最低賃金を7月に平均6%引き上げ
 ―国家賃金評議会で合意、2年ぶり改定へ

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  • 国別労働トピック:2024年2月

政労使と学識経験者の委員で構成するベトナム国家賃金評議会は2023年12月20日、4つの地域別に設定する最低賃金を、2024年7月1日からそれぞれ約6%引き上げることで合意した。2022年7月以来、2年ぶりの改定になる。

2年ぶりの引き上げ

ベトナムの最低賃金は、所得水準の程度に応じた4つの地域別に示される。改定は原則年1回としていたが、2020年1月の引き上げ以降はコロナ禍による経済状況の悪化などを考慮し、2年半据え置かれた(注1)。2022年7月に引き上げた後も、2023年中は改定できずにいた(図表1)。

図表1:ベトナムの最低賃金額と対前年引上げ率の推移
画像:図表1

注:2011年まで外資系企業と国内企業とで異なる最低賃金が設定されていた。2012年は前年の外資系企業対象の最賃から統合後の最賃への引き上げ率。毎年原則として1月1日に引き上げ。ただし、2022年は7月1日に引き上げた。2021年と2023年は据え置き。2024年は7月1日に引き上げ予定。

出所:法律図書館ウェブサイト等をもとに作成

最賃引き上げについて審議する国家賃金評議会は労働・傷病兵・社会問題省(MOLISA)、ベトナム労働総同盟(VGCL)、ベトナム商工連盟(VCCI)など政労使の代表者と学識経験者らで構成する。評議会は2023年8月の会議で、2024年中に最賃を引き上げること自体には合意していたが、引き上げ率や実施時期は決まっていなかった。

VGCLが実施した2023年の労働者生活調査によると、労働者の平均月収は約788万ドンだったのに対して、支出は電気や水道料金の上昇などにより約1,170万ドンに高まっている。VGCLは「受注減少や人員削減など企業の懸念は共有しているが、労働者の実質賃金が下がらないよう、最賃を引上げるべきだ」と主張。これに対してVCCIは「最賃引き上げの必要性には同意するが、多くの企業は受注と雇用を維持しなければならず、現在の改定は不可能だ」と訴えた。

2023年12月20日の評議会でVGCLは平均7.3%または6.5%の引き上げ、VCCIは4%の引き上げをそれぞれ求めたが、平均6%の引き上げで合意した。改定時期は2024年7月1日とした。

各地域の最賃水準

改定後の月額は、地域1(ハノイ市・ホーチミン市の都市部など)は496万ドン(時間額2万3,800ドン)、地域2(ハノイ市、ホ-チミン市の郊外、ダナン市など)は441万ドン(同2万1,200ドン)、地域3(バクザン市、フーリー市などの地方都市部)は386万ドン(同1万8,600ドン)、地域4(地域1~3に含まれない農村部など)は345万ドン(同1万6,600ドン)となる(図表2)。いずれも約6%の引き上げ率となっている。改定案は首相府の承認を経て最終決定される。

図表2:ベトナムの地域別最低賃金(2024年7月1日発効予定)
地域 改定前月額(括弧内は時間額、単位:ドン) 改定後月額(括弧内は時間額、単位:ドン) 引き上げ額 引き上げ率
地域1(ハノイ市、ホーチミン市の都市部など) 4,680,000
(22,500)
4,960,000
(23,800)
280,000
(1,300)
5.98%
(5,78%)
地域2(ハノイ市、ホ-チミン市の郊外、ダナン市など) 4,160,000
(20,000)
4,410,000
(21,200)
250,000
(1,200)
6.01%
(6.00%)
地域3(バクザン市、フーリー市などの地方都市部) 3,640,000
(17,500)
3,860,000
(18,600)
220,000
(1,100)
6.04%
(6.29%)
地域4(地域1~3に含まれない農村部など) 3,250,000
(15,600)
3,450,000
(16,600)
200,000
(1,000)
6.15%
(6.41%)
(4地域平均) 3,932,500
(18,900)
4,170,000
(20,050)
237,500
(1,150)
6.04%
(6.08%)

出所:ベトナム政府ウェブサイトなどをもとに作成

なお、ベトナムには公務員給与等の算出基礎として用いる全国一律の最低賃金(「基準賃金」という)があり、2023年7月1日にそれまでの月額149万ドンから同180万ドンへと引き上げた。「基準賃金」は、公務員ではない一般労働者に対しても、その20倍(現在3,600万ドン)を社会保険料算出基礎月額の上限とするなどの形で影響を与える。ベトナム国会は2023年11月10日に2024年国家予算案を可決し、2024年7月1日から「基準賃金」をもとにした現在の公務員給与制度を改める方針を決めた。これに伴い、一般労働者に対する上述の社会保険料上限に関する規定等も見直されることになる。

参考資料

  • NNA、日本貿易振興機構、ベトナム・ニュース、ベトナム政府、法律図書館(THƯ VIỆN PHÁ PLUẬ)、各ウェブサイト

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