求職者支援改正法、7月1日施行へ
 ―市民手当を基礎保障に改称

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2026年5月

社会法典第2編(SGB II)に基づく求職者支援制度の改正法案(注1)は、連邦議会での可決に続き、連邦参議院でも承認され、新制度への移行が決定した。制度改正の大部分は2026年7月1日に施行される予定で、名称も市民手当(Bürgergeld)から新たな基礎保障制度へ移行し、金銭給付の名称は「基礎保障手当(Grundsicherungsgeld)」に変更される。約550万人の受給者に影響が及ぶ見通しである(注2)。改正に当たっては、就労可能な人をより迅速に就労へ結びつけることが主な目標とされ、これに協力しない受給者には、従来よりも重い制裁措置が科されることになる。

再び「就労優先」の仕組みに

今回の制度改正では、求職者による不正受給に対処するため、より実効性の高い権限と手段がジョブセンター(注3)に付与される。また、「要求と支援(Fordern und Fördern)」の原則の下、ジョブセンターは、求職者の就職に向けて、相談、職業紹介、職業訓練、資格取得支援、就労機会の提供、若者や自営業者への個別支援など、多様な支援を行う。他方、受給者には、単に給付を受けるだけでなく、困窮状態の改善に向けて、求職活動を行うこと、紹介や面談に応じること、必要な手続を行うこと、就労に向けて行動することが、従来以上に厳しく求められる。

なお、2023年に導入された従前の「市民手当」では、受給者を可能な限り早く労働市場に戻すことを最優先する旧制度(ハルツIV)の「就労優先」路線を見直し、持続可能な長期就業につなげる観点から、職業訓練への参加推奨や、長期就業困難者に対する専門コーチング支援などが導入されていた。しかし、今回の改正では、再び「就労優先」の原則が前面に打ち出された。つまり、まず受給者を速やかに就労へ結びつけることが可能かどうかを検討し、それが難しい場合に初めて職業訓練への参加が考慮される仕組みとなる。とりわけ30歳未満の若年層については、この考え方がより強く適用される。

また、就労可能な受給者(注4)には、自らの労働力を、合理的に期待し得る最大限の範囲で提供し、その結果として公的支援を不要にするよう努めることが求められるが、特に単身者については、合理的に可能である場合、フルタイムで働く義務を負うことが明確化された。

さらに、子どもを養育している受給者に対する就労義務も前倒しされる。従来は、子どもが3歳に達してから就労または就労統合措置への参加が求められていたが、新制度では、子どもが生後14カ月を過ぎた時点から対象となる。これにより、子育て中の親にも、より早い段階で就労参加が求められることになる。

一方で、健康上の制約がある人々に対しては、事情に応じた、より的を絞った支援が行われる。また、若者、とりわけ複雑な生活上の問題を抱える若者に対しては、包括的な相談・支援を強化する方針が示された。その一環として、支援の空白(注5)を埋めるとともに、若者就業支援機関(Jugendberufsagenturen)の機能強化が進められる。

ジョブセンターと受給者との間で作成される協力計画(Kooperationsplan)についても見直しが行われる。同計画には、相談、支援、就職あっせんに関する個別提案が盛り込まれ、受給者が協力する限り、ジョブセンターとの連携は引き続き過度に煩雑な手続を伴わないものとされる。他方で、協力計画上の合意を受給者が守らない場合は、法的効果の告知を伴う行政処分によって、協力義務に拘束力が付与される仕組みに改められる。

制裁措置の強化

制裁措置も強化される。例えば、支援措置を途中で中断したり、求人への応募を怠ったりした場合には、従来よりも重い給付減額が科され、通常給付は3カ月ごとに30%まで減額され得る。また、ジョブセンターによる初回の予約面談を欠席した場合には直ちに不利益は生じないものの、2回目以降の不履行については、1カ月間30%の減額が科される。さらに、ジョブセンターと合意した面談に3回連続で出席しない場合には段階的な手続が進められ、最終的には「連絡不能」を理由に給付請求権そのものが失われ、住居費を含めて支給が停止される可能性もある。

このほか、いわゆる「就労拒否者」に対する規定も、より実効的で実務に即した内容へ改められる。通常給付は少なくとも1カ月間停止することが可能とされ、停止期間の合計は従来どおり最長2カ月までとされるが、適用のタイミングはこれまでより早まる。

資産要件については、これまで設けられていた1年間の猶予期間(Karenzzeit)(注6)が廃止される。その代わり、保有が認められる資産額(Schonvermögen)の上限は年齢に応じて設定されることになる。住居費についても見直しが行われ、従来の猶予期間中であっても受給開始時から住宅費の上限が適用される。この上限は、一般に認められる適正水準の1.5倍までとされるが、未成年の子どもがいる世帯についても、それを超える住宅費の取扱いは行政の裁量に委ねられるため、従来の権利保障より後退したと評価されている(注7)

「行政裁量による給付」への変更に労組が批判

今回の改正において、今後大きな訴訟に発展する可能性がある論点の一つは、これまで法律上の権利として保障されていた、子どものいる家族に対する住宅費の保護が、7月1日以降は当局の判断に委ねられる「行政裁量による給付」へと変更される点である。今後、子どものいる家族の住居状況をジョブセンターがどこまで保護するかは、法令に基づいて一律に決まるのではなく、個別の困難事情の有無を踏まえた判断が行われることになる(注8)

ドイツ労働総同盟(DGB)は、受給者に対し、住居費・暖房費を含む給付の全面的な停止も可能とされる今回の改正について、2019年の連邦憲法裁判所判決(注9)の要請を十分に踏まえていないとして問題視している。さらに、住宅費の上限設定の強化に加え、例外的に高額な住宅費を認める規定(困難認定規定)についても、不明確かつ不十分であるとして、連邦議会の公聴会に提出した意見書の中で批判している(注10)

さらなる給付削減案も浮上

現地報道によると(注11)、7月1日の施行を前に、基礎保障給付に対するさらなる削減もすでに議論されている。キリスト教民主同盟(CDU)のカールステン・リネマン幹事長は、受給者に対する通常就業へのインセンティブを強めるため、将来的にはミニジョブの収入を基礎保障に全額算入すべきだと主張している。しかし、基礎保障を受給しながら働く約27万人の中には、適切な資格を持たない者や育児中の者、あるいは55歳を超えて通常の労働市場への再参入が困難な者も含まれる。こうした人々は、控除額がなくなったからといって直ちにフルタイム就業へ移行できるわけではなく、むしろ就労自体を断念するおそれがあるとの反対意見も出ている。

7月1日以降の制度改正が、今後、現場の支援実務や受給者にどのような影響を及ぼすのかについては、引き続き注視していく必要がある。

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