2021年の雇用動向の特徴 コロナ禍からの回復
 ―KEIS報告書より

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2022年7月

韓国雇用情報院(KEIS:Korea Employment Information Service)が2021年の雇用の動向に関する分析報告を公表している(注1)。それによると、2021年の労働市場はコロナ禍による雇用停滞局面からの回復期と特徴づけることができるが、「就業者の年齢」「産業・業種」「企業規模」の領域において比較してみると、回復の程度とスピードには、大きな違いもみられる――とある。以下、KEISの報告書の概要を紹介する。

2021年の就業者数は増加

2021年の就業者数は2,727万3,000人に達した。2021年の1年間の動きを追うと、1月は98万2,000人の減少(前年同月比)、2月は47万3,000人の減少(同)と、2カ月連続で減少したものの、3月以降は増加に転じ、その後コロナ禍による雇用停滞の反動もあって、堅調に増加を維持し、最終的に36万9,000人の増加となった()。

以上から、2021年の第2四半期より、雇用状況は回復局面に入ったとKEISは判断する。しかしながら、労働市場全般にわたって回復がみられたというわけではなく、領域ごとにみると回復の様相はさまざまであることを指摘している。

表:経済活動現況 (単位:千人、%、%p 前年対比)
  2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
15歳以上人口 43,931
(325)
44,182
(251)
44,504
(322)
44,785
(281)
45,080
(295)
労働力人口 27,748
(330)
27,895
(147)
28,186
(291)
28,012
(-174)
28,310
(298)
就業者 26,725
(316)
26,822
(97)
27,123
(301)
26,904
(-219)
27,273
(369)
失業者 1,023
(14)
1,073
(50)
1,063
(-10)
1,108
(45)
1,037
(-71)
非労働力人口 16,183
(-4)
16,287
(104)
16,318
(31)
16,773
(455)
16,770
(-3)
労働力人口比率(%) 63.2
(0.3)
63.1
(-0.1)
63.3
(0.2)
62.5
(-0.8)
62.8
(0.3)
完全失業率(%) 3.7
(0.0)
3.8
(0.1)
3.8
(0.0)
4.0
(0.2)
3.7
(-0.3)
就業率(%) 60.8
(0.2)
60.7
(-0.1)
60.9
(0.2)
60.1
(-0.8)
60.5
(0.4)

( )は前年対比増減

出所:統計庁「経済活動人口調査(各年度)」を参考に作成。

60歳以上の就業者数は大きく回復、30代と40代は不振

2021年の就業者数の増加は、各年齢層による違いが極めて顕著に表れる。図1は各年齢層の就業者の前年比増減を月ごとに示したものである。

図1:年齢別就業者増減 (単位:千人(前年同月比))
画像:図1

出所:統計庁「経済活動人口調査(各年度)」を参考に作成。

就業者数は60歳以上の年齢層で最も雇用が回復している。これに15~29歳層が続く。60歳以上の年齢層は、2月に増加に転じて以降、増加を維持した。また、増加幅も他の年齢層と比べると大きい。15~29歳の年齢層も、3月以降は増加に転じ、その後、増加を維持している。

一方、30代と40代の年齢層の雇用回復は振るわなかった。特に30代の就業者数はほぼ毎月減少し、減少幅は小さくなる傾向を見せたものの、年間を通して増加に転じることはなかった。

産業・業種による雇用回復の程度・速度のばらつき

産業・業種によっても就業者の増加の様相は違いをみせる(図2)。「保健業及び社会福祉サービス業」「運輸及び倉庫業」「建設業」などでは就業者が増加した。特に「保健業及び社会福祉サービス業」では2019年は191万2,000人の増加(対前年比)、2020年は156万3,000人の増加(同)、2021年は237万3,000人の増加(同)と、コロナ禍により雇用全体が停滞に陥った2020年にも比較的大きく雇用が拡大した。

「運輸及び倉庫業」も前年比で、2019年は29万8,000人、2020年は61万2,000人、2021年は124万1,000人と、それぞれ増加した。反対に「卸・小売業」「協会及び団体、修理及びその他個人サービス業」「宿泊及び飲食業」等のサービス業においては、就業者数は大きく減少した。特に「卸・小売業」はオンライン市場の拡大により、雇用が減少した代表的な業種で、新型コロナウイルス感染拡大の影響を強く受けることとなった。

