SEIUがAFL-CIOに再加盟

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SEIU(Service Employees International Union、国際サービス従業員労働組合、組合員数約200万人)は2025年1月8日、米国最大の労働組織であるAFL-CIO(アメリカ労働総同盟・産別会議、組合員数約1,300万人)に再加盟すると発表した。SEIUは2005年に、労働者の組織化方針の違いなどからAFL-CIOを脱退していた。SEIUにはサービス業や介護分野の労働者らが加盟している。AFL-CIOではSEIUの再加盟により、団結力や組織力、交渉力の向上を期待している。

SEIUの脱退と再加盟

AFL-CIOは2005年に組織化の方針等をめぐって分裂した。組織化を重視する方針自体に意見の相違はなかったが、当時の執行部の取り組みに政治重視だと異を唱え、より徹底した組織化の取り組みなどを求めるSEIU、及びトラック運転手労組(チームスターズ)、国際食品・商業労組(UFCW)、縫製・繊維・ホテル・レストラン労組(UNITE-HERE)、国際北米労働者組合(レイバラーズ、LIUNA)がAFL-CIOを脱退し、新ナショナルセンター「勝利のための変革(Change To Win、CTW)」を結成した 。CTWは当時のAFL-CIO加盟者数の約3割、500万人規模を擁した。

だが、CTWはその後、加盟組織に内紛が生じたり、2009年のオバマ政権発足に伴い労組に大同団結の気運が生じたことなどから、2009年にUNITE-HERE、2010年にLIUNA、2013年にUFCWがそれぞれ離脱し、AFL-CIOに再加盟 した(UNITE-HEREの一部はSEIUに合流してCTWに残留)。今回のSEIUの再加盟により、チームスターズを除く主要労組がAFL-CIOに復帰したことになる。

なお、CTWからはチームスターズも2022年に脱退しており、現在はCTWの戦略的組織化センター(Strategic Organizing Center、SOC)が、組織化に関する研究等を行う機関として存続するにとどまっている(注1)

AFL-CIOの組織人員、1,500万人規模に拡大

AFL-CIOへのSEIUの再加盟について、現地メディアは米国における労働組合員の減少や組織率の低下傾向に歯止めをかけ、労働組合の影響力の強化をはかるためと指摘している。再加盟後のAFL-CIOの組織人員は1,500万人規模に拡大する。なお、米国における2023年の労組組織率は10.0%で、民間労働者に限ると6.0%にとどまっている(注2)

SEIUでは2005年のAFL-CIO脱退後、ファストフード店労働者らの”Fight for Fifteen”(最低賃金の時給15ドルへの引き上げ運動)や、スターバックス労働者の組織化(SEIU加盟組織・ワーカーズ・ユナイッテッドによる)といった取り組みを積極的に行ってきた。SEIUのAFL-CIOへの再加盟は、こうした組合運動の活性化を促すことも狙いとしている。

SEIUのエイプリル・ベレット会長は1月8日、「SEIU組合員である何百万人ものサービス及び介護労働者がAFL-CIOの労働者と団結し、あらゆる産業、あらゆる地区で組合を築き、労働者の力の新時代を切り開く。労働者は、より強い経済と民主主義を築くために、職場や地域社会を組織してきた。私たちは、企業や政府の「ユニオン・バスター」に立ち向かうとともに、私たちみなの足かせとなっている時代遅れで性差別的、人種差別的な労働法を書き換える準備ができている。(SEIUとAFL-CIOを合わせた)約1,500万人の組合員が団結し、労働者にとって繁栄し健全な未来を築くための取り組みを倍増できることを誇りに思う」とコメントした(注3)

一方、AFL-CIOのリズ・シューラー会長は同日、「労働者は組合のほうがよいことを知っている。団結には力がある。団結すれば組織化や交渉の闘いにおいてより強くなる。CEOや億万長者は労働者の分裂を望んでいるが、私たちは今日、これまで以上に団結してここに立っている。法律が許せば明日にでも組合に加入すると言っている6,000万人のアメリカ人に働きかけ、労働法を改正して、アメリカのすべての労働者に職場で団結する基本的権利を保証する(注4)」とSEIU再加盟の意義を強調している。

参考資料

  • チャールズ・ウェザーズ(2010)『アメリカの労働組合運動-保守化傾向に抗する組合の活性化』昭和堂
  • ブルームバーグ通信、AFL-CIO、SEIU、各ウェブサイト

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