ワシントンD.C.やカリフォルニア州主要都市で最賃を引き上げ
 ―物価連動で2~3%上昇

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  • 国別労働トピック:2026年7月

ワシントンD.C.(コロンビア特別区)やロサンゼルス市、サンフランシスコ市などカリフォルニア州の主な都市、オレゴン州などは2026年7月1日に最低賃金を引き上げた。これらの地域は毎年7月に最賃を引き上げており、物価連動方式をとる都市などでは、今回、2~3%の上昇となっている。ロサンゼルス市ではホテル・空港関連従業員の最賃を、同市で夏季オリンピックが開催される2028年までに30ドルへと引き上げることにしていたが、経営者団体等との妥協により、この水準への到達時期を2030年へと延期した。オクラホマ州では、州最賃を2029年まで段階的に時給15ドルへと引き上げる州法案の是非を問う住民投票が行われ、反対多数で否決された。同州では引き続き連邦最賃が適用される。

各地の引き上げ状況

米国では連邦政府が定める最低賃金のほか、州であれば連邦、市であれば州や連邦を上回る水準の最賃を設けている場合が少なくない。連邦最賃は2009年7月以降、時給7.25ドルで据え置かれているが、全米50州のうち約半数の州などでは、これより高い最賃を設定し、毎年改定している。改定時期の多くは年初だが、1年の後半が始まる7月1日とする州などが次いで多い。

2026年7月1日に最賃を改定した主な州・市には、アラスカ州、オレゴン州、首都ワシントンD.C.(コロンビア特別区)、カリフォルニア州の主要都市(サンフランシスコ市、ロサンゼルス市など)、シカゴ市(イリノイ州)などがある。物価連動方式を採用する州・市等における引き上げ率は、前年(注1)と同様に、2~3%程度となっている(図表1)。

図表1:米国の各州・市等における最低賃金の主な改定状況(2026年7~9月)(単位:ドル/時給)
  改定前 改定後 引上げ額 上昇率 改定方法 備考(注1)
アラスカ州 13.00 14.00 1.00 7.69% 段階的引き上げ  
オレゴン州 15.05 15.55 0.50 3.32% 物価連動 都市部対象
14.05 14.55 0.50 3.56% 物価連動 非都市部対象
16.30 16.80 0.50 3.07% 物価連動 ポートランド都市圏対象
フロリダ州 14.00 15.00 1.00 7.14% 段階的引き上げ 2026年9月30日引き上げ(予定)
コロンビア特別区(ワシントンD.C.) 17.95 18.40 0.45 2.51% 物価連動  
ロサンゼルス市(カリフォルニア州) 17.87 18.42 0.55 3.08% 物価連動  
22.50 25.00 2.50 11.11% 段階的引き上げ 客室60室以上のホテル及び国際空港の従業員対象(注2)
サンフランシスコ市(同上) 19.18 19.61 0.43 2.24% 物価連動  
ロングビーチ市(同上) 25.00 26.50 1.50 6.00% 段階的引き上げ ホテル従業員対象
エメリービル市(同上) 19.90 20.34 0.44 2.21% 物価連動  
ウエストハリウッド市(同上) 20.22 20.87 0.65 3.21% 段階的引き上げ ホテル従業員対象
シカゴ市(イリノイ州) 16.60 17.05 0.45 2.71% 物価連動 従業員4人以上規模対象
モンゴメリー郡(メリーランド州) 17.65 18.00 0.35 1.98% 物価連動 従業員51人以上規模対象
16.00 16.50 0.50 3.13% 物価連動 従業員11~50人規模対象
15.50 15.95 0.45 2.90% 物価連動 従業員10人以下規模対象

注1:改定時期(改定額の適用日)は備考欄に記載した州を除き、いずれも2026年7月1日。

注2:このほかホテル従業員には1時間あたり4.25ドル、空港従業員には1時間あたり7.65ドルの医療保険給付をそれぞれ義務化。

出所:経済政策研究所(EPI)ウェブサイト等より作成

ワシントンD.C.では、首都圏のCPI-U(都市部の消費者世帯を対象とする消費者物価指数)の上昇に応じて、時給17.95ドルから時給18.40ドルへと引き上げた(前年比2.51%上昇)。

