2023年の移民の流入は年間34万7000人に
 ―前年比5%減少だが、2006年と比較して10万人増加

カテゴリー:外国人労働者

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国立統計経済研究所(INSEE)の発表によると、2023年にフランスに正規入国した移民の数は34万7,000人であった。2022年の37万5,000人からは5%減少したが、近年、増加傾向にあり、2006年の23万4,000人から10万人以上増加したことになる。フランスの人口に占める移民や外国人の割合は、2000年代初頭から増加傾向にあり、高学歴化も見られる。ただ、移民の就業率は国内の全居住者の平均と比べて低く、失業率は高い。また、内務省の統計によると、不法滞在者の在留許可数が減少し、国外退去者数が増加する傾向が見られる。

移民流入は中長期的にみて増加傾向

INSEEの公表した統計によると、2023年にフランスに入国した正規移民の数は34万7,000人で、前年比5%減少した(図表1参照)(注1)。前年の2022年は、ロシアのウクライナ侵攻による避難民の受け入れや、2020-2021年の新型コロナウイルス感染拡大の影響による移民流入の一時的な減少に対する反動で大きく増加した。2023年はその動きが収まり、前年比で減少した形だ。中長期的な視点で見れば、移民は増加傾向にあり、特に、2006年の流入数(23万4,000人)と比べると、2023年は10万人以上増加したことになる。

図表1:入国した移民の人数 (単位:千人)
画像:図表1

出所:Chloé Pariset, Pierre Tanneau (Insee)(2025).に基づき作成。

総人口に占める「移民」と「外国人」

こうした移民の流入というフローに対して、ストックの側面を見ると、2023年には総人口の10.7%に相当する728万人の移民が国内に居住していた(図表2参照)。

INSEEの統計における「移民」とは、外国で外国人として生まれ、調査実施時点でフランスに居住している者である(注2)。したがって、外国でフランス人として生まれ、フランスに居住する者は移民に含まれない。移民の中にはフランス国籍を取得してフランス人になった者もいれば、外国籍のままの者もいる。後者は図表2における「外国人」と「移民」の重なり合うのは部分に属する。「移民」は必ずしも「外国人」ではなく、逆にフランスで生まれた「外国人」(主に未成年者)は統計上、別に区分されている。「移民」の地位は永続的であり、たとえ国籍の取得によってフランス人になったとしても、統計上、「移民」に属し続ける。

移民の34%に相当する248万人がフランス国籍を取得している(注3)。一方で、フランスに居住する外国人の数は561万人で、総人口の8.2%を占めている。このうち480万人はフランス国籍を取得していない「移民」であり、81万人がフランスで出生した外国籍の者である。この81万人のほとんどが移民の2世、3世の未成年である。移民の子としてフランス国内で出生した者は、13歳になった時点で自ら申請することによって、あるいは20歳になった時点で自動的にフランス国籍が付与される。逆に言えば、その年齢に達するまでは、国籍を保有していない。

図表2:総人口に占める移民と外国人の人数(2023年)
画像:図表2
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出所:INSEE, Chiffres-clés, Paru le : 22/05/2025. に基づき作成。

移民の総人口に占める割合は増加傾向

「移民」は人数も、総人口に占める割合も、2006年以降増加傾向にある(図表2参照)(注4)。総人口に占める割合は、1946年が5.0%、1975年が7.4%、2010年が8.5%、2023年が10.7%と長期的に増加傾向が見られる。ただ、1931年以降の数値を詳しく振り返ると、総人口に占める移民の割合は一貫して増加しているわけではない。1931年(6.6%)から1946年(5.0%)にかけて移民の割合は減少したが、その後、1975年まで増加した。さらにその後、1990年代末までは、石油ショックと就労目的の移民流入の減速により、安定的に推移していたが、2000年代初頭以降、再び総人口の増加を上回るペースで移民数が増加している。

図表3:「移民」の人数および総人口に占める割合の推移(左目盛り:千人、右目盛り:%)
画像:図表3

出所:INSEE, Chiffres-clés, Paru le : 22/05/2025.に基づき作成。

注:INSEE公表のデータは、2006年以降は毎年の数値が掲載されているが、それ以前の1921年から1999年までの数値は、図上に掲示した数値しか掲載されていない。

「外国人」の総人口に占める割合は、1951年の4.1%から1982年は6.8%に上昇したが、1999年には5.5%まで低下した(図表3参照)(注5)。その後、2006年の5.8%から、2023年の8.2%まで一貫して上昇している。

図表4:「外国人」の人数および総人口に占める割合の推移(左目盛り:千人、右目盛り:%)
画像:図表

出所:INSEE, Chiffres-clés, Paru le : 22/05/2025. に基づき作成。

注:図表3と同じ。

入国1年後の就業率は約3割で安定

新規の移民の就業率は、2006年から2023年まで概ね安定しており、15歳以上の新規移民は入国の翌年に、平均3人に1人が就業している(注6)。滞在期間が長くなるにつれて、フランス語や労働市場に関する知識の向上、学業の修了、あるいは職業上のネットワークの構築などの効果もあり、就業率が増加していく傾向にある(注7)

