2024年中国の最低賃金改定に関する動向

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  • 国別労働トピック:2024年12月

2024年1月以降、中国各地域の人力資源・社会保障局(人力資源・社会保障部の地方部局。日本の労働局に相当)は次々と月額最低賃金の最新の改定額を発表している。中国の最低賃金は、32の省、直轄市、自治区等がそれぞれの地域の事情に応じて個別に改定する仕組みとなっており、中央政府は地方政府に対して、2~3年ごとに最低賃金の見直しを行うよう求めている。2024年は沿岸部の江蘇省や浙江省、東北部の遼寧省や吉林省、黒龍江省、内陸部の内モンゴル自治区や湖北省、江西省、寧夏回族自治区でそれぞれ3年ぶりの最低賃金の引き上げとなった。これまでに12の省・地域が最低賃金の引き上げを決定している。

月額2,000元を超える地域が増加

近年、最低賃金が、月額2,000元を超える地域が増加している。地域別にみていくと、改定前は上海市が2,690元で首位に立ち、これに北京市の2,420元が続いていたが、改定後は、ハイテク関連、素材関連等の企業が活発に進出している浙江省と江蘇省で、北京市(2,420元)、深セン市(2,360元)、広東省(2,300元)を上回る2,490元となった。月額最低賃金が2,000元を超える地域はここ数年で増加。2024年12月1日現在で32地域中、27地域で2,000元を超えている。(図表

なお、北京市や上海市などでは、2024年中の改定は行われていない。

図表:中国各地における2024年の月額最低賃金の改定状況
地域 2024年の改定 2023年以前の改定 引上率
実施日 最低賃金額
(元/月)
実施日 最低賃金額
(元/月)
北京市     2023年9月1日 2,420  
天津市     2023年11月1日 2,320  
河北省     2023年1月1日 2,200  
山西省     2023年1月1日 1,980  
内モンゴル自治区 2024年12月1日 2,270 2021年12月1日 1,980 14.65%
遼寧省 2024年5月1日 2,100 2021年11月1日 1,910 9.95%
吉林省 2024年10月1日 2,120 2021年12月1日 1,880 12.77%
黒龍江省 2024年5月1日 2,080 2021年4月1日 1,860 11.83%
上海市     2023年7月1日 2,690  
江蘇省 2024年1月1日 2,490 2021年8月1日 2,280 9.21%
浙江省 2024年1月1日 2,490 2021年8月1日 2,280 9.21%
安徽省     2023年3月1日 2,060  
福建省     2022年4月1日 2,030  
江西省 2024年4月1日 2,000 2021年4月1日 1,850 8.11%
山東省     2023年10月1日 2,200  
河南省 2024年1月1日 2,100 2022年1月1日 2,000 5.00%
湖北省 2024年2月1日 2,210 2021年9月1日 2,010 9.95%
湖南省 2024年9月1日 2,100 2022年4月1日 1,930 8.81%
広東省     2021年12月1日 2,300  
深セン市     2022年1月1日 2,360  
広西チワン族自治区     2023年11月1日 1,990  
海南省     2023年12月1日 2,010  
重慶市     2022年4月1日 2,100  
四川省     2022年4月1日 2,100  
貴州省     2023年2月1日 1,890  
雲南省 2024年10月1日 2,070 2022年10月1日 1,900 8.95%
チベット自治区     2023年9月1日 2,100  
陝西省     2023年5月1日 2,160  
甘粛省     2023年11月1日 2,020  
青海省     2023年2月1日 1,880  
寧夏回族自治区 2024年3月1日 2,050 2021年9月1日 1,950 5.13%
新疆ウイグル自治区     2021年4月1日 1,900  

資料出所:人的資源・社会保障部、各地域の人的資源・社会保障局ウェブサイト

注:空欄部分は2024年中の改定未実施の地域(2024年12月1日現在)。各省・地域内の最低賃金は、都市部とそれ以外などで4つのランクに分かれているが、本表では最も高いランクの金額を示している。

最低賃金未満給付の特例

中国の最低賃金は、労働者が法定労働時間内で働いた場合に、企業が支払うべき最低の賃金水準を示すものであるが、特例として、企業が最低賃金を下回る賃金額を支払うことを認めている。こうした特例には以下のような内容がみられるが、各地の賃金支払条例や最低賃金関連規定によって異なる。

  1. 病気休暇中の賃金
    労働者が病気や業務外のケガで休職した場合、病気休暇中の賃金が最低賃金を下回ることを認める。多くの地域では、最低賃金の80%以上を支給する。
  2. 失業保険金の給付
    広東省や浙江省等では、一時金として受け取ることが可能な失業保険給付金の基準額が、最低賃金の90%に設定されている。たとえば、広東省では、失業保険の納付期間が12カ月以上の失業者に、省内のそれぞれの地域に適用するランク以上の月額最低賃金の90%に相当する失業保険金を一時金として支給することが可能になるとされる。
  3. 自宅待機中の賃金
    事業停止等の理由で、労働者との合意のうえで自宅待機にする場合、企業は「待機賃金」や「生活費」を支給することが求められる。これらの支給額については最低賃金を下回ることが許容される。たとえば、広東省では、企業が生産を停止し、1給与支給周期を超えた場合、最低賃金の80%を生活費として支給し、再操業か契約解除まで支払い続ける。陝西省では事業停止が1給与支給周期を超えた場合、最低賃金の75%以上の生活費が支払われる。
  4. 無断欠勤等による賃金控除
    無断欠勤等があった場合、その分の賃金を控除することで、支給額が最低賃金を下回ることがある。

参考資料

  • 中国人的資源・社会保障部、各地域の人的資源・社会保障局サイト

参考レート

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