猛暑時の休憩を義務化
―産業安全保険法に関する規則を改正
雇用労働部は7月15日、「産業安全保健基準に関する規則」改正案を7月17日から施行すると発表した。今回の改正では、猛暑(暴炎)への対策として、従来は勧告扱いだった、「暴炎5大ガイドライン」を法制化し、事業主の保健措置を義務化して、新たに罰則規定を設けた。主な内容は、水分の提供、冷房装置の設置、休憩の付与、保冷装具の支給、熱中症等の疑いで意識不明者が出た場合の救急通報などである。「暴炎」とは、健康被害を及ぼす猛暑を指し、体感温度が31℃以上になる作業場での長時間作業を「暴炎作業」と定義している(注1)。
体感温度33℃超で2時間ごとに20分の休憩を義務化
労働者が、体感温度が31℃以上となる環境で2時間以上作業する場合には、屋内外を問わず、事業主は、①適切な冷房・通風装置の設置・稼働、②作業時間帯の変更等暴炎への露出を減らす措置、③定期的な休憩付与、のいずれか1つ以上の措置を講じなければならない。これらの措置を講じてもなお当該場所の体感温度が31℃以上となる場合は、適切な休憩時間を付与しなければならない。
さらに、体感温度が33℃以上になる環境で作業する場合は、2時間ごとに20分以上の休憩を付与しなければならない。この休憩は、1時間ごとに10分ずつ取得する等、分割も可能である。
ただし、災害対応等で業務の性質上、休憩の確保が非常に困難な場合には、例外的な対応が認められる。この場合は、移動式エアコンや空調服などの個人用冷房設備や冷却装備の使用によって休憩の代替とすることができる(注2)。
また、温熱疾患を予防するため、事業主は休憩に加えて、作業場所に十分な飲料水と塩を備えなければならない。
暴炎作業に従事していた労働者が頭痛やめまい等、温熱疾患が疑われる症状を示した場合、事業主は遅滞なく救急に通報しなければならない。また、当該作業は直ちに中断し、冷房装置の稼働や休憩時間の付与等の予防措置が適切に履行されていたかを確認し、不備があれば速やかに改善しなければならない。
事業主がこれらの措置を怠った場合には、5年以下の懲役または5,000万ウォン以下の罰金が科される。さらに、労働者が死亡した場合には、7年以下の懲役または1億ウォン以下の罰金が科される。
35℃以上の場合は1時間ごとに15分の休憩を勧告
同規則では、より過酷な環境下において、以下の措置を講じることを勧告している。
体感温度が35℃以上になる環境で作業する場合は、1時間ごとに15分の休憩を付与することが推奨される。また、特に高温となる14時~17時の間は、やむを得ない場合を除き屋外作業を中断し、業務担当者を指定して労働者の健康状態を確認することとされている。
さらに体感温度が38℃を上回る場合には、14時~17時の間は災害対応や安全管理等の緊急措置作業を除き、すべての屋外作業を中断することが求められる。加えて、温熱疾患の高リスク者に対しては、屋外作業を制限するよう勧告している(注3)。
中小企業に熱中症防止機器の費用を補助
政府は、暴炎作業を行う中小企業が作業改善を目的として機器を購入した場合、費用の一部を補助する事業を実施している。
屋外作業に従事する建設業や造船業等の事業場については、常時労働者数50人未満の企業を対象に、1事業主につき上限2,000万ウォンまで、購入費用の70%を補助する。補助対象機器は、移動式エアコン、産業用扇風機、サンシェード等である。
また、屋内の高温環境で作業を行う、廃棄物処理業や運輸・倉庫業等の事業業種に対しては、常時労働者数100人未満の事業場を対象に、上限3,000万ウォンまで購入費用の70%を補助する(なお、常時労働者数が50人以上100人未満の事業場は補助率が50%となる)。対象機器は、固定式産業用冷風機やシーリングファン等である。
この事業は350億ウォンの予算規模で7月末まで実施される。
雇用労働部は、7月21日から9月30日までの間、過去に温熱疾患が疑われる事例があった事業場や、建設業・造船業等、高リスク事業業種の約4,000事業場を対象に、暴炎5大ガイドラインの実施状況および休憩施設の設置有無について抜き打ち検査を実施する。
区分 | 「暴炎安全5大ガイドライン」 | 「産業安全保健基準に関する規則」 |
水 |
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冷房装置 |
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休憩 |
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保冷装具 |
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119通報 |
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出所:雇用労働部報道資料を基に作成
参考図表2:温熱疾患による労災承認件数 (単位:人)
注:2025年は4月までの件数。
出所:消防庁ウェブサイトを基に作成
注
- 気象庁の基準では、2日以上連続して最高体感温度が33℃以上になると予測される場合、または、急激な体感温度の上昇や暴炎の長期化によって重大な被害が予測される場合には注意報が発令される。2日以上連続して最高体感温度が35℃以上になる場合、または、急激な体感温度の上昇や暴炎の長期化によって広範な地域に重大な被害が予測される場合には警報が発令される。
政府は、2025年は5月15日から9月30日を暴炎対策期間として定めている。 (本文へ) - ここでいう非常に困難な場合とは、①「災害及び安全管理基本法」による災害の収拾及び予防等、人命や安全に直結する作業、②施設・設備の故障等突発的な状況を収拾するための緊急の作業、③航空機運航に深刻な支障をきたす空港・湾岸等の作業、④コンクリート打設等構造物の安全に深刻な影響を与える作業、⑤その他①~④に準ずる作業で、作業の性質上時間を指定して休憩を与えることが非常に困難な場合、のいずれかに該当する場合。(本文へ)
- 高リスク者には、慢性疾患のある者、温熱疾患の既往歴がある者、高齢者、汗の排出等体温調節等に関する薬を服用している者、アルコール依存者、強度の高い作業に従事する者、新規で配属された者、一時的に健康状態が低下している者が該当する。(本文へ)
参考資料
- 気象庁天気ホームページ
- 雇用労働部報道資料「50人未満小規模暴炎脆弱事業場に対して温熱疾患予防装備・設備等200億ウォン支援
」(2025年2月5日)
- 雇用労働部報道資料「暴炎時2時間ごとに20分休憩義務化、7月17日施行
」(2025年7月15日)
- 雇用労働部報道資料「暴炎に備える温熱疾患予防のための事業場対応指針
」(2025年7月)
- 消防庁「温熱疾患労災の半数は小規模事業場で発生…今年すでに3人死亡
」(2025年6月8日)
参考レート
- 100韓国ウォン(KRW)=10.64円(2025年8月19日現在 みずほ銀行ウェブサイト
)
2025年8月 韓国の記事一覧
- 若年者の生活満足度は10点中6.7点 ―青年生活実態調査結果
- 最近の建設業労働市場危機の原因と発展方向 ―韓国雇用情報院レポート
- 猛暑時の休憩を義務化 ―産業安全保険法に関する規則を改正
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