中堅ホワイトカラー専門職の四分の一、昇進・昇給が5年以上ほぼなし

ニューヨーク大学プロフェッショナル教育学部とシンクタンクのバーニンググラス研究所が共同で発表した調査結果「脇道に逸れたキャリア:中堅専門職の経済的流動性における隠された危機(Sidetracked: The Hidden Crisis in Mid-Career Professional Economic Mobility)」(注1)によると、米国の大卒中堅ホワイトカラー専門職の24.2%が、5年以上昇進しておらず、賃金もほとんど伸びていない。また、入職10年経過後にキャリアが停滞した者は、入職後10年間(キャリア初期)の昇進が平均1.5回、賃金上昇が平均30%だったのに対し、停滞しなかった者は、それぞれ平均1.9回、71%だった。キャリア初期における昇進や賃金上昇の違いが、その後のキャリアの停滞と関連していることが浮かび上がった形だ。本調査は、米国の2000年以降のさまざまな業界における、ホワイトカラー専門職130万人以上のキャリア動向を分析したものである。

中堅専門職のキャリアの停滞

調査は、バーニンググラス研究所が持つ全米大卒労働者の職歴データベースを用いて、2000年以降のホワイトカラー中堅専門職130万人のキャリアについて分析した。それによると、入職10~15年目に相当するホワイトカラー中堅専門職の24.2%が、社内外(転職を含む)において、5年以上昇進(internal or external promotion)しておらず、その間の実質賃金上昇率も5%未満にとどまる「キャリアの停滞」に直面している。

こうしたキャリアが停滞している者の割合を業種別に見ると、「行政(Public administration)」が30.2%と最も高く、「不動産・賃貸・リース(Real estate and rental and leasing)」が28.9%、「公共事業(Utilities)」が28.0%と続いている。一方、この割合が比較的低かったのは「情報(Information)」(20.7%)、「ヘルスケア・社会支援(Health care and social assistance)」(21.8%)だった(図表1)。

図表1:中堅ホワイトカラー専門職で昇進・昇給がほぼない者の割合 (業種別、単位:%)
画像:図表1

出所:バーニンググラス研究所ウェブサイト

また、地域別に中堅ホワイトカラー専門職でキャリアが停滞している者の割合を見ると、特定の産業への依存度が高く、転職先や就業機会が限られているミシシッピ州(32.9%)、ウェストバージニア州(31.1%)、アラバマ州(30.1%)、企業数や職場の規模が限られ、昇進の機会が生まれにくいワイオミング州(31.3%)、バーモント州(31.1%)などで、停滞する割合が高い。一方、大規模で多様な経済基盤を有し、力強い成長を遂げているワシントン州(18.8%)、カリフォルニア州(20.1%)、テキサス州(22.6%)、ユタ州(22.1%)、マサチューセッツ州(22.6%)、ジョージア州(23.4%)などでは割合が低くなっている。

職種別では、「金融商品販売職(Financial Sales Representatives)」(30.1%)、「システムエンジニア(Network and System Engineers)」(29.4%)、「営業担当職(Sales Representatives)」(29.0%)など、「サポート系」職種でキャリアの停滞が目立つ。これに対し、マーケティング専門職(Marketing Specialists)」(12.2%)、「数学者、統計学者、データサイエンティスト(Mathematicians, Statisticians, and Data Scientists)」(16.3%)、「ウェブ・インターフェース設計・開発者(Web and Interface Designers and Developers)」(17.7%)などの専門知識を持つ者の停滞率は比較的低かった(図表2)。

図表2:中堅ホワイトカラー専門職で昇進・昇給がほぼない者の割合 (職種別、単位:%)
画像:図表2

出所:バーニンググラス研究所ウェブサイト

キャリアの停滞と保有する資格の関係

各分野の学位以外の資格(Non-Degree Credentials)取得がキャリアの停滞とどの程度関連しているかを見ると、一部の分野では、資格取得(学位以外)はキャリア停滞(注2)の可能性を低下させることに関連していた。「教育学」では46%、「コミュニケーション学」では38%、「医療専門職」では37%、それぞれ停滞リスクが低減している。これは、こうした資格が労働者のキャリアの勢いを維持するのに役立っていることを示している。

対照的に、他の多くの分野では、学位以外の資格取得はキャリア停滞の可能性の上昇に関連しており、「行政」では79%、「工学」では67%、「法律専門職」では23%、停滞リスクが上昇している(図表3)。これらの分野では、資格が停滞を防ぐ効果を十分に発揮していないか、あるいは、停滞が起こりやすい職務へと労働者を導いてしまっている可能性を示唆している。

図表3:学位以外の取得資格とキャリアの停滞の関連性 (単位:%)
画像:図表3

出所:バーニンググラス研究所ウェブサイト

保有する資格の分野によって、キャリアが停滞する可能性に異なる傾向がみられる点について、報告書は「資格が継続的なキャリアアップの仕組みに組み込まれていない分野では、資格は、求職者が採用されるのに⼗分な最低限の能⼒基準を満たしているかどうかを示すシグナルとして機能しており、昇進の準備ができていることを示す指標とはみなされていない。一方、教育、医療などの分野では、求⼈における最低経験年数の要件が著しく低く(中央値は約2年)、資格は長年の経験を補完する、あるいは代替するものとして認められており、さらなる資格取得はキャリアを通じて専⾨能⼒を高める証となっている」と指摘している。

このほか調査では、キャリアが停滞している者と停滞していない者との間で、自身のプロフィールにあげた保有するスキルの傾向に違いがあるかどうかを調べた。「停滞していない者」のあげた保有割合が、「停滞している者」のあげた保有割合を上回ったスキルをみると、「一般的なスキル(Common Skills)」では、「人前での発言(Public Speaking)」が1.78ポイント、「リーダーシップ」が1.69ポイント、「タイムマネジメント」が1.67ポイント、それぞれ高かった。「特別なスキル(Specialized Skills)」では、「ソーシャルメディア」が1.82ポイント、「イベントの企画」が1.75ポイント、「コミュニティへの働きかけ(Community Outreach)」が1.45ポイント、それぞれ上回った。

初期のキャリアの重要性

調査は、大卒後に職業に就いた後の初期のキャリアが、その後の昇進や昇給に関連しているかについても分析した。

その結果、入職後10年間(キャリア初期)において、①後にキャリアが停滞した者は昇進が平均1.5回、賃金上昇が平均30%だったのに対し、②停滞しなかった者は、それぞれ平均1.9回、71%だったことがわかった。

報告書は以上の調査結果を踏まえ、次の3点を提言している。①キャリア中期の停滞は単なる結果ではなく、すぐに対処すべき状態であり、長引くほど逆転が困難になる、②停滞の根源はキャリア初期に形成されることが多く、早期発見と予防が是正措置と同様に重要である、③停滞は永久的なものではなく、スキル開発、資格取得、キャリア転換といった的を絞った戦略をたてることが、停滞に直⾯している、あるいはすでに停滞している者が、経済的な障害を克服するのに役立つ。

参考資料

  • Carlo Salerno, Matt Sigelman, Angie Kamath,Yustina Saleh, Ashley Yuan, Kim Kreiss, Gillian Perkins, and Gwynn Guilford(2026)Sidetracked: The Hidden Crisis in Mid-Career Mobility新しいウィンドウ
  • ウォールストリート・ジャーナル、バーニンググラス研究所、各ウェブサイト

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