アラスカ州やフロリダ州では住民投票の結果、毎年の引き上げ額をあらかじめ定め、時給15ドルに達した後は、物価に連動する方式を採用している。アラスカ州では今回の改定により時給14ドル、2027年7月に同15ドルへと引き上げ、28年1月以降は物価に連動して自動的に引き上げる。フロリダ州では2026年9月30日に時給15ドルへの引き上げを完了し、27年1月1日から物価(CPI-W=南部国勢調査地域における都市部の賃金労働者世帯を対象とする消費者物価指数)の上昇にしたがって引き上げる。

カリフォルニア州内の市の改定状況を見ると、サンフランシスコ市は時給19.61ドル(前年比2.24%上昇)、ロサンゼルス市は時給18.42ドル(同3.08%上昇、ホテル・空港関連従事者対象の最賃は後述)にそれぞれ引き上げている。

米国の州や市などでは特定の業種や職種を対象に、一般労働者より高い最賃を設定しているところもある。カリフォルニア州では2024年10月16日に、医療施設従事者を対象にした最賃を設けた(注2)。医療サービス提供者だけでなく、施設内の清掃員や調理人、警備員らを含む医療施設従事者に幅広く適用するもので、病院の規模などをもとに4つに区分。それぞれ時給25ドルへと段階的に引き上げ、その後は物価に連動して改定する。今回(2026年7月1日)の改定による各区分の最賃額を図表2に示した。

図表2:カリフォルニア州医療施設従事者対象の最低賃金(2026年7月1日改定)(単位:ドル/時給)
  改定前 改定後 引上げ額 上昇率 改定方法 今後の引き上げ予定
①1万人以上の常勤従業員がいる病院または総合医療システム、透析クリニック、大きな郡が運営する医療施設 24.00 25.00 1.00 4.17% 段階的引き上げ 2028.1~物価連動
②セーフティネット病院(メディケアなどの政府支出割合が高い病院)、小さな郡が運営する医療施設 18.63 19.28 0.65 3.49% 段階的引き上げ 2028.7~20.65ドル
2029.7~21.37ドル
2030.7~22.12ドル
2031.7~22.89ドル
2033.7~25.00ドル
2035.1~物価連動
③中規模の郡が運営する医療施設、郡が運営していない医療施設(他のカテゴリーに含まれない対象医療施設) 21.00 23.00 2.00 9.52% 段階的引き上げ 2028.7~25.00ドル
2030.1~物価連動
④地域、農村部の診療所など 21.00 22.00 1.00 4.76% 段階的引き上げ 2027.7~25.00ドル
2029.1~物価連動

出所:カリフォルニア州ウェブサイトより作成

ロサンゼルス市でホテル従業員などの「オリンピック賃金」への引き上げを延期

カリフォルニア州のいくつかの都市では、ホテル従業員らを対象に、一般労働者より高い最賃を設け、段階的に引き上げている。こうした最賃は、2026年7月1日の引き上げにより、ロサンゼルス市で時給25.0ドル(客室60室以上)、ロングビーチ市で時給26.5ドル、ウエストハリウッド市で時給20.87ドルと、それぞれ時給20ドルを超えている。

なお、ロサンゼルス市議会は2025年5月27日に、2026年のサッカーワールドカップと2028年の夏季オリンピックの開催に向けて、ホテル(客室60室以上)及びロサンゼルス国際空港で働く者の最賃を2028年までに時給30ドル(通称「オリンピック賃金」)へと引き上げる条例を可決した。

引き上げを主導した労働組合などは、こうしたイベントの開催期間中は大勢の観光客や選手らが訪れるため、ホテルの経営者らは、より高い賃金を支払う余裕があると主張した。一方、経営者団体などは、最賃の引き上げが経営難や人員削減、採用の減少を招くと反発。条例の撤回を問う住民投票を実施するための署名を集め、2025年6月に当局に提出した。条例は同年7月1日に施行する予定だったが、署名が必要数を満たしているかどうかを当局が確認する間は保留された。その後、署名は必要数を満たしていないと判断され、条例は9月8日に施行された。

