最近の建設業労働市場危機の原因と発展方向
 ―韓国雇用情報院レポート

カテゴリー:雇用・失業問題若年者雇用

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韓国雇用情報院(KEIS)(注1)は2025年6月、建設業における労働市場の低迷と、労働力需給の展望をまとめたレポート「最近の建設業労働市場危機の原因と発展方向」を発表した。以下で概要を紹介する。

建設業就業者は全体の7%

建設業は韓国の中心産業の一つであり、2024年にはGDPの4.8%を占め、全就業者の7%にあたる約200万人が従事している。

同時に、雇用の創出にも大きく貢献している。建設業の就業者数の推移をみると、IMF危機の影響で1990年代後半に一時的に減少したものの、1960年代から一貫して増加傾向にある(図表1)。

図表1:建設業就業者数の推移(1965年~2024年)(単位:千人)
画像:図表1

出所:韓国雇用情報院(2025)

2024年から業界不振により就業者数が急激に減少

しかし、2024年5月以降、若年層の新規参入の低迷や業界全体の不振により、建設業の就業者数は急激に減少している。直近2年ほど、全体の就業者数がほぼ横ばいで推移する中、建設業は大幅に減少し、2025年4月時点では前年同月比で-7.1%となっている(図表2)。この急激な減少は20代によるもので、同時点での20代の増加率は-33.1%と、他の年代に比べて著しく低い。若年層の新規参入が進まない一方で、高齢労働者の引退が進んでいることが、建設業の就業者数の減少につながっている。

図表2:就業者増加率の推移(2023年~2025年4月)(単位:%)
画像:図表2

出所:韓国雇用情報院(2025)

建設業の就業者数が減少した背景には、2024年以降急速に加速した建設市場の不振がある。原因の一つは、不動産PF(プロジェクトファイナンス)危機である。不動産PFは、開発予定地の将来価値を見込んで資金を調達する仕組みで、計画が頓挫すると不良債権になりやすい。2024年には不良債権化による不動産会社の廃業が増加した。

この影響で建設投資は、2024年下半期から大幅に落ち込み始め、2025年第1四半期には前年同期比で-12.2%を記録した。この投資の減少は、主に住宅用建物の建設の停滞によるものである。

韓国銀行は、この不動産PF危機は2025年も続くと予測しており、さらに建設受注の不振や、政府によるSOC(社会間接資本)予算の縮小等も加わり、2025年の建設投資は引き続き減少し、前年比-2.8%となる見通しを示している。

韓国人労働者の供給不足が続く

こうした建設業の不景気を反映して、2025年の建設業全体では、人材の供給が需要を上回る見通しである。ただし、韓国人労働者に限っていえば、需要が供給を上回っている(図表3)。全体的にみると韓国人労働者の不足分を外国人労働者が補っている状況だが、職種ごとにみると、多くの職種が外国人労働者を含めても労働力不足に陥っている。

図表3:建設業における労働力需給の見通し(単位:人)
年度 人材需要 人材供給 需給の差異
韓国人 外国人 韓国人 全体
A B=B1+B2 B1 B2 B1-A B-A
2024 1,835,734 1,892,785 1,471,538 422,765 △364,196 58,569
2025 1,824,700 1,887,337 1,446,091 422,765 △358,609 64,156

出所:韓国雇用情報院(2025)

韓国人の建設労働者の供給不足は、若年者が建設業を避けているためである。この傾向は2000年から顕在化しており、建設業就業者の年齢別構成比の推移をみると、1995年には20代及び30代が56.6%を占めていたのに対して、2024年は21.6%にとどまり、過去30年間で若年層の割合が半減している(図表4)。

図表4:建設業就業者の年齢別構成比の推移 (単位:%)
画像:図表4

出所:韓国雇用情報院(2025)

若年者が建設業を避ける原因としては、いわゆる3D業種(きつい、汚い、危険)(注2)への抵抗感や、宅配等のプラットフォーム労働の台頭によって若年者がその分野に流入していること等が挙げられる。

KEISは、若年者に建設業の魅力を感じさせるためには、建設共済会が実施する「青年専門建設技能養成訓練」等の教育機会の提供が有効であるとしている(注3)。この取り組みでは、全国15か所の職業訓練機関で、塗装や建築配管等の各職種について合計20日(6時間/日)の訓練コースを実施し、出席日数に応じて1日あたり2万1,000ウォンの訓練奨励金を参加者に支給する(注4)

外国人労働者が補完

現在、韓国人建設労働者の人手不足は外国人労働者が補完している。

外国人労働者受け入れの方法としては、まず「雇用許可制」がある。雇用許可制は、国内労働市場で必要な労働力を調達できない企業が、合法的に外国人非専門人材を雇用するための制度である。ただし、この制度で発給される在留資格(「非専門就業(E-9)」)は単純労務職でのみ就業が可能であり、熟練技術を要する職種でこの制度を利用して外国人を雇用することはできない。

建設業の熟練職で外国人労働者を雇用する場合の在留資格は、「特定活動熟練技能人材(E-7-4)」である。しかし取得が難しく、それほど活用されていない。そのため、熟練労働者の人出不足に対応するため、取得が比較的容易である「特定活動一般技能人材(E-7-3)」を新たに建設業の一部職種に解放することが検討されている(注5)

KEISは、韓国人労働者が不足する職種では外国人労働者を受け入れる必要があるとしつつも、長期的には韓国人労働者の労働供給の拡大を目指すべきと主張しており、そのために採用方法や人材育成の見直しが必要だと指摘する。建設業では、単純労務職は人材会社を通じた日雇い採用が一般的であり、熟練職種の人材養成は徒弟関係を基盤とした現場教育が主流である。しかし、こうした慣行も若年者の建設業離れの一因であるとして、若年者にとって魅力的な業界となるよう、変化が求められていると結論づけている。

参考資料

  • カン・スンボク(2025)「最近建設業労働市場危機の原因と発展方向」『地域産業と雇用新しいウィンドウ』(2025年6月)韓国雇用情報院
    ほか各ウェブサイト

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