2025年第1四半期の賃上げ率は2%強
 ―労働省調査局発表

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2025年8月

労働省が四半期ごとに公表している賃金上昇率の統計によると、月額賃金(SMB)(注1)2025年第1四半期に前年同期比で2.2%上昇した。物価上昇率が0.7%だったため実質賃金も上昇した。コロナ禍の物価高騰の影響を受けて2021年第2四半期から2023年第3四半期までは、物価上昇率が賃上げ率を上回ったが、2023年第4四半期以降は物価上昇率を上回る賃上げが続いている。物価高騰が終わる兆しが見え、それに伴って賃上げ率が低い水準になる傾向が見て取れる。

2023年第1四半期をピークに賃上げ率は下落

労働省調査・研究・統計推進局(DARES)が2025年6月20日に発表した統計によると、民間企業における基本時給(SHBOE)(注2)は2025年第1四半期に前年同期比で2.1%(前期比で0.7%)上昇した。直近で最も高かったのは2023年第1四半期の前年同期比5.2%上昇だったが、それ以降、急激に低下している。コロナ禍の2022年第1四半期以降、大幅な上昇が見られたが、コロナ禍前の水準に戻りつつある。また、月額賃金(SMB)は、2025年第1四半期に、前年同期比で2.2%(前期比で0.7%)上昇し、こちらも直近で最も高かった2023年第1四半期の前年同期比で4.7%上昇以降、急激に低下している。2004年以降のSMBの前年比増減率と物価上昇率の推移を示したのが図表1である。

図表1:基本月額賃金(SMB)と物価の上昇率の推移(前年同期比) (単位:%)
画像:図表1

出所:Kevin Garcia (2025), Justine Pignier (2016)より作成。

注:2020年第1四半期および2021年第1四半期の年次変化は計算不可。

製造業で高い賃上げ

SHBOEを産業分野別にみると、2025年第1四半期に製造業が前年同期比2.6%、建設業が2.1%、サービス業が2.0%それぞれ上昇した(図表2参照)。SMBを産業分野別にみると、2025年第1四半期に製造業が前年同期比2.6%、建設業、サービス業はともに2.1%上昇した。雇用区分別にみたSMBは、2025年第1四半期に前年同期比で、ブルーカラー労働者、ホワイトカラー従業員ともに2.1%上昇、中間管理職(Professions intermédiaires(注3)が2.2%、カードル(幹部職員層)が2.3%それぞれ上昇した。

図表2:業種別、雇用区分別賃上げ率(2025年第1四半期) (単位:%)
画像:図表2

出所:Kevin Garcia (2025),より作成。

各産業の業種別に違いを詳しく見てみると、製造業のうち、「化学」と「製薬」が3.3%と最も高く、「コンピュータ、電子機器および光学製品の製造」の3.2%が続く。製造業はほとんどの分野で2%を超えているが、サービス業では1%台の業種が目立つ(図表3参照)。

図表3:業種別賃上げ率(SHBOE)(2025年第1四半期) (単位:%)
画像:図表3

出所:Kevin Garcia (2025),より作成。

なお、当機構の海外労働情報(注4)で民間調査会社による賃上げ率の調査結果を取り上げたが、人事コンサルタント会社のアリクシオ(Alixio)による団体交渉結果の賃上げ率(2025年)を業種別に見たのが図表4である。DARESの調査と業種区分が異なるため単純に比較することはできないが、製薬関連の業種で賃上げ率が高く、サービス業の賃上げ率が低いという点で同じ結果が示されている。

図表4:業種別賃上げ率(2025年年次団体交渉結果)(高い順) (単位:%)
画像:図表4

出所:En 2025, les augmentations devraient diminuer dans l'ensembles des secteurs, ALIXIOより作成。

物価を考慮した変動

2025年第1四半期の物価変動を考慮した実質ベースの基本月額賃金は、前年比でSMBが1.5%、SHBOEが1.4%増加した。SMBは、21年第3四半期以降低下し、22年第2四半期にマイナス2.9%となったが、22年第3四半期以降は上昇している(図表5参照)。23年第4四半期以降は、物価上昇率を上回る賃上げ率となっている。

図表5:物価の上昇分を加味した実質ベースの基本月額賃金(SMB)の変化(前年同期比) (単位:%)
画像:図表6

出所:Kevin Garcia (2025), Jérôme Hananel (2023), Justine Pignier (2016)より作成。

(ウェブサイト最終閲覧日:2025年7月30日)

参考文献

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