条例施行後も最賃引き上げをめぐる対立が続いていたところ、現地報道によると、議会の最賃引き上げ反対派の支持基盤である経営者団体などが、すでに必要な数の署名を集めていた売上税(Gross Receipts Tax)の廃止を求める住民投票の実施を見送る一方で、最賃引き上げ賛成派が「オリンピック賃金」への引き上げスケジュールを延期する、という妥協が成立した。これを受け、市議会は2026年5月19日、「オリンピック賃金」の達成時期を、オリンピック後の2030年へと延期することを決議した。延期後の新たな引き上げスケジュールは図表3のとおりである。

図表3:ロサンゼルス市ホテル・空港従業員対象の最低賃金の推移と今後の引き上げ予定
改定時期 2026.7.1 2027.7.1 2028.7.1 2029.7.1 2030.1.1 2030.7.1
最低賃金(時給) 25.0ドル 25.5ドル 28.5ドル 29.0ドル 30.0ドル 物価連動
医療保険
(ホテル)
4.25ドル 6.00ドル 空港と同等 空港と同等 空港と同等 空港と同等
(空港) 7.65ドル 8.15ドル 未定 未定 未定 未定

注:医療保険額は1時間あたり。「ホテル」は客室60室以上の宿泊施設、「空港」はロサンゼルス国際空港を意味する。

出所:ロサンゼルス市ウェブサイト等より作成

なお、同市のホテル・空港従業員には上述の最低賃金に加え、一定額以上の医療保険を従業員に給付するよう雇用主に義務付けている。今回の改定により、ホテル従業員には1時間あたり4.25ドル、空港従業員には同7.65ドルの医療保険をそれぞれ給付することになっている(給付額がこの額に満たない場合は差額を支給)。

オクラホマ州で最賃引き上げを否決

オクラホマ州では6月16日、2009年以降、連邦最賃と同等の水準(時給7.25ドル)に据え置かれていた州最賃を段階的に引き上げ、29年に時給15ドルにする州法改正案の是非を問う住民投票が行われ、反対多数で否決された。改正案は州最賃を2027年1月に時給12ドル、28年1月に時給13.5ドル、29年1月に時給15ドルにそれぞれ引き上げ、30年1月以降は物価上昇に連動して改定する内容になっていた。

労働組合など引き上げ賛成派は「物価は長らく上昇し続けているが、最賃は据え置かれてきた。SQ 832(改正州法案)はこの問題を根本的に解決する」(注3)などと主張。これに対し、経営者団体など反対派は「大規模な賃上げが義務付けられると、最も予測しやすい影響の一つは雇用機会の減少だ。特に低賃金や低技能の労働者にとって雇用機会が減少する」(注4)などと訴えた。

投票結果は反対55.37%(34万9,102票)、賛成44.63%(28万1,386票)で反対多数となり、州法改正案は否決された。これにより、同州では引き続き、連邦最賃が適用されることになった(注5)

米国における各種選挙に関する情報などを提供するウェブサイトBallotpedia(非営利の研究機関であるルーシー・バーンズ研究所が運営)によると、1996年から2025年までの間に、延べ32件の最賃引き上げに関する住民投票が行われた。このうち否決されたのは、4件(1996年にミズーリ、モンタナの両州、2024年にカリフォルニア、マサチューセッツの両州(注6)で、それぞれ引き上げを否決)にとどまる。各地で近年行われた最賃改定に関する住民投票の結果(いずれも2024年に実施)を見ると、アラスカ、ミズーリの両州では賛成派が、カリフォルニア、マサチューセッツの両州では上述のとおり反対派が、それぞれ多数を占めた。

参考資料

  • 経済政策研究所(EPI)ウェブサイト(Minimum Wage Tracker新しいウィンドウ
  • ウォールストリート・ジャーナル、BALLOT PEDIA、各ウェブサイト参照

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