雇用サービス総合プラットフォーム「雇用24」の会員が1,000万人を突破、企業の登録も41万社に迫る

韓国・雇用労働部は1月21日、オンライン雇用サービス統合プラットフォーム「雇用24」の累積会員数が2025年1月に1,000万人を超え、企業会員の登録数も40万9,000社に達したと発表した。1日あたり約104万⼈が「雇⽤24」のサービスを利⽤している。雇用労働部は、「雇用24」への統合により、大きなサービス改善効果があったと分析している。

9つの雇用サービスプラットフォームを「雇用24」に統合

「雇用24」とは、職業紹介や雇用保険給付、職業訓練などの雇用関係の各種サービスを、一カ所で申請・照会できるよう構築した統合プラットフォームである。雇用に関するデジタルサービスをそれぞれ提供していた「ワークネット(就職斡旋)」や「雇用保険(失業給付・奨励金給付)」「職業訓練ポータル(HRD-Net)」などの9つのオンライン雇用サービスを、ひとつのプラットフォームに統合した(表1)。

表1:「雇用24」の主な特徴と機能
対象 主な機能 詳細
個人・企業 サイト統合 一度のログインで雇用サービスに関連する多様な支援
*(個人)就職支援+政府支援金+国民明日学習カード+失業給与など
*(企業)人材探索+政府支援金+教育訓練+外国人雇用など
会員情報に基づくお薦め情報の提供 会員情報を通じたオーダーメード型情報を自動的に提供
*(ジョブケア)希望職種基準職務能力診断、雇用・教育・資格証推薦
*(サービス推薦)個人・企業特性に合った雇用サービスと支援金推薦
*(労働市場情報)職種別実賃金、企業/労働者希望賃金格差など
情報連携による
申請手続きの簡素化
入力項目の削減、申請前の支援資格事前診断、情報連携により書類負担を軽減し申請を簡易化
各種制度・政策ガイド 個人(就職段階別)、企業(人事管理段階別)に合った各種支援制度をわかりやすく紹介
企業 民間ERP連携 民間企業ERPと連携し企業支援金などを情報検索し直接申請可能
内部従業員 支援金自動審査 別途書類確認なくシステムが適合可否を自動判定
単純業務自動化 手書き発送の郵便をオンラインで自動発送・電子ファックス受信時の文書(申請書、添付)を自動連携
ファームバンキング オンラインによる会計・支払処理業務の簡素化
自動記録(試行) STT(Speech To Text)を活用し、相談内容を自動的に記録

出所:雇用労働部

また、企業が「雇用24」に接続しなくても自社業務システム(ERP)で便利に企業支援金を探して申請できるよう、民間ERPとも連携させた。

さらに、自動審査やロボット自動化(RPA)など、新しい技術を活用して効果的な業務処理を行い、各種の支援金審査、郵便発送、支給処理など、簡易業務や繰り返し業務を自動化し、業務効率を向上させる。

統合により利便性や処理時間短縮などサービスが大きく改善

「雇用24」は2024年9月23日より正式にサービス提供を開始した。複数のネットワークを行き来する必要がなく利用者の利便性が高まり、1日あたり約104万⼈が「雇⽤24」にアクセスし、サービスを利⽤しているという。企業会員の登録数も40万9,000社に達した(表2)。

表2:「雇用24」の利用状況
区分 2024年4月 2024年7月 2025年1月15日
累積会員数 個人 775.8万人 854.8万人 1,000万人
企業 21.1万社 29万社 40.9万社
1日平均アクセス数 38万4千人 51万9千人 104万人
アプリのダウンロード数 14万件 109.4万件

出所:雇用労働部

雇用労働部は、「雇用24」への統合により、大きなサービス改善効果があったと分析する。プラットフォームを1つにすることで、サービスを利用する人のアクセスビリティが高まった。情報連携を通じて各種証明書類や入力項目が削減され、すでにある情報については提出が不要になるなど利便性が向上した。また、個人や企業の特性に応じて、適用の可能性が高い支援金を案内したり、求職者の能力にあった雇用・訓練・資格を推薦することができるようになった。

個人会員について、申請等を利⽤した会員352万⼈(2024年基準)のうち、「雇⽤24」のみを利用した割合は49.6%(176万⼈)と、約半数を占めた。申請や問い合わせの処理時間も、平均7日(2022年)から3.6日(2024年)へと、約半分に短縮された。

