柔軟な働き方の申請権、就業初日から
被用者が、就業場所や労働時間などに関する柔軟な働き方を雇用主に申請する権利について、就業初日から認めるなどの制度改正が4月に実施された。
新たに220万人に申請の権利
柔軟な働き方(flexible working)を申請する権利は、被用者が、就業場所(在宅就業を含む)や労働時間、勤務形態の変更を雇用主に求める権利を指す。雇用主は申請を受けた場合、妥当とみなし得る理由(注1)がない限り、これを認めることが求められる。2003年の導入当初は、主に子供を持つ親が対象とされてきたが、その後の制度改正により介護者などにも範囲が拡大され、2014年には勤続期間(26週の継続的勤務)のみを要件に全ての労働者に適用されることとなった。
今回、4月に実施された制度改正(注2)では、さらに従来の勤続期間に関する要件を緩和し、就業初日から申請の権利が認められることとなった。改正内容はこのほか、雇用主が申請を拒否する場合に被用者との協議を義務化、また申請から決定までの期限を短縮(3カ月から2カ月へ)する一方、被用者が年間に申請可能な回数を拡大(年1回から2回へ)するほか、申請に際して課されていた雇用主への影響に関する説明義務を廃止するなど、柔軟な働き方の利用促進を図る内容となっている(注3)。
制度改正に関する影響評価(注4)によれば、2014年の制度改正により大半の企業や労働者にとって制度が利用可能となったと見られるものの、柔軟な働き方(申請による場合以外を含む)を選択している被用者の比率はほぼ横ばいで推移しており、また業種や職種、性別、企業規模による偏りも指摘されていた。柔軟な働き方へのニーズ自体は小さくないと見られることから、制度改正を通じてより広範な層の就労への参加や拡大、より生産的な働き方を促すこと、またより平等な制度の実施などが企図されている。政府は、就業初日からの適用とすることにより、220万人が新たに権利を得るとの試算を示している(注5)。
注
- Employment Rights Act 1996の63F条において、「追加的な費用負担」や「業績へのマイナスの影響」などの理由が列挙されている。(本文へ)
- 関連する法改正(Employment Relations (Flexible Working) Act 2023によるEmployment Rights Act 1996の改正、および改正法(80F条(a)(i))に基づくFlexible Working (Amendment) Regulations 2023によるFlexible Working Regulations 2014の改正(勤続26週の要件の廃止))自体は2023年中に行われていたが、準備期間を経てこの4月からの施行となった。(本文へ)
- Employment Relations (Flexible Working) Act 2023の主旨文(Explanatory Note(DF:661KB))による。(本文へ)
- Proposals to reform flexible working regulations (The Flexible Working Regulations 2014)(PDF:406KB)(本文へ)
- Department for Business and Trade ‘Millions to benefit from new flexible working measures’ (4 July, 2023)(本文へ)
参考資料
- Gov.uk、legislation.gov.uk ほか各ウェブサイト
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