ユニオン・アンデパンダンは、有益な成果だが、まだ改善の余地は大きいとしている。特に、今後は、報酬の計算をプラットフォーム側による推定値ではなく、実際に走行した距離と実際の待ち時間を考慮に入れた基準による料金体系を検討しており、プラットフォーム企業と協議中だとしている(注6)

一方で労働総同盟(CGT)などは合意を拒否し、「19ユーロという最低額はいかにも低く、設定する意味が乏しい」と批判している(注7)。Uber Eats社の平均の時間当たり収入は21.50ユーロであり、Deliveroo社は25.70ユーロであるにもかかわらず、なぜ最低保障19ユーロを勝利と言えるか疑問だと主張している。一部のドライバーは今回の合意で実質的に60%の引き上げになると期待しているが、実際には全くそうならないと非難している。

今回の合意の成果の一つとして、ユニオン・アンデパンダンのファビアン・トソリーニ氏は、改正案には条文の年次見直し条項も含まれており、インフレ率の上昇や購買力の低下といった例外的な事態が発生した場合は、それよりも早く見直しを行うと説明した(注8)。ARPEのジョエル・ブロンデル事務局長もこうした事態が発生した場合は、金額を見直す条項が含まれており、配達ドライバーの健康と安全に関する議論も並行して続けられていると話している(注9)

EU指令の国内法化を意識か

CGTなど今回の協定に署名しなかった労働組合や一部の地域団体は、この合意をプラットフォーム企業による広報活動の一環と見なしている。ボルドーの宅配業者団体であるメゾン・デ・リヴルール(Maison des livreurs(配達ドライバーの家))のプロジェクトコーディネーター、ジョナサン・リュティル・シュヴァリエ氏は、「プラットフォーム各社は、自営業の配達ドライバーを労働法典が保護対象とする「従業員」として再分類することを可能にするEU指令の国内法化を前に、既存の枠組みで体裁を整えようとしている」と指摘する(注10)。EU指令の国内法化は、自営業の配達ドライバーを被用者として再分類する可能性を開くものだが、現行制度下のフランスでは一般的に社会対話によって強化された独立請負業者としての地位が支持されている(注11)

「広報活動」との批判に対してDeliveroo社の担当者は、今回の合意をプラットフォーム、ドライバー、そして公的機関が望む社会対話の信頼性を回復させるものとなると述べている。

また、労働総同盟(CGT)の配達労働者組合(CGT-Livreurs)のルドヴィック・リウ氏はARPEの位置づけに関しても異論を唱えている。そもそも「ARPEは、(プラットフォーム就労者を労働者として位置づけるのではなく)フランス的な第三の地位を正当化するために作られた」と指摘。その上で、「最低収入保障を決定する協定は、政府にとってドライバーが一般的な労働者と同じ権利を必要としないと主張できる根拠となっている。本来、労働法典は全ての労働者(就労者)に適用されるべきである」と主張している。

(ウェブサイト最終閲覧日:2026年8月10日)

参考レート

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