政府が高齢者雇用活性化対策を発表

カテゴリー:高齢者雇用

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  • 国別労働トピック:2022年7月

韓国政府は2021年9月、関係部署合同で「高齢者雇用活性化対策」を発表した。高齢者の労働市場への積極的な参加支援に加え、職業能力開発や雇用セーフティネットの強化、高齢者雇用のインフラの拡充を推進するとしている。以下で主な内容を紹介する。

就業率は高いが雇用の質は低い

韓国では現在高齢化が急速に進んでおり、2025年には65歳以上の高齢者が全人口の20.3%に達すると予測されている。また、ベビーブーム世代(1955~1963年生まれ、724万人)が2024年にはすべて定年年齢に達するため、多くの人が労働市場から引退することが懸念されている。

中高齢者の就業率は高く、2020年の調査では、中高齢層(50~69歳)の就業率(66.2%)は、全体の就業率(60.1%)を上回った。

しかし一方で、中高齢者の雇用の安定性は低い。2021年の調査では、主な仕事を離職したときの年齢は平均49.3歳であった。これは、定年年齢(60歳以上)よりもかなり低い。また、中高齢層(50~69歳)と全体の従業上の地位別割合を比較すると、中高齢層は相対的に常用雇用の割合が低く(全体:54%、50~69歳:43%)、日雇と自営業者の割合が高い。

主な仕事を退職した後も再就職などで労働市場に留まることを望む中高齢者は増加傾向にある。将来も働き続けることを希望する人の希望引退年齢も年々上昇しており、2021年の調査では平均73歳であった(図1)。ただし、中高齢者が再就職する場合、賃金などの労働条件の低下を経験する傾向にある。

「高齢者雇用活性化対策」は、超高齢社会突入時の衝撃を緩和するために、働く意思と能力のある高齢者が引退を希望するまで積極的に労働市場に参加し続けられる環境の整備を目的としている。

図1:主な仕事の退職年齢と引退希望年齢の推移(2015~2021年) (単位:歳)
画像:図1

出所:統計庁 経済活動高齢層付加調査

継続雇用の拡大

政府は、主な仕事をより長く続けられるよう、賃金体系の改編と継続雇用支援の拡大を目指している。企業の自主的な高齢者継続雇用を支援するための制度としては、2020年から実施されている「高齢者継続雇用奨励金」事業がある。定年が設定された事業場で、定年に達した労働者を定年以降1年以上継続雇用した場合に、事業主に対して継続雇用労働者1人あたり四半期ごとに90万ウォンを2年間支援する制度である。この高齢者継続雇用奨励金事業の支援対象となる労働者と企業別の支援上限を拡大する。

退職後の再就職・技術を活かした創業を支援

主な仕事を退職した中高齢者の労働移動と再就業を支援する。「高齢者雇用奨励金」を新設し、過去3年以内に60歳以上の労働者数が増加している中小企業に対して、追加採用した高齢者の人件費を1人あたり四半期ごとに30万ウォン支援する(2022年54億ウォン、6000人規模)。

2020年5月以降、雇用保険被保険者が1000人以上の大企業は、1年以上在籍している50歳以上の労働者が定年等の非自発的な事由で離職する場合に、離職する直前3年以内に進路相談、職業訓練、就業斡旋などの再就職支援サービスを提供することが義務づけられている。この再就職支援サービスについて実態調査を行う。現在、提供するサービスの時間は16時間が基準となっているが、これを引き上げるなど制度の改善を実施する。

創業に関しては、豊富な経験、技術、専門性を持つ中高齢退職者が、準備してから創業できるよう、カスタム型の創業教育の提供および事業化の支援を行う。大企業や公共機関が実施する独自の退職プログラムと連携し、退職予定者を対象に創業に向けた教育およびメンタリングを提供する。また、退職者、退職予定者が能力、経験を活かすことができるよう、社内ベンチャーや分社による創業を支援する。

職業訓練・雇用セーフティネットの強化

中高齢者が基礎的なデジタル能力不足によって労働市場への参入に困難を感じることがないようデジタル分野の能力開発を支援する。従来は若年者・経歴断絶女性(結婚や出産を理由に経済活動の経験がないか、中断していたが就職を希望する女性)を支援対象としていた基礎的なデジタル能力訓練「K-digital Credit」について、新たに中高齢求職者を支援対象に追加した(2021年8月~)。

高齢者雇用のセーフティネットを強化する。現在の雇用保険制度では、65歳以上の労働者は、65歳以前から継続して雇用されている者のみ失業給付が受給可能である。65歳以降に新たに雇用されたり、自営業者となったりした場合には失業給付の適用範囲外となる。失業給付の適用年齢の引き上げを長期的に検討する。

また、韓国型失業扶助制度(「国民就業支援制度」)に低所得の高齢層求職者が参加しやすくなるよう、所得・資産要件を緩和する。同制度は、独自の就業支援と合わせて低所得者に対して月50万ウォン(最長6カ月)の求職促進手当を支給する制度である。

男女雇用平等法に基づき、55歳以上の労働者に対して、引退準備を理由とする労働時間の短縮請求権を付与する制度が企業規模に応じて段階的に施行されている。この制度を通じて、徐々に労働時間を短縮しながら退職することを支援する。

参考資料

  • 雇用労働部報道参考資料(2021年9月30日付)「人口構造の変化に対応するための『中高齢者雇用活性化対策』を発表」

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