法定最低賃金(SMIC)の引き上げ
 ―物価上昇分を引き上げて時給10.48ユーロへ

カテゴリー:労働条件・就業環境労働法・働くルール

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  • 国別労働トピック:2021年12月

法定最低賃金(SMIC)(注1)が2021年10月1日に時給10.25ユーロから10.48ユーロへ引き上げられた(注2)。2020年11月から2021年8月にかけて物価上昇率が2%を超えたため、規定に基づき引き上げを行った。2021年1月の定例改定では、1%未満の小幅な引き上げだったが、今回は2008年7月以降で最大の引き上げ率になった。

物価上昇分の自動的な引き上げ

SMICは原則として毎年1月1日に引き上げられることになっており、額は物価と平均賃金の上昇率に基づいて自動的に決まるが、政府の政治的判断によって上乗せされる場合もある(注3)。消費者物価に基づく購買力保障を目的とする指標では、直近の改定時からの消費者物価上昇率(タバコを除く)が2%を超えた場合、当該指数公表の翌月1日に物価上昇分を自動的に引き上げることが労働法典で規定されている(注4)。2008年、11年、12年にも定例の引き上げ以外に実施された。

INSEE(国立統計経済研究所)が発表した2021年8月の消費者物価指数によると、20年11月から21年8月までの間に物価が2.2%上昇した。これを受けて、ボルヌ労働相は専門家委員会のメンバーを集めて、SMICの引き上げについて議論した。その結果、10月1日からSMICを物価上昇分の2.2%引き上げとなる時給10.48ユーロ、月額総額では1589.47ユーロ(1554.58ユーロから34.89ユーロ引き上げ)とすることを決定した。2.2%の引き上げは2008年7月以降で最大の上げ幅である(図表参照)。

図表:最賃額と引上げ割合の推移(2007年~2021年)
画像:図表

  • 出所:政府発表資料より作成。
  • 注:08年5月、11年12月、13年7月、21年10月以外は定例の引き上げ。

労組は政府裁量による上乗せを要求

労働総同盟(CGT)は、今回の引き上げはあくまでも法律に規定された自動的な引き上げであり、賃金水準を物価に合せるための後追いの引き上げの意味合しかないことを問題視しており、最賃によって基本的な生活のニーズが満たされるように月額2000ユーロへの引き上げを求めている(注5)

フランス民主労働総同盟(CFDT)は、「第二線の労働者」の就労条件を改善するには不十分であるとして、政府裁量による更なる引き上げを要求している(注6)。ただ、政府裁量による上乗せは、2021年1月の引き上げの際、専門家委員会の意見書で否定的な見解が示され実施されなかった。オランド政権下の2012年7月以降、政府裁量による引き上げは実施されていない(注7)

(ウェブサイト最終閲覧:2021年12月10日)

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