ただ、2023年の移民の失業率は11.2%であるのに対して全体の失業率は7.4%であり、移民の失業率の高さが際立つ(図表5参照)(注8)。2015年以降、低下傾向が見られるが、移民の失業率が相対的に高い状況に変わりはない。

図表5:移民と国全体の失業率の比較の推移 (単位:%)
画像:図表5

出所:内務省ウェブサイト.に基づき作成。

移民の失業率は出身地域による差があり、移民歴がない者(6.5%)やフランス居住者全体(7.4%)と比較して、移民の失業率が高い傾向が見られる(図表6参照)(注9)。アフリカ出身者の失業率が13.6%と最も高く、次いでアメリカ、オセアニア地域出身者が13.1%となっている。

図表6:移民の出身地域別失業率 (単位:%)
画像:図表6

出所:INSEE, Chiffres-clés, Paru le : Paru le : 29/08/2024. に基づき作成。

移民の高学歴化

近年(2006年~2023年にかけて)入国した移民の教育水準は高まる傾向にあり、職業資格をまったく保有しない者は、減る傾向が見られる(注10)。2023年に入国した25歳以上の移民のうち、上級資格保有者は52%だが、2006年には41%だった(図表7参照)。一方、2023年にフランスに入国した25歳以上の移民のうち無資格者は22%と、2006年の30%から減少している。

教育水準の上昇傾向は、アジア諸国を除くすべての出身国に当てはまる。アジア諸国出身者は、旧来より高学歴な者が移民としてフランスに流入していたため、他の地域からの移民が高学歴化しているのに比べて変化は見られない。2006年には、入国した25歳以上のアジア生まれの移民のほぼ2人に1人(48%)が上級資格保有者だった。この割合は2015年まで増加して59%に達したが、その後減少し、2023年には50%近くまで落ち込んでいる。2015年以降の減少傾向は、トルコと中東を除くアジア諸国生まれの移民にのみ見られる傾向であり、出身国と移住理由が変化したことによると考えられている。

図表7:移民の学歴の推移 (単位:%)
画像:図表7

出所:Chloé Pariset, Pierre Tanneau (Insee)(2025).に基づき作成。

アフリカ諸国出身者の移民の教育水準は、上級資格保有相当の者の割合が最も大きく増加している。2023年に入国したアフリカ諸国出身の移民の2人に1人が上級資格を保有しており、2006年の3人に1人弱から増加した。アフリカ諸国の中で最も大きく増加したのはマグレブ諸国である。2006年に入国した移民と比べると、2023年には25ポイント増加している。

新規移民の教育水準は着実に向上しているものの、経済状況によってその傾向が異なる。経済危機の時期には、無資格移民の割合が一時的に増加する傾向が見られる。例えば、2010年に入国した25歳以上の移民のうち、無資格者の割合は26%だったが、2014年には30%に増加した。2010年から2014年にかけて新規移民に占める無資格者の割合は、特にEU諸国からの移民に関して6ポイント上昇し、顕著な増加が見られた。

不法滞在者の在留許可数の減少、国外退去数の増加

2024年1月の移民法改正で、不法滞在者の正規化に関する手続きが規定された(注11)。2025年5月には不法滞在者を含めた外国人労働者の就労を促進する目的を含む人手不足職種リストが公表された(注12)

2024年は31,250人の不法滞在者が正規滞在者として認められ、これは前年比10%の減少だった。2020年以降、許可数が増加していたが減少に転じた(図表8参照)(注13)。ルタイヨ内務大臣による許可証発行の厳格化方針の影響と見られている(注14)。正規滞在許可のうち、不法就労者は10,330人で、家族関係の事情による不法滞在者は20,090人である。

図表8:不法滞在者の正規化の推移(単位:人)
  2020 2021 2022 2023 2024
就労 6,999 8,719 10,874 11,525 10,330
家族 19,697 21,928 22,420 22,154 20,090
学生 720 906 1,008 1,027 830
合計 27,416 31,553 34,302 34,706 31,250

出所:内務省ウェブサイト.に基づき作成。

また、2024年には、不法滞在者の国外退去数が21,601人となり、前年比26.7%増加した(図表9参照)(注15)。このうち、12,856人が強制送還され、前年比9.7%増加した。既述の2024年移民法改正で、従来、国外退去義務の適用対象外だった「特定不法外国人」が、フランスにとって脅威となると判断されれば滞在許可を取り消し、即刻国外追放を命じることができるように改正された影響などが要因だと考えられる。

図表9:不法滞在者の国外退去数の推移 (単位:人)
画像:図表9

出所:内務省ウェブサイト.に基づき作成。

また、不法移民の逮捕数が2014年以降増加し続けており、2024年には147,154人と、前年比で18.9%増加した(図表10参照)(注16)

図表10:不法移民の逮捕者数の推移 (単位:人)
画像:図表10

出所:内務省ウェブサイト.に基づき作成。

(ウェブサイト最終閲覧日:2025年6月6日)

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