また、⼈⼯知能(AI)を活⽤したAI雇⽤推薦およびジョブケア(JobCare(注1)サービスの拡⼤により、雇⽤がマッチした就業者数は、2023年(1~11月)の7万631件から2024年(同)の8万8,295件へと約25%増加した。ジョブケアサービスの活⽤件数も、4万5,914件(2023年同)から約5倍の27万9,370件(2024年同)に大きく増加した。

一方、企業会員に対するサービスも、事前診断と計算シミュレーション機能を追加した「企業⽀援金(注2))」の申請件数が、約6万件(2022年下半期)から1.5倍の約9万件(2024年下半期)に増加した。支援要件が複雑な「雇⽤⽀援金(注3)」の処理に要する時間も、16.1日(2022年)から11.3日(2024年)へと約3割短縮した。

個人会員の半数は30代以下、「職業斡旋(求職)」の利用が3分の1を占める

「雇用24」に加入している個人・企業会員の特性や利用サービスの詳細は以下のとおり。

【個人会員】

2024年12月末時点の個⼈会員数は984万⼈で、15歳以上⼈口の18.8%を占める。男女別には、女性が54.7%、男性が45.3%で、やや女性の比率が高い。年齢別には、29歳以下(25.9%)と30代(23.7%)が約半分を占める。以下、40代(19.8%)、50代(18.0%)、60歳以上(12.6%)の順となっている。

個人会員の2024年(1~10月)の利用サービス件数は、総計737万件だった。

主な利用サービスは「職業斡旋(求職)」が248万件(33.7%)で最も多い。次いで、「求職者手当」(122万件、16.5%)、「職業心理検査」(73万件、9.9%)、「国民明日学習カード(注4)」(73万件、9.9%)、「失業保険支援」(41万件、5.5%)、「国民就職支援制度(注5)」(36万件、4.9%)、「職業能力開発訓練」(28万件、3.8%)、「母性保護」(25万件、3.4%)の順となっている。

年齢別に利用サービスをみると、すべての年齢階層で「就職斡旋(求職)」の割合が最も高い。

29歳以下では「職業心理検査」(15.5%)、「国民明日学習カード」(9.9%)、「国民就職支援制度」(9.5%)など、職業選択のための雇用サービスの割合が高いのに対し、30代は⼦育て休職給与などの母性保護(11.5%)の割合が、40〜50代は「求職者手当」(19.7%)など、再就職能力強化サービスの割合がそれぞれ高い。60歳以上では「求職者手当」(29.5%)の割合が他の年齢層(全体平均16.5%)に比べて高くなっている(表3)。

表3:個人会員利用サービス上位5つの割合(%、2024年1月~10月)
  1位 2位 3位 4位 5位
全体 就職斡旋(求職) 求職者手当 職業心理検査 国民明日学習カード 失業保険支援
(33.7) (16.5) (9.9) (9.9) (5.5)
29歳以下 就職斡旋(求職) 職業心理検査 国民明日学習カード 国民就職支援制度 求職者手当
(30.7) (15.5) (9.9) (9.5) (8.4)
30代 就職斡旋(求職) 求職者手当 職業心理検査 国民明日学習カード 母性保護
(31.1) (15.8) (9.7) (8.9) (11.5)
40~50代 就職斡旋(求職) 求職者手当 国民明日学習カード 失業保険支援 職業心理検査
(35.5) (19.7) (10.9) (9.0) (7.0)
60歳以上 就職斡旋(求職) 求職者手当 国民明日学習カード 職業心理検査 職業能力開発訓練
(41.3) (29.5) (8.9) (4.3) (3.5)

出所:雇用労働部

【企業会員】

2024年12月末時点の企業会員は約40万社で、すべての雇用保険適用事業所の21.7%を占める。産業別には、製造業(28.9%)や保健福祉業(18.9%)、卸売業(12.6%)の割合が高い。

2024年1~10月に雇用サービスを利用したのは24万社(60.2%)で、雇用サービスの総利用件数は208万件にのぼる。

最も多く利用されたサービスは「就職斡旋(求人)」(102万件、49.1%)だが、次に多かったのは外国人の求人や斡旋など「外国人力制度」(58万件、27.9%)で、この2つが全体の8割近くを占める。

規模別に利用サービスをみると、すべての規模で「就職斡旋(求人)」の割合が最も高い。2番目に多いのは、「30人未満」と「30~299人」規模では「外国人力制度」なのに対し、「300~999人」と「1,000人以上」では「職業能力開発」となっている(表4)。

