介護者休業制度の導入

カテゴリー:労働法・働くルール

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  • 国別労働トピック:2024年6月

家族などへの介護を理由に、被用者に対して年1週間分の無給の休業の権利を認める介護者休業制度が、4月に導入された。介護責任のある被用者の雇用と介護責任の両立を支援し、就労の維持を促すことが企図されている。

従来の制度と導入の意図

制度導入に関する介護者休業法(Carer’s Leave Act 2023新しいウィンドウ)(注1)は、既に2023年5月に成立していたが、実施に関するより詳細な内容を定めた規則(Carer’s Leave Regulations 2024新しいウィンドウ)の成立を待って、2024年4月より制度が導入された。政府の分析(注2)によれば、国内で私的に(注3)介護を行っている層(就労・非就労を問わず)は約420万人で、今後の人口の高齢化によりさらなる増加が想定されている(注4)。介護者は、離職や労働時間の削減、昇進への消極性、就業形態の不安定さや欠勤などの傾向が強いとされ、このため、法定の介護休業制度を下限として導入することで(注5)、介護者の雇用と介護責任の両立を支援し、就労の維持を促すことが企図されている。

従来から、家族等への育児・介護に関連した無給の時間単位の休業制度(time off for family and dependants新しいウィンドウ)はあったものの、緊急の状況への対応を理由とすることが前提とされている(注6)。介護者休業制度は、より長期的な状況への対応を前提に、被用者に事前通知を義務付ける一方で、雇用主には原則として取得を認めることが求められる。

週当たり勤務日数分の介護休業が取得可能に

新たに導入される制度新しいウィンドウは、年間に週当たり勤務日数分(週5日勤務の場合は年間に5日間)の無給の介護休業の取得を認めるもので、週によって勤務日数が変動する場合は、年間の勤務日数から算出された週平均日数が用いられる(介護者休業規則6条)。就業初日から取得の権利が認められ、半日単位からの取得が可能だ(規則5条)。介護対象の範囲は、家族のほか被用者による介護(手配)を必要とする者で、3カ月を超えて治療等が必要な身体的・精神的疾病または怪我の状態にあるか、障害(平等法の定義による)(注7)あるいは高齢を理由に介護を要することが条件とされる(介護者休業法2条)。労働者は取得に際して、取得予定の介護休業の日数の倍相当もしくは取得日の3日以上前のいずれか早い時期に、雇用主に通知することが求められる(例えば半日の取得の場合、3日前に通知)(規則7条)。

雇用主は、取得を拒否することはできない(注8)が、取得が事業運営に過度の支障となると考える場合には、1カ月を超えない範囲で、同等の期間の休業を与えることや、書面での理由等の提示(通知から1週間以内または通知された休業開始日より前に)などを前提に、取得時期を延期することができる(規則8条)。

休業期間中は、休業を取得しなかった場合と同等の雇用条件(休暇等)を適用することとされ(規則9条)、また被用者が職場に復帰する際には、休業取得前と同等の仕事に戻る権利を有する(規則10条)。雇用主は、介護者休業の取得またはその予定、あるいは取得が想定されることを理由とした不利益な扱いや(規則11条)、解雇(規則12条)を行ってはならない。なお被用者は、雇用主による不合理な休業の延期や妨害について、雇用審判所に申し立てを行うことができる(法3条)。

参考資料

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