政府が低炭素・デジタル経済に対応する公正な労働転換支援策を発表

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2022年7月

政府は2021年7月、関係部署合同で「産業構造の変化に対応した公正な労働転換の支援策」を発表した。韓国はこれまで低炭素・デジタル経済への産業転換を推進する政策を複数提示してきた。その一方で、産業転換によって深刻な影響を受ける層への支援が不十分だったとして、産業転換による打撃を最小化する「公正な転換」を目指す。

ポストコロナの中核に低炭素・デジタル化

これまで韓国は、低炭素・デジタル経済への移行に向けた産業構造の転換を推進してきた。2020年7月に発表された「韓国版ニューディール総合計画(ポストコロナ時代の長期戦略)」は、低炭素・デジタル経済への移行を目指す「グリーンニューディール」と「デジタルニューディール」の2つを主軸としていた。

今回発表された「産業構造の変化に対応した公正な労働転換の支援策」は、2021年7月に発表された「韓国版ニューディール」の修正計画「韓国版ニューディール2.0」の後続措置にあたる。

具体的には、低炭素・デジタル経済への産業構造の転換に伴って深刻な打撃を受ける、高炭素産業の企業・労働者・地域に対する支援策、および労働者のデジタル職務能力の強化やデジタル格差が生じると予想される中小企業向け支援策が盛り込まれている。

低炭素化は石炭火力発電・自動車産業に影響

低炭素化への転換過程では、再生エネルギー(太陽光・海上風力など)、気候産業(CCUS(注1)など)、資源循環関連産業(再生原料、再製造産業など)などの新産業分野で新規雇用が創出される見通しを示している。反対に事業縮小・転換が見込まれる分野は、内燃機関自動車(ガソリン・ディーゼル車)および石炭火力発電であり、これらの産業に対しては、目標に従って事業縮小および他産業に移行することが求められている。

また、中期・長期的な転換が予測される産業は、鉄鋼・精油・セメントなどである。

デジタル化は全産業に影響、新型コロナウイルスによって加速

デジタル化への転換は、特定の産業よりも広く浅く全産業に影響を及ぼすと予想されている。主に自動化とオンライン化によって、オフラインのサービス業などを中心に雇用が減少する見通しである。また、新型コロナウイルスの影響でオンライン化への需要が高まり、雇用の変化が加速すると見込まれている。

内燃機関自動車・石炭火力発電:雇用を維持しながら新産業分野の職業訓練を支援

早期の産業転換の必要性が高まっている内燃機関自動車・石炭火力発電産業に対しては、事業再編・転換を促進する。企業に対しては、事業再編の専用ファンドを新設(500億ウォン目標)するなど、事業再編・転換のインセンティブを強化する。

これらの産業で働く労働者に対しては、企業へのインセンティブによって、在職者が雇用を維持したまま新産業分野の職業訓練を受けられるようにする。在職者の長期有給休暇を通じて職業訓練を提供した企業に対しては(年次有給休暇ではない休暇として、通常賃金以上の賃金を支給する場合)、人件費の負担軽減などの措置を提供する(2025年までに4万人規模)。

また、民間が中心となった職業訓練も実施する。大企業が協力会社の在職者を対象に独自の訓練インフラを提供する場合、支援を大幅に強化する(「低炭素・デジタル転換訓練」の場合、支援額を20億ウォンから最大39億ウォンまで拡大)。地域格差解消のため、大企業が少ない非首都圏の工業団地を中心に、大学や研究院などを活用した「労働転換特化共同訓練センター」を新設する(2025年までに35カ所設置予定)。

避けられない人員整理の場合には、事前の転職準備、および迅速な再就職支援を実施する。離職予定者が労働時間を短縮して転職・再就職準備を行えるよう、企業に対して代替人材の人件費などを助成する。また企業が自主的に離職予定者に対して転職支援サービス(生涯キャリア設計支援、就職相談、斡旋など)を提供したときに、費用の一部を支援する予定である。

石炭火力発電・内燃機関自動車の事業体が集中している地域の雇用危機にも対応する。有望産業として、電気自動車(EV)などの未来の自動車産業、新再生エネルギー・グリーン産業などを育成する。また、すでに閉鎖が決定している石炭火力発電所の所在地域ではLNG(液化天然ガス)発電団地を造成するなど、代替産業の育成を検討する。

国民のデジタル職務能力の底上げ

デジタル転換に対しては、労働者のデジタル職務能力を強化することで対応する。

企業が在職者に対してAIやビッグデータなどの新技術分野のカスタム型職業訓練を提供する場合、訓練課程の開発費用、訓練費用などを支援する(2025年までに1000社規模)。また、リモートの基礎的なデジタル職業訓練を提供する企業には、訓練費の支援比率を50%から90%まで引き上げ、支援対象も拡大する(2025年までに400万人)。

求職者に対しては、全国民のデジタル新技術分野の職務能力開発を支援する基盤づくりを行う。従来、直接職務に関連のある訓練のみを支援対象としていた「国民明日の学びカード」事業(職業能力開発アカウント制度)(注2)の支援範囲を拡大・改編し、デジタル能力開発訓練などを支援対象に含める(2022年)。

労働転換分析センターを設置

2022年に韓国雇用情報院(注3)内に「労働転換分析センター」を新設する。労働転換分析センターでは、産業・職種別の人材需給の見通しや、産業別に新たに創出される職務・消滅する職務の見通しなどの職務分析、地域・産業モニタリングなどを行う。

中・長期的な転換が期待されている鉄鋼・精油・セメントなどの産業についても、「労働転換分析センター」を通じてモニタリングすることで、予期せぬ産業構造転換の加速化などにより雇用の減少見通しが示された場合には、迅速に支援する予定である。

参考文献

  • 雇用労働部報道資料(2021年7月22日付)「「産業構造の変化に対応した公正な労働転換の支援策」を発表」他

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