「製造業」は2021年の一年間、就業者数は増加と減少を反復し、最終的に前年比9万7,000人の減少となった。このように「製造業」と「卸・小売業」の雇用不振をみると、労働市場は回復局面に入っているものの、依然、新型コロナウイルスの影響下にあるとKEISは分析している。

図2:産業・業種別就業者増減(2021年) (単位:千人、前年対比)
画像:図2

A.農業、林業及び漁業、B.鉱業、C.製造業、D.電気、ガス、蒸気及び空気調節供給業、E.水道、下水及び廃棄物処理、原料再生業、F.建設業、G.卸・小売業、H.運輸及び倉庫業、I.宿泊及び飲食店業、J.情報通信業、K.金融及び保険業、L.不動産業、M.専門、科学及び技術サービス業、N.事業施設管理、事業支援及び賃貸サービス、O.公共行政、国防及び社会保障行政、P.教育サービス業、Q.保健業及び社会福祉サービス業、R.芸術、スポーツ及び余暇関連サービス業、S.協会及び団体、修理及びその他個人サービス業、T.家庭内雇用活動及び他に分類することができない自家消費生産活動

出所:統計庁「経済活動人口調査(各年度)」を参考に作成。

中規模事業所における雇用回復の遅れ

事業所の規模別に就業者の増減をみると、従業員数300人以上の大規模事業所が172万1,000人の増加(対前年比)と最も大きく雇用が回復した。次に10~29人の事業所の105万7,000人の増加(同)、更に1~4人の事業所の94万人の増加(同)、5~9人の事業所の88万6,000人の増加(同)と続く。

従業員数30~99人の事業所では唯一減少を見せ、38万6,000人の減少(同)となった。この規模の事業所には「製造業」や「卸・小売業」といった雇用回復が遅れている業種が多く含まれていることから、事業所の規模にもそれが反映しているとKEISは説明している。

なお、当該規模の事業所に従事する就業者が全就業者に占める比率は14.5%である。

雇用構造の変化、有期雇用の比率が増加

新型コロナウイルスの感染拡大が雇用構造に変化を及ぼしたことについてもKEISは指摘している。図3のとおり、賃金労働者のうち、雇用契約期間の定めのある期間制労働者は、2021年は417万7,000人で、2020年の369万1,000人より増加した。期間制労働者は2015年以降、2017年を除き毎年増加している。また、労働者全体に占める期間制労働者の比率も、2019年16.8%、2020年18.2%、2021年20.1%と上昇している(注2)。一方で、雇用契約期間の定めのない無期雇用(正規職を含む)は、2019年以降3年連続減少している。

図3:期間制労働者数の変化
画像:図3

出所:統計庁「経済活動人口調査(各年度)」を参考に作成。

ただし、期間制労働者の増加はコロナ局面以前の2019年にも大きく上昇していることから、この傾向は必ずしもコロナ禍という特殊事情のみがもたらしたものではないという点についてもKEISは言及している。ただ、コロナ禍という状況において、プラットフォーム労働、特殊形態労働従事者(注3)といった労働形態の多様化の拡大が、期間制労働者の増加をも後押しした一面があるとKEISは分析している。

2022年は製造業の回復に期待

KEISは2021年の雇用動向をコロナ禍からの回復と特徴づけているが、以上見たように「年齢層」「産業・業種」「企業規模」という領域別にみると、回復の度合いやスピードには差異が見られることを指摘している。

すなわち、「30~40代の年齢層の雇用不振は継続していること」「サービス業の雇用は回復したものの、卸・小売業の回復は減少傾向にあること」「従業員数が30~39人の中規模事業所の雇用が増加に転じていないこと」である。また、雇用形態の多様化とコロナ禍という状況が絡み合った結果、期間制による労働契約の比率が大きく上昇したことは、2021年の大きな特徴であるとみている。

最後にKEISは、2022年の雇用展望に触れている。2021年の労働需要の回復は主としてサービス業に支えられ、製造業の回復は見られなかったが、11月、12月は前年同月比で連続して雇用者数の増加がみられたことから、2022年は製造業にとって本格的な雇用回復の起点となることが考えられる。2022年は製造業の労働需要を基盤に、全産業・業種にわたる雇用状況の改善が期待できると2021年の雇用動向分析を締めくくった。

参考資料

  • 韓国雇用情報院ウェブサイト

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