表4:企業会員の利用サービスの上位5つの割合
  1位 2位 3位 4位 5位
全体 就職斡旋(求人) 外国人力制度 職業能力開発 青年 高齢者(新中年)※注
(49.1) (27.9) (5.3) (5.2) (4.8)
30人未満 就職斡旋(求人) 外国人力制度 高齢者(新中年) 女性(育児支援) 職業能力開発
(45.8) (32.1) (5.1) (5.0) (4.5)
30~299人 就職斡旋(求人) 外国人力制度 青年 高齢者(新中年) 職業能力開発
(51.1) (26.4) (7.4) (5.0) (4.3)
300~999人 就職斡旋(求人) 職業能力開発 青年 外国人力制度 仕事経験プログラム
(62.0) (11.8) (8.9) (5.8) (5.0)
1000人以上 就職斡旋(求人) 職業能力開発 仕事経験プログラム 青年 外国人力制度
(68.8) (21.1) (3.8) (3.2) (1.4.)

注:新中年とは、雇用から退職し老後を迎えるまでの過渡期である50代、60代を指す韓国の政策用語。

出所:雇用労働部

2025年の改善計画に「生成AI活用」や「デジタル履歴書」など

雇用労働部は、「雇用24」の2025年度の改善計画を以下のとおり掲げ、AIを活用したサービスの拡大や、デジタル履歴書、ゲートウェイ・サービスの提供により利便性を高めるなど、さらなる改善を予定している。

①AIベースのカスタマイズサービスの拡⼤

【個⼈】

個⼈の特性を最⼤限に反映し個⼈に特化した雇⽤サービスの強化

  • (AIによる雇⽤推薦改善)「雇⽤24」利⽤者の年齢・特性及び求職環境を分析し、利用者の特性別にカスタマイズされた雇⽤情報を、推薦理由を付して提⽰
  • (就職確率の導⼊)求職者の特性などを分析し、6カ月以内の就職確率を予測し、「ジョブケア」を利用した深層相談⽀援(注6)を実施
  • (インテリジェント職業⼼理検査)職業選好度検査結果をもとに求職者の特性を分析し、最も適した職業上位5つを推奨
  • (自己診断導入)就業経験がない/不足していても「ジョブケア」を通じて進路探索・キャリア設計ができるよう、「⾃己診断機能」を導⼊

【企業】

中小企業に必要な適合⼈材の採用を迅速に⽀援

  • (AIによる⼈材推薦改善)AIを利用した⼈材推薦時の推薦理由の提⽰と推薦⼈材の履歴書・⾃己紹介書をまとめた情報の提供
  • (採⽤確率の導⼊)求⼈公告、求職者⼊社⽀援条件(賃金等)を分析し、求⼈の採⽤確率を予測し、これに基づいて求⼈公告条件を調整、求⼈コンサルティングなど企業のカスタマイズサービスを提供
  • (求⼈公告作成⽀援)生成AIを活⽤した求人広告の自動作成
    募集分野、勤務条件など簡単な求⼈条件を入力すると、生成AIが求⼈公告を⾃動作成
  • (求⼈公告⾃動検証)重複公告、禁止用語の使⽤有無、採⽤手続き法違反など、求⼈広告のAI⾃動検証による信頼できる求⼈広告作成を支援

②「雇用24」の利便性の改善

  • (デジタル履歴書)求職者の学歴・資格・経歴を「デジタル履歴書」(注7)で構築する。求職者は⼊社⽀援に活⽤し、求⼈企業は情報検証費⽤を削減
  • (ゲートウェイ・サービス導⼊)簡単な質疑応答を通じて「雇⽤24」の多様なサービス、コンテンツ、政策・制度などを推奨するゲートウェイ・サービスを導⼊
  • (メイン画面の改編)簡易で直感的にサービス‧コンテンツにアクセスできるよう、ユーザーの利用分析や現場意見の聴取などを行い「雇⽤24」メイン画面を改編
  • (検索改善)「雇⽤24」で提供しているキーワード・関連検索機能の強化(2025年)、検索履歴カスタマイズ検索(2026年)、生成AIベースの⾃然⾔語検索支援(2027年)
  • (AI雇⽤相談チャットボット導⼊)「雇⽤24」で受け付ける雇用相談等に、AI技術を活⽤した⾃動回答(チャットボット等)を導入
  • (脆弱階層⽀援)視覚障害者(電⼦点字)(2025年)、⾼齢者UI(ユーザーインタフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)(⾼齢者にも操作しやすいアプリ設計)(2026年)、外国⼈(多⾔語⽀援)(2027年)などの対応を行い、デジタル脆弱階層等の「雇⽤24」利用を支援

参考資料

2025年1月 韓国の記事一覧

関連情報