労組が猛暑対策の実効性確保と全産業への適用拡大を要求

カテゴリー:労働条件・就業環境労働法・働くルール

フランスの記事一覧

  • 国別労働トピック:2026年7月

ヨーロッパ各地で、今年は例年よりも早く5月から熱波が押し寄せている。フランスでは2024年以降、雇用主に対して、職場における猛暑対策を施すように法整備をすすめている。とりわけ屋外で就労する機会の多い建設関連業種については、猛暑の警報が発令された場合には休工することを促し、その間の賃金を補償する制度が整備されている。ただ、この制度の実効性を疑問視する指摘が労働組合などから挙がっているほか、労働総同盟(CGT)は、建設関係に限られる対象業種を全業種に拡大するように主張している。

猛暑時に作業から退避する権利の適用を求める

フランスでは近年の気候変動に伴う熱波の襲来により、高温下の就労の問題に対応する取り組みが行われている。具体的には建設業を対象として降雨、降雪、霜など悪天候時の休業を補償する従来の制度に「猛暑」が加えられた。2024年の導入後、毎年、運用規定の改正が行われている。詳しくは「国別労働トピック:2024年8月」および「2026年6月」を参照されたい(注1)

実効性のある制度にするための法整備が進んでいるが、特に労働組合からの改善を求める指摘が絶えない。現行法では作業を停止しなければならない気温の閾値(基準値)は規定されていないが、2025年の政令ではメテオフランス(フランス気象局)の気象警報基準に即して雇用主が講じるべき義務を強化した。しかし、労働総同盟(CGT)のソフィー・ビネ書記長によれば、工事の停止の判断は雇用主に委ねられており、政令が十分に適用されていないのが実状だと主張する(注2)。同書記長は、警戒レベル「赤」が発令された各県において、午後の建設現場での作業の禁止や、就業時間内に警戒レベル「赤」に相当する気温に達した場合には、労働者が作業から退避する権利を認める県令を発令できるような法的枠組みを整備することを要求した(注3)。さらに、政府の対応は不十分であり現実から目を背けていると非難した上で、現行制度では建設業に限定した適用範囲を全業種に拡げ、「悪天候や熱波による部分的な失業« chômage partiel intempéries »」制度として創設するように提案している。

フランス民主労働総同盟(CFDT)のマリリーズ・レオン書記長も、企業は猛暑への対応が十分ではないと考えており、暑さ対策に関する労使交渉の義務化が必要だと主張する(注4)。2027年春までに労使間で具体的な行動計画を策定する枠組みの設定を、政府が促進するよう求めている。また、2023年にシャンパーニュ・アルデンヌ地方で猛暑の中、7人の季節労働者がブドウの収穫作業中に亡くなったことが記憶に新しいと指摘した上で、猛暑対策は人命に関わる問題であり、経済活動が優先されるべきではないと強調した。

政府は基準となる気温設定や「気候変動休暇」の導入に否定的

これに対して、ジャン=ピエール・ファランドゥ労働・連帯相は、熱波警報が繰り返し発令される現状を踏まえて、来年(2027年)の猛暑が到来する前に企業間の合意が成立することを目指しており、10月末までに全国的な枠組みを確立し、2027年夏までに新たな業種別保護規則を導入するロードマップを提示している(注5)。企業が実施すべき対策のスケジュールと業種別適応策を策定するため、労使関係者による常設作業部会を9月に設立し、その検討結果を踏まえて、労働・連帯相が包括的な予防策と熱リスクを評価ツールに組み込む措置を策定するとしている。

だが、CGTのビネ書記長は迅速な対策の実施を求めており「現行法では不十分だ。早急に強化する必要がある。今年の秋まで待つことはできない」と反論している。

一方、ファランドゥ労働・連帯相は、猛暑対策が国レベルの法律の布告によってなされるべきものではなく、企業レベルの協定の締結によって実施されるべき対策だという考えを示している(注6)。また、同労働・連帯相は法律に厳格な温度基準を盛り込むことや特定の休暇制度を設けることを否定する。というのも、30度で作業を止めるべきという提案もあるが、検討の過程で40度という基準が対案として示されることも想定される。企業は基準温度を40度まで上げるように働きかけるだろうが、40度はあまりにも高すぎる基準の可能性がある。基準となる気温の制限を設けることは、ある種の数値基準設定の罠に陥ることであり、それは回避すべきだという考えからである(注7)

なお、国立労働災害・疾病予防研究安全研究所(INRS)は、熱中症のリスクを全ての企業のリスクアセスメントに明記する必要があると指摘しており、基準となる気温を挙げている。肉体的に負荷の高い仕事では28度、オフィスワークでは30度で身体に悪影響が出始めるというガイドラインを提供している(注8)

また、労働・連帯相は、緑の党のマリーヌ・トンドリエ党首が提案する年間5日間の「気候変動休暇」導入案についても、反対する意向を示している(注9)。それは、猛暑時の職場における健康問題に直接対処するものではなく、解決策ではないというのが理由である。こうした猛暑対応の措置の議論について、労働・連帯相は大きな財政的問題があると指摘し、国内経済にもたらすコストを「40億ユーロから50億ユーロ」と見積もっている(注10)

さらに労働・連帯相は、労働監督局が6月下旬までに1,900件の検査を実施し、そのうち135件の改善勧告を通知したと発表した。その上で、6月末までに過去に類例のない規模の3,600件以上の検査を終えたとしている(注11)。改善すべき点が確認された企業は、正式な通知の発行を受けて8日以内に対策を講じなければならない。

こうした労働監督局の検査についても、CGTは直ちに制裁につながるものではないと、その実効性に疑問を呈している。ビネ書記長は、2025年の政令で高温時の予防計画の策定やフランス気象局の警戒基準に応じた段階的な対策の実施など、企業の義務を強化したが、実際には法律が全く適用されていないケースが散見されると問題視している(注12)

(ウェブサイト最終閲覧日:2026年7月16日)

参考レート

関連情報